第31話 幼馴染の図星
「幼馴染。生まれてきたとほぼ同時に出会い、そこからずっと一緒に過ごしてきた家族のような存在。これを運命共同体って言うんだよ」
フンスと鼻を鳴らして胸を張る未奈。
「さっきも言ったじゃないですか。幼馴染が勝ちヒロインになるとは限らないって」
「勝敗以前に、私の勝ちは生まれたときから確定してるんだよ」
「それに家族って、どっちかというと異性として認識されていない証拠なのでは?」
「……」
絢音が放った渾身の一撃に、大ダメージを受けてピタリと未奈は静かになる。
俺から言わせてもらうが、未奈は家族同然だ。これに今後とも変わりはない。
だけど、それだからと言って恋愛感情を抱かないわけではないのだ。
これは多分、未奈も同じことが言えるだろう。
あの事件が起きる前まで、未奈はよく俺の家に泊まりに来ていたし、夕食も俺の家族と団らんと食べていた。
俺も全く同じようなことを未奈の家でしている。
長く一緒に居るからこそ、未奈の色々なところを知れて、そこを好きになって。
家族同然から本物の家族に、なんてことがあるかもしれない。
これも、未奈は同じことを思っているだろう。
「あ、図星じゃん」
固まる未奈をおだてるように、寧々はクスクスと小さく笑う。
「幼馴染同士が恋愛できない理由No1がこれだよね。家族としてしか見れない」
「一番傍に居て思いを寄せてるけど、幼馴染という関係を壊したくないからその思いを告げられなくて、恋が叶わない悲しい存在」
「どちらかに家族とか思われていたら、挽回できない絶望的なキャラ」
「幼馴染は言わずとも負けヒロインなのでは?」
止まることなく出てくる、幼馴染同士が恋愛をするにあたっての暗黙の了解。
その言葉の数々に、未奈は放心状態だった。
そして、その言葉は俺にも深く突き刺さっていた。
んなの全部分かってるんだよ!
家族とみなされてしまったらおしまいだとか、関係を崩したくないから告白できないだとか、痛いくらい分かってるの!
深くなりすぎて修正が出来なくなっている傷をえぐるのはやめてくれ!
未奈もえぐられすぎて動かなくなってるぞ!
「蓮、馬……?」
固まっていた未奈は、ゼンマイ人形のようにぎこちない動きをしながらこちらを向く。
俺の顔を見るや否や、椅子からバッと立ち上がり、俺にしがみついてくる。
「ねぇ私のこと家族としてしか見てないの⁉ 幼馴染としてしか見てくれてないの⁉ ねぇねぇ蓮馬は私のことちゃんと異性として見てくれてるよね! いつも私を見る目がエッチだから見てくれてるってことだよね⁉ ねえねぇねぇ⁉」
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