第35話 応援するしかないって
午後九時。
すっかりと夜になった頃、俺は寧々の部屋に居た。
女子三人、電話の後話が盛り上がり、六時には帰る予定だったがここまで時間が伸びてしまったらしい。
ライバル視しているくせに、なんだかんだで仲が良さそうだ。
何とは言わないが、共通点が多いから話の弾むのだろう。
「んで? 俺を呼び出てまでする話ってなんだ?」
自分の家のように、床でくつろぎながら言う俺。
ここに来たのは、いつもとは違いヤるためではない。
ただ話をするためだけだ。
「そんな改まってする話でもないよ。蓮馬もあの電話で大体分かるでしょ?」
「まぁ、そうだな」
頭の中には予想が二つあるけどな。
ただ、寧々が俺とシたいがために呼んだのかと、未奈の油断を狙って、俺に告白するのか。
どっちに転んでも、断る以外の選択肢がないけど。
「最初に結論から言うけどさ――」
スーッと深呼吸をすると、ベッドに座っていた寧々は段々と俺の方に近づく。
やっぱそうだ。
完全に襲われるぞこの流れは。
でも今日はダメだ。ちゃんと断って、未奈と付き合いたいとハッキリと言おう。
目の前で負けヒロインを作るのは悲しところだが、俺はもう決めたんだ。
寧々の顔が、俺の顔の前でスッと止まる。
そして、
「未奈と早く付き合って」
「はぁ?」
俺の予想にもなかった言葉に、ついアホな声が出てしまう。
「え、未奈と俺が付き合えって?」
「そう言ってるじゃん」
寧々の顔を見るに、嘘は言っていない。
まっすぐ俺を見る瞳は、それを訴えかけているように、微妙だに動かない。
「……それをなんでお前が? これまで散々未奈とバチバチにしてたじゃんか」
ツッコみたいところは色々あるが、一番最初に聞きたいのがこれ。
先日まで俺の取り合いをしていた寧々が、コロッと未奈の見方をする理由。
全く俺には見当がつかない。
「私もさ、思うところがあるの。未奈のあんな顔見せられたら、私だって応援したくなってっきたの」
「どうせ同情を誘うような顔だろ?」
「あれがもし演技だとしても、一七年間の片思いとすれ違いだよ? 辛い思いもいっぱいしてるんだよ? それならもう私は応援することしかできないって」
「応援、ね」
「それにさ、私ももう大人にならなきゃなって」
どこか寂しそうに壁を見つめる寧々。
大人になるというのは多分、体の関係だけで満たされるのではなく、心を満たされたいということだろう。
所詮、セフレなんて恋愛ごっこにすぎない。
ごっこというのも危ういくらいだ。
要するに、潮時だったのだろう。
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