第21話 やっぱ私って天才なのかもしれない

 とまぁ、フラグ建築士発言をしてしまったが、そう現実がAVみたいに行くわけがない。


 試着室の中に連れ込まれてるのを店員が見たら、流石に黙ってはいないだろう。

 お店評価が下がるし、営業妨害だ。


 それか、暗黙の了解ということで、カップルの間で有名になるかの二択だ。


「じゃ、ファッションショーみたいにするから、蓮馬はそこで待っててね」


 店員さんに用意された下着の数々を手に持つと、試着室の中へ入っていく未奈。


「まさか、下着姿のままカーテン開けるつもりなのか?」


「バっ……バカじゃないの⁉ そんな破廉恥なことしないから!」


 念の為に聞いておいた質問に、カーテンの隙間から赤面した顔を出す。


「着替えたら呼ぶから! 覗いて欲しいの!」


「その発言が一番破廉恥だぞ」


「じゃぁ何? この中に一緒に入ってくれるの?」


「それはごめんだな」


「それなら覗くしかないじゃん!」


「もっと他にいい方法あるだろ」


 家に帰ってからのお楽しみとか。そっちの方がエロいお楽しみイベントみたいでいいと思うんだけど。


「あっ!」


 突然、何かを閃いたかのように、未奈はハッと声を上げる。


「何かいいこと思いついたのか?」


「フフっ……やっぱ私って天才かもしれないね」


「そういうときって、大体ろくでもないこと思いついてるよな」


「蓮馬、甘いね。今日の私はいつもとひと味違うよ」


「毎回毎回、同じようなセリフだから聞き飽きたぞ?」


「まぁ……とにかく待ってなさい。ちなみに、最初から飛ばしていくから鼻血に注意だよ」


 カッコつけてウインクをした未奈は、そのまま試着室の中へ姿を隠した。

 さて、どんな天才的アイデアを思い付いたのだろうか?


 あくまで俺の予想だが、ただ腕を引っ張って中に連れ込まれそう。

 それか、カーテンを全開ではなくチラ見せくるとか。

 その程度で、未奈は天才的とか言っちゃうバカなのだ。


「こ……これ、エッチいなぁ」


 試着室の中から、不快な笑みと共に声が漏れてくる。

 店内の落ち着いたBGⅯに覆いかぶさるように、服が擦れる音、ジッパーを下ろす音ブラのホックを外す音までが俺の耳に鮮明に届いてくる。


 なんか、お預けプレイされてるみたいだなこれ。

 視覚ではなく、聴覚だけで刺激されると脳内で未奈の着替えシーンが妄想されて、自然と悶々としてしまう。


 人間、こういうところがあるから音声作品が人気なのだろう。身を持って実感したよ。


「よし……これなら」


 中から意気込むような音が聞こえると、次の瞬間にはパシャリとシャッター音が聞こえる。


 何回も、何回もそのシャッター音が聞こえてくると、刹那には俺のスマホに未奈から一枚の写真が届いた。



『どう? これ』



 その一言と一緒に送付された写真には、黒いレースのブラジャーにその豊満な胸を包み、面積が狭いガーター付きのショーツを身にまとう未奈の自撮りが送られてきた。

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