第49話 別の世界


翌日、いざ復讐をするために、満を持して家を出た俺と未奈。

昨日の夜中、作戦は練った。だから、あいつらに地獄を見せる準備は万端だ。


とはいっても、ただ未奈とのⅮⅯを印刷して学校中にばら撒き、クラスであいつらのことを暴露するだけだが。

話し合ってこれだけか、と思うだろうが、こういうシンプルなのが一番心にくるものがあるのは間違いない。


「ちゃんと用意してきたか?」


「印刷代は少し痛いけど……致し方無い」


コンビニプリントも、カラーコピーでそれなりに枚数を刷ればそれなりの金額になる。

でも、復讐代にしては安いものだ。


「さ、行きますか」


「誰もいない学校へ」


集まったのは朝の七時。

管理人がカギを開けただけで、まだ誰もいない状況。

これなら、誰にも見つからずに至るところに紙を貼り付けられる。


昨日色々ありすぎたせいで眠いのだが、それよりもゾクゾクが止まらない。

勝った気でいる人物をどん底に落とすのが楽しみで仕方がない。


隣にいる未奈でさえ、にやけが止まらないでいる。

言わなくても分かるだろうが、この幼馴染カップル、性格が悪いのだ。



                 *



「うわっ、誰もいない学校ってなんか不思議だね」


「不気味だし、ホラー映画にでも入り込んだみたいだ」


学校に着き、校舎に入った瞬間驚きの声が出る俺たち。

窓から日が差し込んではいるものの、いつも賑わっている場所がシーンとしていると不気味で仕方がない。


今にも人体模型が動いたり、音楽室からピアノの音が聞こえてきそうな感じだ。

しかし、そんなことはどうでもよく、


「人が来ないうちに早くやろ!」


「それもそうだな」


早速作業という名の復讐を始める。

下駄箱前にある掲示板から、廊下の壁、あらゆる教室黒板や壁にまで、紙があるだけ貼り付ける。


嫌でも目に付くような場所に、みっちりと。

二人でするのは一苦労だが、未奈の清々しそうな顔を見ていると、そんな作業も退屈しない。


仕返しするのが悪だっていうことは分かっている。けど、悪には悪で対抗するしかないのだ。

こちらが黙っていたって、言われ続けるだけだ。


それも一時的なものではない。これは学校在学中にも卒業してからも続くものだと思うから。

噂というものはそういうものだ。


「とりあえず、一通りは貼り終わったな」


「あと一ヶ所を残してな」


その一ヶ所がある場所で、俺たち立ち止まる。

その場所は、未奈の教室。昨日のことがやはりトラウマなのか、少し入るのに躊躇をしている未奈。


「大丈夫。昨日とは違うんだ」


不安そうな未奈の手を握り、俺は微笑む。

それに答えるように、ぎゅっと俺の手を握り返すと、


「そうだね。私たちは昨日と違うんだ」


と、目をキリっとさせる。

この扉を開けたとしても、昨日とは別の世界が広がっている。

いや、これから先の全てが、昨日と違う世界だ。

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