第8話 やっぱ言えない!

「早く話した方がいいんじゃないか?」


 スーッと深呼吸をした俺は、冷静を装って未奈に言う。

 俺の為にも早く話してもらいたい。


 これ以上この状態が続くと、俺も理性を保っていられるか不安だ。

 いくら女遊びをしていたって、エロいものはエロいし、興奮するものはする。

 それに、これまで手を出していなかった幼馴染ときた。


 無理にでも異性として意識をしていなかった未奈とこの状態は、流石の俺も限界を迎えそうである。


「こうなったら、もう言うしかないんだけど……信じてもらえるかどうか分からないし」


 俯く未奈は、不貞腐れて口をすぼめる。


「これまで俺がお前の話を信じなかったことあるか?」


「ない……けど」


「だろ?」


「でも、その……今回の話は信憑性に欠けるというかなんというか」


「長引かせると、その分言いにくくなるぞ」


「……んなの知ってるよ」


 何をそんな言いずらいことを隠しているのだろうか。

 実はヤりすぎて子供が出来たかも、とかだったら洒落にならないぞ。

 なんか、いきなり聞くのが怖くなってきたぞ、これ。


 けど、ここまで問い詰めてしまった以上、俺も何を聞いても動揺しないように覚悟を決めなければ。


「実は、実はね……」


 そっと口を開く未奈に、ゴクリと生唾を飲む俺。

 よし、どんとこい。どんなことがあっても、俺は受け止めよう。

 なにせ、俺は幼馴染だからな。


 時が止まったかのように、ピタリと静まり返る室内。

 しかし、時計の針が刻一刻と時間を正確に進めている。

 カチッ、カチッと三回針が動いた後、


「ごめん! 今の私にはやっぱ言えない‼」


「……んぐっ⁉」


 未奈は絶叫したと思えば、その刹那に俺の股間に激痛が走る。

 ピクピクと体を震えさせながら下を向くと、未奈の膝が俺の股間に突き刺さっていた。


 凄まじい激痛に耐えられない俺は、膝から床に崩れ落ちる。


「こ、この件は今度ちゃんと謝るから! 今日は大目に見て! ま、また学校で! それじゃ!」


 そんな俺を横目に、足早に部屋から去っていく未奈。


「お、おい……ちょっと……ま……て」


 かすれた声のまま手を伸ばすが、その手は未奈には届かない。

 ただただ床に悶えながら、部屋から出ていく未奈を涙目で見ることしかできない俺。


 うずくまりながら、俺はポツリと呟く。


「今日……俺……ダメージ多くないか……」


 行為を全部見られていたことといい、玉が一つなくなるくらいの強い膝蹴りを食らったことといい……。


 痛さを含めて色々なことを考えて涙が出てしまう。

 でも、俺はこの痛さで諦めるわけにはいかない。


 あいつの隠しごとを暴くまで、俺は抗うぞ。


 玉の一つや二つ捧げたっていい……いや、それはダメだ。使い物にならなくなるのは色々困るから。


 ま、まぁ……そうだな。



 とりあえず……明日から頑張ろう。

  

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