第9話 隣の席
翌日、未奈と一緒に登校しない朝はなんとも新鮮だった。
小中高とほぼ毎日、皆が俺を迎えに来て一緒に学校へと向かう。
しかし今日の朝、起きるとスマホには一件の通知が来ていて『今日は先に学校言ってるね!』と未奈から一言送られていた。
まぁ、昨日あんなことがあったんだ。
一緒に居るのが気まずいのも分かる。
幸いなことにクラスは一緒ではないため、ふと目が合って急いで逸らすという初々しいカップルみたいなことをする心配もない。
教室のドアの前で『また放課後で』と、手を振って言われないのが少し寂しいところだけど。
「顔色悪いけど、どうしたの?」
昨日の疲れもあり、自席にぐでっと野垂れている俺は、後ろから声を掛けられる。
「え、そんな血色悪いか?」
「死んだ魚みたいだよ」
「重症だな」
「だね」
そう言いながら、俺の席の隣に荷物を下ろす彼女の名前は土岐乃寧々(ときのねね)。
去年からクラスが一緒で、今は偶然にも隣の席。
クラスでシコい女子No1に選ばれるほどの体つきと、顔面偏差値の持ち主。
そして、俺のセフレである。
「元気ないなら、出してあげようか?」
俺と同じように机にうなだれると、こちらを小悪魔な笑みを浮かべながら見てくる。
「それ、逆に元気搾り取られない?」
「精神的に元気になるけど、身体的には疲れるかもしれないね」
「この前、どっちも限界までシたの覚えてないのか?」
「あのときもよかったけど………最近一番興奮したのは、体育倉庫でシたときかな」
そしてそして、未奈に行為を見られたもう一人の被害者である。
「その話は、あんまするな……。傷をえぐられてる気がする」
「傷? あのとき別に普通にシてたじゃん」
「いや、そうゆう問題じゃなくて……」
「もしかして、誰かに見られてた……とか?」
「うん。そんな感じだな」
未奈に見られてたと言っても特に問題ないだろう。
寧々も未奈と面識があるし、俺と同じで恥ずかしいという感情だけで済むはずだ。
「ちょちょちょ! それって声が漏れてたってことだよね⁉ ていうか、誰に見られてたの!」
椅子から勢いよく立ち上がると、ガシっと俺の肩を掴んでくる寧々。
「声は漏れたらしいぞ。あと、窓もちょっと開いてたって」
「そこはもういいの! 誰に見られてたかだけ言ってよ!」
「未奈だからそんな心配はいらないぞ。あいつなら誰にも言わないだろ?」
「なんでそんなに冷静なわけ⁉ いっちばん見られたくなかった人なんですけど⁉」
未奈の名前を聞いた途端、肩を掴んでいた手は胸倉に位置が変わっていた。
「え、なんで未奈じゃダメなんだよ。逆に一番安心でしょ」
どっちも面識があって、俺に関しては幼馴染で仲が良すぎている。
だからこそ安心だと思うのだが……俺が危機感を感じてないだけなのだろうか。
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