第7話 色々当たって……//

 後ろから声を掛けられた未奈は、ビクっと体を震えさせる。

 ゆっくりとこちらに振り返ると、


「な、何も隠してないよ?」


 声を裏返し、俺からゆっくりと目を逸らす。


「やっぱり。俺の勘は当たってたようだな」


「なんのことか分からないな~」


「バレバレの芝居は自分の首を絞めるだけだぞ」


「ぐぬぬ……」


 なんか怪しいと思ったんだよ。

 いつもなら、俺が送ってあげるまで駄々をこねるのに、今日は素直に帰ろうとしてたし。


 要するに、俺から一秒でも早く離れたかったということだ。

 その方が勘づかれる心配もないし、墓穴を掘ることもない。


 わざわざ俺に送ってもらおうとしたのも、普段と同じ行動を取ることでやましいことなんてないというフェイク。


 甘いな未奈。

 幼馴染の目は簡単に騙されないぞ。


「お前、他に隠してることあるだろ」


 俺に肩を掴まれた未奈は、冷や汗を垂らしながら顔を背ける。


「なんのことかサッパリなんだけど?」


「あのな~、さっきも嘘ついてるのバレてたんだから、今更だろ」


「いや、突き通すのも大事かなって」


「その言葉、自白してるのと同じだからな?」


「あ……」


 自分から言ってくれて助かる。あとは言うまで俺が待てばいいだけの話だ。


「あんだけ恥ずかしいことお互いバレてんだからさ、もう……いいだろ?」


「よくないでしょ。隠しごとっていうのは、恥ずかしいから隠すんだよ。レベルは関係ない」


「そうだけどなぁ……」


「ということで、私はこれで」


 逃げ足の速い未奈だが、ここで逃すわけにはいかない。

 未奈がドアに手を掛けた刹那、俺は体ごと未奈に覆いかぶさる。

 ドアと俺との間に挟まれて、身動きが取れなくなった未奈。


「ぜってー逃がさないからな」


「んなっ!」


 いわゆる壁ドンの姿勢になってしまったが、これでいい。

 家の中で追いかけっこをするよりは、マシだ。


 しかしだ。普通の壁ドンよりも距離が近い、近すぎる!

 少し顔を傾ければキスが出来るし、既に俺の腹部には未奈の豊満な胸が押し付けられている。


 薄いTシャツとブラに妨げられているが……暖かく、柔らかい感触が俺の肌へと伝わってくる。


 ヤバい……。頭の中にあのときの光景が浮かんでしまう。

 後ろから突かれたときに、激しく揺れる乳。それが、今俺にむぎゅっと当たっている。


 興奮するな俺! 下半身に血流を送るな!


 どれだけ理性があったとしても、生理現象には逆らえない。考えれば考えるだけ、バキバキになってしまう息子。


 足を少しでも動かしたら、こいつのお腹に元気いっぱいの息子が当たってしまう。そんな痴漢まがいなことはしたくない!


「ちょ、色々当たって……//」


 それが当たらないように、少しだけ体の位置を変えると、未奈は口元を手で押さえながら不意に甘い声を漏らす。

 羞恥に染まった顔は、更に俺の血行を促進させる。


「ねぇ、もういいでしょ……?」


 荒くなった吐息が、俺の首筋をそっと撫でる。


「いいわけないだろ。俺は言うまで離さないからな。こっから逃げられるものなら俺を退けてみろ」


 流石に男女の対格差だ。俺を押しのけるなんてできるはずがない。

 だから、未奈が俺から解放されるには、選択肢は一つしか残っていない。

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