第6話 もうしない

「色々聞けてよかったよ……何の話かはさっぱり分からないけど」


 精神がズタボロになって、未奈から興味深い発言が出たのにも関わらず、ちゃんと設定を守って話す俺。


「今日は想像以上にいい話ができたね」


「これは果たしていい話なのか?」


「私の予想では、もっと浅く終わるはずだったからさ。まぁ、お互い仲がより深まったということで」


「これ以上深まってどうするんだよ」


「ずーっと一緒に居る幼馴染でも、知らないこともあるだなってこれで分かったじゃん」

「それはいい気づきかもな」


 しかし、その反面に不安も募る。

 何か一つでも隠してたという事実がある以上、他にも何か隠していることがあるのではないかという不安がある。


 幼馴染だから言わないことなのか、幼馴染だから言えないことなのかは分からないけど。


 俺はこれ以上、未奈に隠しごとなんてしたくない。

 今日でよく分かった。どれだけバレないように隠していても、いつかはバレるということ。


 この幼馴染という関係性を変に壊さないためにも、未奈の前で宣言しておこう。


「これから先、俺は何も隠しごとしないから」


 未奈の瞳を見て、真剣に話す。

 俺の誠意が伝わったか、


「うん。私もこれからは何も隠さないよ」


 未奈も頷きながら、俺の手を取る。


 お互い様なわけだし、どっちも傷ついてはいけないだろうけど、知らない内に傷つけてもおかしくはない。

 大切な幼馴染を泣かせるのだけは、絶対に許さない。


「はぁ~、なんか今日は疲れたからもう帰ろっかな~」


 張っていた気が緩み、ぐーんと背伸びをする未奈。


「そうだな~、俺もどっと疲れたわ」


 感情の起伏が激しかったからな。身体的というより精神的に疲れた。


「蓮馬はこの後何するの?」


「俺は寝るかなー。夜ご飯は後で食べればいいや」


「なんだ。家まで送ってもらうがてら、ご飯食べに行こうと思ったのに」


「なんで送られる前提なんだ」


「蓮馬は可愛い女の子を一人で帰らせたりしないよね?」


「すぐそこだろうが。一人で帰れ」


「いくら近くても、夜道は何があるか分からないから送っていくのが男としてのマナーだと思うけど?」


「あいにくだけど、俺はそんな紳士じゃないから」


 と、ベッドに横になる。

 コンビニでアイスを買うがてらに送ってってあげてもいいのだが、今は睡魔に勝てる気がしない。


「ちぇー。蓮馬のケチ」


 不機嫌そうにプクリと頬を膨らませた未奈だったが、諦めたか荷物をまとめて立ち上がる。


 部屋を出るときにそのまま電気を消してもらって寝ようとしたのだが、ふと目が覚める。


 ムクッと起き上がる俺は、未奈を呼び止める。


「一応確認しておくけど、もう何も隠してないよな」

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