第19話 じゃぁ、今日からカップル?

 いつも通りのたわいもない話をしていると、ショッピングモールに到着した。

 ここまでの攻防戦は俺の勝利。

 今もくっつかれてはいるものの、それ以外のアピールはさせないことに成功した。


 ていうか……ちゃんと俺のこと好きじゃん。未奈のやつ。

 可愛い、可愛すぎるんだけど……負けないようにしなくては。

 コロっといきそうなのだが……耐える、耐えるんだぞ。


「さて、お目当ての下着を見に行くよ~」


 俺の手を引っ張って、先陣を切る未奈。


「張り切りすぎだろ。走っても下着は逃げないわ」


「早く試着して、可愛い下着を着てる私を蓮馬に見てもらいたいのっ!」


「何、試着してるの見なきゃいけないのか?」


「当たり前じゃん。そのために呼んだんだから」


「聞いてないぞそんなこと」


「だって言ってないんだもん」


 言ってないんだもん、じゃねーよ! 肝心なことは先に言えよ!

 そもそも、試着だとはいえ公共の場でそんな破廉恥なことをするな!


 しかも見せられた俺はどんな反応すればいいんだ? 変に反応してもそれをいじられるかもしれないし、普通に褒めればいいだけか。


「ほれ、着いたよ~」


「はぁ……男が入っていいのか分からないお店No1の場所にな」


「カップルなら大丈夫でしょ」


「幼馴染が何を言ってるんだ」


「じゃ、今日からカップル?」


「アホか」


 未奈の頭をチョップすると、歩幅を合わせて店内に入っていく。


「さて、蓮馬はどれがいいと思う?」


 ずらーっと並べられている下着を一通り眺めると、俺の方を見る未奈。


「どれって言われてもな、自分の好みもあるだろ?」


「私は蓮馬の好みのがいいの!」


「難しいこと言うな……」


 下着の好みか。

 個人的には赤のブラとか好きだけど、なんか生々しくて言う気が引ける。


「白とかがいいんじゃないか?」


 だから、無難な回答をしてみる。

 まぁ実際、未奈には似合いそうだから。


 控えめな色のブラを巨乳が着ているっていうのは、自分に刺さるものがあるからな。


「色は白ね。柄とかはどーう?」


「レースが付いてるのはいいなーって思うな」


「花柄とかは? あり?」


「ありだな」


「じゃ、その条件で聞いてくる!」


 パぁっと笑顔になった未奈は、店員さんの元へと駆け寄る。

 マズい……無意識に本当に自分の好みのものを言ってしまった。


 そんなの未奈に付けられたら……俺の理性は崩壊してしまうかもしれない。

 ダメだぞ……ちゃんと話をするまでは待機だ。

 全裸待機でいいから、早まるなよ、俺。


 俺だって、付き合えるものなら未奈と付き合いたいんだ。

 今言っても、すぐOKされるのは目に見えている。

 けど、それだけではダメなんだ。


 未奈の気持ちも俺の気持ちも全部さらけ出して、本当に隠し事がなくなったときに、伝えたい。


 ん……? 隠し事?


 あの夜、未奈は俺に隠し事をしてたよな……?


 もしかしてその隠し事って……。






 俺のことを好きだってことなのか⁉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る