第46話 真のファーストキス

「ちょっと蓮馬、何言って……」


「俺が今から言うことに、お前はどう思うか分からない。バカじゃないって俺を罵るかもしれないし、貶すかもしれない。それとも、賛成してくれるかもしれない」


「大体言おうとしてることは分かってるから言うけど……蓮馬は本当にそれでいいと思ってるの?」


「幼馴染同士、お似合いだなって言われた方が、俺としては本望だからな」


 幼少期から似ていると言われてきている俺たちだ。ここに来てやっぱ似てないなんて言われたらたまったもんじゃない。

 ということは結論、全校集会に広まっているであろう未奈の噂を上書きするように、俺の噂も流すということ。


 そう言わなくとも、未奈は俺のすることを分かっているはずだ。

 だから言わない。


 その代わりに、もっと大事なことでも言っておくか。

 これまで関係を崩したくなくて言えなかったこと、俺から言った方がカッコイイ言葉を。


 未奈は気づいているのだろうか。直接的ではないが、さっきそれらしきことを言っていたことに。


 そう。俺はお似合いって言われたいんだ。

 未奈が何をしてたとしても、それは未奈で、俺の好きな未奈なんだ。


「なぁ。お前はクソみたいにバカだ。本当にバカ幼馴染だ」


「そう……だね」


「でも! そんなバカと一七年間も一緒に居る俺。なんでだと思う?」


「幼馴染、だから?」


 小首を傾げる未奈。

 確かに、それは間違っていない。


 ここまで言って、告白されるのを分からないバカには、行動で示した方がよさそうだな。


 多分、分かっているだろう。でも、こんな自分が告白されるなんて……と納得していないから、こんなにも自然な反応が出るのだ。


 ま、そんなバカを納得させるなんて、俺には容易い御用。


「れんま――んっ」


 未奈が俺の名前を呼ぼうとするが、それを遮るように、俺は未奈の唇を奪う。

 一七年間で初めての、好きな人とのキス。これが、俺と未奈にとって真のファーストキス。


 突然のことに、最初は戸惑っていた未奈であったが、次第に唇がほぐれ、一七年間の思いが全て詰まった濃厚なキスへと変わる。


 舌が絡まり、ぽっかりと開いていた心の穴を埋めるように、お互いがお互いを欲しがる。そんなキス。

 荒く熱い吐息、ふと漏れる甘い声。仕草全てが愛おしくて儚い。


 一七年を取り戻すような長いキスが終わり、そっと唇が離れた。


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