第45話 フェアじゃない
声を掛けることなく、俺は未奈が寝転ぶベッドに座る。
正直、なんて声を掛けていいか分からない。
慰めればいいのか、笑い飛ばしてあげればいいのか、どちらが未奈にとっていいかは分からな唯一、俺の出来ることがあるとするならば、
「大丈夫、俺が居るから」
と、安心させることだけ。
「そうやって言っても、蓮馬だって引いてるんじゃないの……?」
俺に背中を向けたまま、未奈は震えた声でそう呟く。
「なんでそう思うんだ?」
「思うも何も、みんなの反応見れば分かるでしょ。私は誰にでも股を開くクソビッチで、あんんなことされても、全部真実だから言い返せないんだよ?」
「それが、俺が引く理由になるのか?」
「なるでしょ!」
バっと、俺の方を振り向く未奈。
涙でくしゃくしゃになった顔には、無性の怒りと、悲しみと、焦りがどれも混じっていた。
「なんで……蓮馬はこんな私になんでそんなに優しい顔ができるの……」
ジッとこちらを見る未奈からは、また涙が溢れる。
「優しい顔なんて、してないけど」
「いつもと変わらないんだよ……いつもと同じ、優しい顔……」
ぎゅっと、俺の服を掴む。
その行動には、離れて欲しくない、俺だけはどこにも行って欲しくないという本音が込められているようだった。
「未奈、お前は本当にバカだな」
「そうだよ……私は大バカだよ」
「バカ過ぎて話にならない」
「そう思うなら、そんな優しい顔しないでよ」
「そうやって、自分だけ悪者みたいにするのがバカだって言ってるんだよ」
「……え」
俺の言葉に、俯いていた未奈は顔を上げる。
学校であれだけのことをされたら、頭が真っ白になって何も考えられなくのも分かる。
それに、黒板に書かれていたことが事実とくれば、自分が悪者で責めたくなる気持ちも分かる。
しかし未奈は盛大に勘違いをしている。
目の前にいる相手が、どんなやつかを盛大に忘れている。
「体育倉庫のことを見ておいて、自分だけがヤりまくってるとは言わせないぞ?」
そう。ここに居るのは正真正銘のヤリチンだ。
誰に引かれてもおかしくないくらいの、どうしようもない性欲お化け。
俺の前でヤりまくってるのが悪だなんて、言わせてたまるか。
「お前が誰とヤッても動揺しないのは、俺も同じだからな。色んな女子とつい最近シまくっててたからな。みんなバレてるかバレてないてないかの違いで、シていた理由も寂しさを紛らわすためにってので同じだ」
全てお見通しだったことに、ポカンと未奈は間抜けな顔をする。
「最初から俺たちはバカだったんだよ。お互い、誰かとシているのを見て見ぬフリ
をして、すれ違って、最終的には未奈だけが責められる。そんなのフェアじゃない」
俺は不平等なのが大嫌いだ。
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