第13話 フラグ回収
ついに放課後になってしまった。
……クソっ、フラグとか変なことを考えすぎていて全く授業に身が入らなかった。
授業なんていつも寝てるだけなんだけど……その睡眠さえも妨げられてしまった。
「ねぇ、早く行こうよ」
眠い目を擦っていると、すでに荷物をまとめていた寧々は、俺の服の袖を引っ張る。
「ちょっと、仮眠してからでもいいか? 眠すぎてヤバい」
「えぇ~なんで眠いの。授業中寝てたじゃん」
「今日は机に伏せてただけだ。寝てない」
「あれ、蓮馬なのに珍しい」
「色々考えることがあってな……寝れなかったんだよ」
原因はお前と未奈の二人なんだけどな!
「別に、寝るなら寧々の家に行ってからでいいじゃん」
しゃがみ込むと、俺の机にちょこんと顎を乗せる。
「家に行ったら、寝る前にヤられそう」
「そっちの方がぐっすり寝れるでしょ?」
「寝ようとしたら襲われそうだし」
「おそ……うかもしれないけど、一回シてからだったらちゃんと寝かせてあげるから!」
「するのが前提なのかよ……」
今日の寧々はムラムラが止まらないようだ。誰か朝食に媚薬でも混ぜたのか?
目を閉じれば今にでも眠れそうではあるが、ここを我慢して寧々の家まで行けば、硬く冷たい机ではなくフカフカのベッドで熟睡ができる。
花の香りのアロマと、横には寧々という極上の抱き枕までついている。
「よし、とりあえず向かうか」
極上の睡眠を取るために、俺も荷物をまとめて席を立つ。
少し歩けば、一回戦できるくらいは目が覚めるだろう。
「そうこなくっちゃ!」
そんな俺の姿を見て、あからさまにテンションの上がった寧々は、スキップをしながら教室のドアへと向かう。
その後ろを、小さく笑いながらも俺はついていく。
「今日は何回できるかなぁ~」
「自分の腰と俺の腰には気を遣ってくれよ」
「支障がないくらいにするもん。それに――」
寧々がドアを開けた刹那、その場の空気が凍り付く。
廊下の前には、ドアに手を掛けていた未奈の姿。
「「えっ……」」
顔を見合わせた未奈と寧々は、驚きで声を漏らす。
「未奈⁉」
後ろに居た俺も、つい声を上げてしまう。
その声に気付いた未奈は、寧々の体からちょいと顔を出してこちらを見つめる。
「ふーん、そうゆうことね」
俺に向けられる冷血な眼差しと、生気のこもっていない冷ややかな声。
あ、死んだ……。
一緒に居るところを一番見られたくない人に見られてしまった。
見事なフラグ回収すぎる。
だから言っただろ俺! フラグは立てたら回収するものだって!
鉢合わせになることなんて考えもせずに、授業中寝てればよかったんだ!
その方が、眠気もなかっただろうし、こんな気まずい展開にもならなかっただろうよ!
それにしても……どうする? どうするこの状況⁉
何か一度でも発言を間違えば、俺はここで死ぬ。
それを、未奈から向けられる目が物語っている。
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