第10話 謎の敵対心

「ダメなものはダメなの! だって未奈は寧々の……あ、なんでもない」


 と言いかけるが、咄嗟に口元を覆う寧々。


「一番気になるところで止められたんですけど」


「とにかく! 未奈には絶対に見られたくなかったの!」


 両手を突っ張って声を張る。

 女子同士だから何か気まずいことでもあるのだろうか。


「……それで、未奈の反応はどうだったわけ……?」


 見られなくなかったにも関わらず、やはりそこは気になるらしい。


「反応は普通だったぞ。動揺はしてたっぽいけど」


「そりゃー動揺するでしょ」


「話せば長くなるけど、直接的にその話をしたわけじゃないしな。いやまぁしたんだけど、解釈が違うというかなんというか」


「そこ、具体的に言ってよ」


 興味津々に、寧々はグーンと顔を近づけてくる。

 ホームルームまで時間はあるし、一から話の全容を話してあげることにした。


 最初の方はうんうんと頷いて話を聞く寧々だったが、話が進むにつれて、困惑した様子で首を傾げる。

 そして、最終的に言った言葉がこれだ。


「頭大丈夫?」


 うん。俺もそう思う。

 だって、傍から聞いたら頭がおかしい話だ。言葉に出さなければ事実にはならないって。


 俺も他人から聞いた話だったら、寧々と全く同じ反応をするだろう。


「幼馴染って、なんかすごいね。そんな理屈が通用するなんて」


 はぁっ、と呆れてため息を吐きながら自分の席へと戻る寧々。


「幼馴染の特権だよ」


「そこ、自慢気に話すところじゃないからね」


「いいだろ! お互い認識阻害してるんだから! 幸せならそれでOKだろ⁉」


「ちょっと違う気がするけど……それで納得してるんだったらいいんじゃない」


 ジトっとした目で俺を見てくる。


「納得なんてしてるわけないだろ。むしろ感情をぐちゃぐちゃにされてるよこっちは」


「ま、幼馴染のそんなとことを見たら変な気持ちにもなるだろうね。しかも自分のもバレてるとか、ホントご愁傷様です」


「同情されるのが一番痛い……」


 合掌するな。その行動が一番心に突き刺さってくる。


「寧々に被害ないといいんだけど……敵対とかされたら普通に困る」


「見られた以外の被害はないだろ。ただ俺と仲がいいだけで敵対もないと思うし」


「仲がいいとかいう問題の前に、見られたから敵対されるんじゃないかって思ってるの!」


「え、それはなんの敵対?」


「……ごめん、それはこっちの話」


 いくらなんでも気にしすぎだ。

 もしも、未奈から敵視されているなら、ヤったのがバレれる前から目を付けられているはずだ。


 隣の席の女子が幼馴染と仲がいいとか、一番目に着くだろう。

 なんか、言動からに寧々も裏がありそうで怖いな。


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