第41話 やっぱり、そうだったんだ

「いきなり怒鳴ってどういうつもり⁉ バカじゃないの⁉」


「お前も俺に怒鳴ってるだろ、現在進行形で」


「私は声のボリュームを考えてるわ!」


 俺を壁に押し付けて、胸倉を掴んでくる未奈。


「仕方ないだろうが。こうでもしないとストーカー野郎にお前がいるってバレるだろ」


「もう既にバレてかけてるんですけど?」


「俺がこうして大声で怒鳴ったら、ただトイレで電話越しに喧嘩してるやつか、一人で発狂してる頭がおかしいやつだって勘違いするだろ」


「私の声が誤魔化せてないんですけど」


「それでも、やるだけマシだろ」


 まぁカッコつけて言ったものの、ただ俺の怒りが抑えられなかっただけで、そんな思惑一つもなかったけど。

 少しでもあのストーカーを騙せる行為に繋がったと思えば、良しとするか。


「はぁ……電話の音のせいで肝が冷えたわ」


「俺がお前の声でビビったわ」


「全部電話してきた人が悪いわ、これは」


「じゃぁ、絢音に全部言ってくれ」


 今度、二人で説教だな。

 怒られる当人は理由が分からないだろうが、今回ばかしは俺たちに怒られてくれ。


「はぁ……これでまた脱出が遠のいたな」


「校舎の鍵が閉まるギリギリの時間まで待機ね。あと、三十分くらい?」


「……長いな」


 三十分なんて、いつも通り話していればすぐに経つのだが、そのいつもどおりが出来ない状態の今に三十分は長すぎる。


 告白も件もあったり、場所も場所だし……いっそ走って逃げたほうがいいんじゃないのか? とも思う。


 しかし、そんなことを考えているのも無駄だったようだ。


 ――ガラガラ


 何者かが、外から扉を開く。


「あっ……」


「ヤバっ……」


 扉を開けた者の姿を見た瞬間、俺たちの背筋は氷ついた。

 未奈にストーカーが、こちらを見て呆然と立ち尽くしている。

 殺される……。なんで鍵を閉めなかったんだ俺は! 焦りすぎて一番大事なことを忘れてしまった!


「あ、ま……」


「これは……これは違う、から!」


 何か弁解しようと、口を開く俺たちであったが、


「やっぱり、そうだったんだな」


 そのストーカーは、ポツリと一言そう残すと、俺たちに何もすることもなく、ゆっくりと扉を閉める。

 ……助かった? いや、助かったんだよな?


「よかった……生きてて、俺」


「……意外に何も言われなかったね」


 ホっとため息をつくが、少し引っ掛かることがある。

 ストーカーが呟いた一言。

 これが妙に突っかかっている。





 しかし、この引っ掛かりは翌日すぐに取れることとなる。





 それも……最悪の形で。




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