第2話 想像して一人でシてないでしょうね!

「一旦さ、ゆっくり話をしない?」


「んっ……んぐっ! んん~っ~!」


「あ、ダメってことね」


「……っ! ん~ん! んぐっ、んぐ~っ!」


 時間が経つにつれて、未奈は更に大きく暴れ出し、そろそろ俺も手に負えなくなってきた。

 馬乗りになられている以上、劣勢なのは俺だ。


 どうにかしてこの状況を打開しないと、どちらにとっても最悪の結末になってしまう。

 幼馴染という関係を、俺はこんなときに崩したくない。


「俺に一つ提案がある!」


 部屋に響き渡るくらいの声量で言うと、ピタリと未奈は静かになる。


「この話はなかったことにしないか? お互い何も見てないし、聞いてない。これならお互い納得がいくだろ?」


 この案に、はいはいそうですか、と未奈がそう簡単に話を飲むわけがないと思っているから、つい俺も言っていて苦笑してしまう。

 これはダメ元だ。

 また暴れ出したら……それはそのときに考えよう。


 片目をつぶって未奈の方を見る。


 一瞬、何言ってんだこいつ、みたいな顔をされたが、しばらく遠くを見て考えた後に静かに未奈は頷いた。


 え、このバカみたいな暴論が通用しただって?


 おいおい嘘だろ?

 逆にこれで納得されてしまうと俺たちがバカみたいじゃんか。


「マジで?」


 ポカンとした表情のまま、俺は未奈の口から手をどける。


「……ったく、いきなり口を塞ぐかと思ったら何よその提案は!」


「何って、俺なりに考え出した最適解なんだが?」


「それがあれって……あんたバカ?」


「それに頷いたお前も相当バカだけどな」


 バカなのはお互い様だ。幼馴染らしく似たもの同士だよ俺たちは。

 隠れてシてるのも不覚ながら同じだったけどな!


「……口に出さなきゃなかったことに……ね」


 ボソリと未奈は呟く。


「もうこの話もなしだ。考えれば考えるだけで時間の無駄だ」


「そうだけど……なんかモヤモヤする」


「モヤモヤするのは俺も同じだ。だってあんなの見せられたらよ……」


 あんな光景、忘れられるわけがないだろ。

 幼馴染が犯されてるんだぞ? 


 同級生のアレに突かれて『しゅき』とか『もっとシて』とか甘い声で言ってるんだぞ?

 色んな意味で記憶に残るわ。


「……この話は忘れるとしても、一つ聞きたいことがあるんだけど」


 馬乗りのまま、グーンと顔を近づけてくる未奈。

 その顔は、どこか恥ずかしそうに火照ってるような気がした。


「あんた……見たわけじゃん。それで想像して変なことしてないでしょうね」


「変なこと?」


「そ、そうよ! 私で想像して一人でシてないでしょうね!」


「……し、てないな」


「明らかに間があったんですけど⁉」


「気のせいだ」


 とぼけてみるが、やはり幼馴染。どんな変化も気づかれてしまう。

 シてるシてない、選べと言われたらシた。それも、その夜に三回も。

 仕方ないだろ! 幼馴染の体とか興奮しないわけがない。


 こんな破廉恥な体つきになって、と小さい頃からの記憶と照らし合わせたら、興奮しない方が難しい。


 加えて、未奈は美少女だ。一緒に居すぎて超美少女でも普通に見えるという幼馴染補正が掛かるというが、俺はそんなの掛からない。


 未奈は誰がどう見たって可愛い。

 顔も、性格も、全て完璧と言っても過言ではない。

 幼馴染だからこそ、未奈の可愛いところを知っているまである。


 ま、その可愛い幼馴染は、俺の知らない人に股を開いているんだけどな。


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