第50話 最高の眺め

「それじゃ、開けるよ」


「……うん」


 一度深呼吸をすると、未奈と一緒に扉を開ける。


「綺麗、だね」


「いつも以上にな」


 ズレ一つなく整列された机、新品のようにピカピカの黒板。

 昨日とは見違える教室内に、俺たちは唖然としてしまった。


「誰のおかげなんだろう」


「ま、なんとなく俺には分かる」


 多分、ここまで綺麗にしてくれたのは寧々だろう。

 人脈の多い寧々は、友達も呼んでみんなでここまで綺麗にしてくれたのだろう。

 すべて、未奈のためにだ。


 また学校へ来て欲しいと、こんなことで折れないで欲しいという気持ちなのだろう。


 相変わらず不器用だな、あいつも。


「よし、早速やりますか」


「これだけ綺麗にしてくれたってことは、ヤっちまえってことだよね」


「そうゆうことだ」


 俺たちに汚される寧々も本望だろう。

 派手にやっちゃいなという意図もあるだろうし、それに甘えてやりたい放題してやろうではないか。

 まぁ、違ってたらほんとごめんって感じなんだけど。


「とにかく、荒そうぜ。昨日の比じゃないくらいに」


「あいつの席にローション流し込んでやる」


「いや、それはやりすぎなのでは?」


「そう? ローションプレイが好きとか言ってたからちょうどいいかなって。私は聞き流してたけど」


「よし、やろう」


「あとはドⅯのやつの席にはおもちゃでもぶち込もう」


「好き放題やっちゃえ」


「退学とか停学とかどうでもいい。私たちを怒らせたのが悪いんじゃ!」


「この幼馴染に手を出すと、痛い目に合うって見せつけないとは」


「おうよ!」


 ノリノリになりながら、綺麗な教室を徐々に汚していく。

 まさか、同じことをされるとは想定してないだろうな。それも倍返しでされるなんて。


 いい気味だぜ。盛り上がることも間違いなし。

 昨日の一件は先生にバレていなく、騒ぎも生徒間だけだったようだが、これはそうもいかないな。


 学校中に貼ったからな。

 俺と未奈、そしてあいつらも呼ばれて事情聴取されるんだろうけど……まぁ、喧嘩を吹っ掛けてきたのはあいつらだし? やり返すのは悪いが、怒られたときはそのときに言い訳でも考えよう。


 今はあいつらの顔を情けない顔を拝みたい。


「うっし、全部完了だな」


「あとは来るのを待つだけね」


 変わり果てた教室を眺めてフゥっとため息を吐く俺たち。

 なかなかのいい眺めだ。絶景過ぎる。


 やってやったぞという達成感と、勝ちが確定しているという優越感。

 心が満たされていく。

 二人で余韻に浸っていると、


「あちゃ~、これはまた派手にやったね~」


「あいつら、顔真っ赤になりますよ? 先輩」


 ガラリと扉が開き、中へ入ってきたのは寧々と絢音だった。

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