第29話 呼んだ?

「寧々先輩といい、ヒロイン上位互換の幼馴染である未奈先輩といい、どうしてこうもライバルが増えるんですかね」


 テーブルに頬杖を突くと、プクっとむくれる絢音。

 あれ? 絢音も未奈をライバル視している人?


 寧々といい絢音といい、未奈は知らない内にライバルを作り過ぎなんだよ。

 俺の体を求めて争うライバルなのか何なのかは知らないけどさ。

 そんなハーレム争いに巻き込まれてる俺、モテすぎなでは?


 もし、俺がニ人三人いるのなら、全員に振り分けられるし、竿も三本……いや、それはキモいか。

 まぁとにかく、俺の竿はモテてるらしい。

 未奈は竿というより、俺自身目当てだろうけど。

 絢音の口から出た寧々の名前が気になったのか、


「あれ、絢音ちゃんは寧々を知ってるの?」


「はい。知ってますよ」


「へぇ、意外な接点があるもんなんだね」


「蓮馬先輩関連で関わることありますからね」


「関連? やっぱ寧々が蓮馬の友達だから?」


「それもありますけど、もっと深い関係ですかね」


「ふーん。深いんだ」


 深いと言えば、確かに深いな。

 どっちも俺のセフレなわけで、言い方は悪いが、竿姉妹のわけだし。

 寧々以外とシていた頃、二人に俺が取り合われてたこともあった。


「蓮馬が関わってるとはいえ、寧々も顔が広いんだね」


「ん? 私のこと呼んだ?」


「あ、そうそう呼んだ……ん⁉」


 未奈の言葉に返事をするように、俺の後ろから声が聞こえる。


「ちょ、なんでここに!」


「偶然にもほどがあるでしょ……」


 二人が目を見開いている俺の背後に、俺もゆっくりと顔を向ける。

 そこには、ちょうど話に上がっていた寧々が、よっ、と手を上げながら居た。


「えっと、寧々? なんでここにいるのか?」


 マズいぞマズいぞ。さっきとは比にならないくらいマズいぞこの状況は!


 今! この場に! 俺のセフレが二人!

 それと恋仲になろうとしている幼馴染が一人!


 この場を一言で表すならカオスとしか言いようがない。


「え、私は普通に一人で買い物してただけだけど? お腹減って食べようとしたら三人が居るのを見かけたんだよね」


 こいつも買い物かよ! 休日とはいえ、なんで狙ったかのように今日なんだよ!


「ちなみにだけど、何を買いに来た?」


「下着だけど……あれぇ? もしかして、蓮馬興味あったりする?」


「ごめん今日はその言葉聞き飽きたわ」


 よりによって寧々も下着を買いに来たのかよ。よかった……お店の中で鉢合わせてなくて。


 あの場で寧々とも会っていたら、それはもう修羅場。

 未奈と一緒に買いに来てるなんて、寧々が黙っているわけがない。


「ま、私も一人で来てて暇だったし、ご一緒させてもらいますかな」


 隣の席から一つ椅子を持ってきた寧々は、俺たちに許可も取らないままテーブルに入ってくる。


 帰れ! お前だけは帰れよ! この場に自分から首を突っ込むことが大惨事を招くことなんて、お前が一番知ってるだろうが!


 どうなんだよ……これ。


 俺、生きて今日帰れるのかな……?


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