第28話 キセクじゃないから!

「それでは、話をしましょうか」


 数分後、絢音に無理やり連れて行かれたのはフードコート。

 俺、未奈、絢音は三角形を描くような形で、丸いテーブルに向い合せで座っている。


「えっとー……どうゆう状況かな、これ」


「もう……この場から逃げ出したい」


 意味不明な状況に困惑している未奈と、頭を抱える俺。


「先輩の幼馴染、本当にただの幼馴染なのか怪しいところですね」


 ジーっと未奈を見つめる彩音。


「幼馴染にそれ以上も以下もあるのかな? あと、それはあたなに関係あるのかな?」


「絢音です。私の名前は絢音です」


「じゃぁ改めて絢音ちゃん。絢音ちゃんにそれは関係あるのかな?」


「あります! 大ありですよ!」


 バンと机を叩き、椅子から立ち上がる。

 \

「だから答えてください! ただの幼馴染なのか否かを!」


 そう聞かれた未奈は、言葉を詰まらせる。

 なんでキッパリと答えないんだよ! それだともっと怪しまれるだけだぞ⁉


「ほう、だんまりですか。さらに怪しいですね」


「蓮馬とは……ただの幼馴染だから」


「口を開いたと思えば、あらあら顔が真っ赤だし、自信がないような答えですね」


 ボソリと呟いた未奈だったが、その顔はボッと茹で上がり、分かりやすっ! っと俺もついツッコみたくなるような表情だった。


「俺から言ってもいいか? 未奈とはただの幼馴染だぞ? それ以上も以下も、今はまだ何もないからな? 疑うのは自由だけど、ボロもクソも出てこないぞ?」


「ほら! 今は、って二人は全く同じこと言った! こんなの黒に決まってるじゃないですか! 疑うとかいう前の問題ですよ!」


「別に深い意味はないけどな……」


 助けを求めるように、未奈の方を向く。


「今は、っていうのは……まぁその」


 未奈もそう言いながら、俺の方を見る。


 お互い、その言葉の意味を理解しているからか、目が合った瞬間に、初々しくバっと目を逸らしてしまう。


 そのちょっとした反応を見逃さなかった絢音は、


「もしかしてキセクなんですか⁉ もう既に幼馴染の一線を越えちゃってるんですか⁉」


「越えてない! 絶対に超えてない!」


「シてないから! まだシてないから!」


 禁断の質問に、焦って首を横に振る俺たち。


 本人たちの目の前で聞く質問じゃないだろ!

 個別に聞くなら分かるが、こんな公共の場で破廉恥な言葉を声を大にして言うんじゃない!


「ほら! まだって言った!」


「そ、それはもう口癖でっ!」


「嘘だぁ。絶対に今後は何かあるっていう風にしか聞こえません~」


「何かあるかは……本当に分からないし?」


「グぬぬ……幼馴染だからって優位に立ってると思わない方がいいですよ!」


「別にそんなんじゃ……」


「幼馴染だって負けヒロインになることだってあるんですからね!」


「……」


 未奈、お前。幼馴染ポジションを最強だと思ってないか?

 それは真っ赤な嘘だぞ? 

 俺もそう思っていた時期があるが、実際に一度諦めてるわけだし……。


 他人より優位な位置に居たとしても、自分から動き出さなきゃ何も始まらないんだぞ?


 うわ、この言葉。一、二年前の俺に是非とも聞かせてやりたい。


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