第11話 今日はシたい気分なの!

「そうえば、今日の放課後は空いてる?」


 様子を伺うように、俺の顔を覗きながら言う寧々。


「空いてるけど、どうした?」


 と、いつも通りに返す俺だったが、この文言誘ってくる意味を俺は知っている。

 寧々の『今日空いてる?』それすなわち『今日ヤれる』と同じ意味なのだ。


「じゃぁ放課後、寧々の家に来て」


「いいけど、朝から言ってくるなんて珍しいな」


「今日はシたい気分なの! なんか!」


「あんま激しくするなよ?」


「うーん、それは盛り上がったら分からない」


「一番怖いやつそれ」


 さて、今日は何回戦することやら。

 明日も学校があるから、程々にしたいところではあるが……なんか、今日は激しい気がする。


 大体、放課後に誘ってくることが多い寧々が朝から誘ってくるんだ。

 相当溜まってそう。


「あ、未奈のことで言っておこうと思うんだけど」


 机に教科書を並べながら、寧々はそう口にする。


「未奈のことでか?」


「そうそう。あんま言わない方がいいのかなってこれまで言わないでおいたんだけど、あの件があったから言っておこうと思って」


「なに、怖いんですけど」


 次はどんな事実を突きつけられるんだ。

 もしかして、あいつが俺に隠していたことが寧々の口から分かるのか?

 それだったら熱い展開だ。

 次は俺が未奈に馬乗りになって吐かせてやる。


「未奈が教室でヤってたって言ってたでしょ?」


「あぁ、そうだな」


「まぁ想像はつくだろうけど、未奈って結構誰とでもシてるらしいよ」


 キョロキョロと辺りを確認すると、俺にコソっと耳打ちをしてくる。

 しかし、俺の反応はたったの一言。


「あ、そうですか」


 ちょっと身構えてて損した気持ちだ。

 教室でするくらいの痴女となれば、別に誰とシていたって驚かない。むしろ予想がついていた。


 最近、男子の間で未奈が誰とでもシてるという噂は、俺の耳にも入って来ていたし。


 ただの噂だと思っていた俺も、あの光景を見せられてしまったら納得せざるを得ない。


「え、反応薄っ」


 淡泊に返事をする俺に、寧々はぎょっと目を丸くする。


「いや、男子の間でちょっと噂になってたしな。みんな信じてないっぽいけど」


「う、嘘。寧々も本人から口止めされてる情報なのに……」


「噂っていうのはどこから回るか分からないからな……って、口止めされてるってどうゆうことだ?」


「未奈が寧々に直接言ってきたんだよ。蓮馬にはバレたくないから何かあったら私を庇ってって」


「なんだそれ」


「さぁ? でも良かったんじゃない? 私じゃなかったら速攻噂回ってたと思うよ」


「だな。人選は正解」


 にしても意図が分からない。

 俺と仲のいい女子に自分のことをわざわざバラして、もしものときは庇って欲しいとか、意味が分からなすぎる。


 それに、二人は仲が悪いんじゃないのか? いや、一方的に敵視してるのは寧々だけか。


 幼馴染の俺でさえ、未奈の行動が分からない。

 俺にバカとか言ってくるが、未奈は俺よりも相当なバカなのかもしれない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る