第54話 謝罪会見か!
二日後、俺と未奈の姿はお互い自宅にあった。
朝の十時から通話を繋げて、机に置いてある何枚にも重なった原稿用紙とに睨めっこしながら。
まあ結論から言うと、俺と未奈は二週間の停学処分を食らった。
二日前のことが気になって仕方がない人たちも多くいるかもしれないが、とても話せたものじゃない。
標的三人を同じく停学処分にさせ、学校全員からドン引かれ、これからの学校生活がそれはもう冷めきったものになるくらいのことにはなった。
しかし、それは俺たちも同じであって、あることないこと噂の雨あられ。
SNSには知らない人からもメッセージが来てボロクソ言われる始末だ。
今、こうして原稿用紙と向き合って、さぞかし最悪な顔をしてると思っているだろうが、それも違う。
元気。元気過ぎて今にでも学校へ走り出しそうなくらい俺たちは元気であった。
要するに、この一件は丸く収まったということだ。
巷で話題の貞操概念が低いカップルは、これから学校で冷たい目で見られるかもしれない。
それでも事実は変わりないし、それを否定したりやめろと言ったりもしない。
逆に、俺たちに近づいてくる人がいないということは、二人きりの時間が増えるということだ。
……ライバルが二人しつこくくっついてくるだろうが、まぁなんとかしよう。
『これ、何枚書けばいいんだっけ?』
通話越しに、未奈の悲痛な声が聞こえてくる。
『確か、十枚以上って言ってたぞ』
『……十枚も何を書けって言うんだ』
『この度は、全校生徒を巻き込んで、私たち幼馴染カップルが大変なるご迷惑をおかけしましたことを、ここにて謝罪申し上げます。とか?』
『謝罪会見か!』
『それしかないだろ。俺は遠回しに謝罪の言葉しか書かないぞ。何が悪かったとか、書きたくないし』
『回りくどく言えばいいってことね……私も別に悪いとは思ってないから謝ることすら癪だけど……学校に行けなくて卒業できないのはヤバいから、頑張るしかないか』
ペラペラと原稿用紙のめくる音が聞こえると、次はシャーペンを走らせる音が聞こえてくる。
『早く書き終えて、この自宅謹慎を満喫するか』
良く考えれば、これは二週間の長期休暇と言っても過言ではない。
こんな長い休みを、家に居るだけなんてお利口さんのバカがすることだ。
『なぁ未奈』
『ん? どしたの?』
『この休み使ってさ、どっか旅行でも行かないか?』
『うぇえ⁉ 行く! 絶対行くから!』
ガタっと、椅子から落ちる音が聞こえると興奮した未奈は早口でそう言う。
『どこ行こうか』
『せっかくなら、北海道とか沖縄とか? 中々行けないところがいいな』
『それは反省文を書き終えてから話そう』
『そうだね……あと親にもその旨を伝えないと』
親に関しては、止めるどころが逆に背中を押してくれそうだ。
今回の停学だって、未奈が被害者だと分かった瞬間に俺を英雄扱いしてくれたからな。
未奈の親も、やられたら倍返し理論を持っており、今回の件も大絶賛していた。
少しでも怒るのが普通だろうが、我ながらお互い変わった親を持ったと思う。
だから仲がいいし、子である俺たちも仲がいいのだろう。遺伝子って怖い……。
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