第23話 ナニがあるか分からない
「まぁ、よく分かったよ。蓮馬の好みが」
カーテン越しに呟く未奈。
「好みって、別に大胆なの以外も好きだぞ? 俺」
「そうかもしれないけど、今日はもう買うの決まったから」
「え、これ買うのか?」
「そうだけど、何か問題でも?」
「いや、問題はないけど」
「これ、目の前で私に着て欲しくない?」
「……どちらでもいいです」
この回答の正解が分からん! 何を言ったらいいんだこれは!
着て欲しいと言ったなら、俺の家までわざわざ来ていきなり脱ぎ始めて襲われそうだし、着て欲しくないと言ったなら、萎えてこの試着室から出てこなくなるかもしれない。
女子の心は繊細だからな。何か一つ発言を間違えてしまうと、その一瞬で人生が変わると言っても過言ではない。
未奈に限っては、自分の下着姿に自信がありそうだからな。
褒めてあげたいのは山々だが、この場で襲われるのはごめんだからな。
襲われるなら、切実に寝込みがいい。
「蓮馬は喜んでくれるなら……私はそれでいいから」
ポツリと言われた一言。
カーテン越しにも、ボッと赤面しているのが分かる。
この反応は生で見たかった。生まれてから未奈の恋愛的に照れているところなんてここ最近でしか見たことがないからな。
ちゃんと目に焼き付けておきたいところだ。
普段見せない顔を自分だけに見せるというのは、なんとも萌えるしそこのキュンとする。
俺がそうゆうギャップというのに弱いというのは、言わない方がよさそうだ。
「今日はもう無理だけど……下着のファッションショーが見たいっていうなら、今度やってあげるから」
そうそう、これこれ。絶対に今いい表情してるだろ。カーテン開けて覗きたいくらい。
でもそんなことしたら、手に冷たい金属の輪っかを掛けられる可能性が高い。それか、AVになるかのどっちかだ。
「蓮馬、店員さん呼んで来てくれない? これそのまま付けて帰りたいから」
もう着替えて出てくるかと思った未奈だったが、俺にそんなことを言ってくる。
「今付けて帰る必要あるか?」
「だって、外すのめんどくさいし」
「買ったものは持って帰るのが普通だぞ」
「せっかくだしいいでしょ! この後何があるか分からないし!」
何があるか分からないだって?
本当にナニかあるのか? ナニがあるって言うんだ⁉
よし、そういうことなら店員を呼んでこようではないか。男子が女性用下着店で店員を呼ぶという、周りの人から見たらただの変質者みたいな行動だが、行ってあげようではないか。
だって、この先ナニがあるか分からないんでしょ? 行くしかないよね、うん。
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