第24話 セフレ二人目
「呼びに行ってくるから、ちょっと待っとけ」
「うん、ありがと」
決して、ガーター下着の未奈と一七年越しのイチャラブセックスをしたいからではない。
そういうわけではない……が、店員を呼びに行く俺。
更衣室の通路から出ると、周囲を確認して一番近くにいる店員に声を掛ける。
「あの、連れが付けた下着をそのまま購入したいそうなのですが、お願いできますか?」
「はい。可能ですよ。ところで、ご用事はお済ですか?」
「用事?」
「試着室の中で、色々シてたのは終わりましたか?」
「なんもシてないですが」
この店員、笑顔でなんてこと聞いて来てるんだよ。お客に聞くような内容……というか発言自体がもうおかしい。
この店、俺の予想にあったカップルが暗黙の了解で使っていい場所なのか?
まさか、AVのスタジオとかじゃないよな?
今からいきなり撮影とか始まらないよな?
絶対にしなくていい心配なんだけど、ここまで仕組まれてるみたいにおかしいと、要らない心配もしてしまう。
「それでは、彼女様の元へお伺いして参りますので、彼氏様の方はそちらでお待ちください」
店員は、俺をレジ横の椅子に案内すると、そのまま試着室へと歩き始める。
その背中に、彼女じゃないんですけど、と言いたかったが、なんかめんどくさくなりそうなので言葉を飲んだ。
余計なことをしないで座って待ってるか。
案内された席に腰を掛けるが、なんか気持ちが落ち着かない。
どう見ても俺が不自然だからに決まってるだろうが!
なんで女性用下着店の椅子に、ポツリと男子が座っているんだ!
不自然すぎるし、俺、不審者過ぎるだろ!
他のお客の視線が痛い……。
言われてないだろうが、空耳でヒソヒソ話が聞こえてくる……。
そういうときは、イヤホンで音楽でも聴いて心を落ち着かせよう。
周囲の音を遮断してスマホでも見てば、自然と時間が経つのも早いだろう。
首に掛けていた有線イヤホンを耳にはめると、好きな音楽を聴く。
あとは、未奈が早く戻ってくるのを願うだけだ。
『……蓮馬くん?』
数分経った頃、イヤホンを貫通して俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。
しかし、俺はスマホから目を離さない。
これは空耳だ。だって、未奈の声じゃないからな。しかもあいつは俺をくん付けなんてしない。
自分では落ち着いているつもりだったが、自分の名前を呼ばれてると思うくらい周りを気にしてるんだな。
まぁ、無視無視。
『蓮馬くん……ねぇ、蓮馬くんってば』
さらに、俺の名前の呼ぶ声が大きくなっているが、大丈夫。これは空耳だ。
『ちょ、なんで無視するんですか! というか、なんでなんでここにいるんですか⁉』
肩を揺さぶられて、やっとこれが空耳ではないことに気付く。
未奈ではないなら、俺の目の前にいるのは誰なんだ?
恐る恐るスマホから顔を上げる俺。
『無視は私も流石に傷つくんですけど……?』
俺の前に呆れた様子で立っていたのは、藤木絢音(ふじきやね)。一個下の後輩である。
「お前こそ、なんでここに居るんだよ」
「下着を買いに来たに決まってるじゃないですか」
「それはそうか」
「なんで蓮馬くんこそここに? もしかして、セフレへエロい下着でもプレゼントするんですか?」
「んなわけないだろ」
一つ、肝心なことを言い忘れていた。
絢音も俺のセフレの一人である。
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