第17話 負けヒロインにならない意志

 幼馴染が、俺のことを好きなのかもしれない。


 いや、完全に好きと言い切れる。


 あの事件以来に、俺を狙ってきているような行動や言動が多くなった。

 一緒に帰っているときも、手をあからさまに大きく振って繋ぎたいアピールをしてきたり、お昼ご飯を一口ちょうだいとあーんを要求してきたり、彼氏が欲しいと最近になってよく言うようになった。


 これまで、そんなこと一切なかったのに。

 決定的だと思ったのは、突然掛かってきた昨日の電話。


『下着、買いに行くのついてきてよ』


 電話に出た一言目がこれだ。


 いきなり電話が掛かってくることなんて日常茶飯事だが、下着を買いに行こうだなんで……俺は彼氏じゃないんだよ!


 幼馴染に言うことじゃないだろ! 意識させようとしているのが手に取るように分かるわ!


 でも、どうしてあの事件以来好き好きアピールが強くなったかが気になるところだ。


 本当に俺のことが好きだとして、他の男子とヤっているのはなんでだ?

 振り向いてくれないから、寂しさを紛らわすために? 他の男は、俺を落すための練習台?


 どちらかは分からないが、まぁ納得がいく。


 実際、俺も寂しさというか、一年前ほどから未奈のことを諦めていたから他の女子とシているわけだし。


 あんなに可愛い幼馴染を好きにならない人などこの世に存在しない。

 俺も、これまでずっと一途に恋をしてきていた。しかし、段々とその熱は冷めて、今はこのざま。


 だから、ヤっていることも、好きだったことも隠して、ただの幼馴染として過ごしていた。


 それが、あの一夜にして崩れた。


 けど、未奈も俺と同じ理由だとしたら、同じ気持ちを持っているわけで。

 俺と未奈が決定的に違うのは、その事実を証拠に自分を負けヒロイン認定しないで、意地でも勝ちヒロインになろうという強い意志を持っている。


 あのとき馬乗りになられていなかったら、俺はただの負け主人公で、何も未奈とは発展しなかっただろうし。


 あからさまに俺へのアピールが強くなったのも多分、自分と俺が同じことをしていて安心したからなのだろう。

 もし何か言われたところで、あんたも同じじゃん! とこいつなら言い返してこうる。


 未奈は、そんな強く女子だ。

 ホントに強いよ、未奈は。


 未奈の気持ちを知って、他の女子たちと関係を持ってしまって、今さら罪悪感を持っている俺より、ずっと。


「付き合うには、まずは告白からか」


 電話が切れると、俺はベッドに仰向けで呟く。

 男として告白した方がいいのだろうが、それはまずちゃんと話して、そして謝ってからだ。


「下着、下着……か」


 続けてポツリと呟く。

 真面目に未奈とのことを考えていた俺であったが、明日のことを考えると煩悩に支配される。


 下着を買いに行って欲しいということは、俺が選んでいいということになるよな? ということは、それを目の前で着てくれるということだよな?


 そして、その帰りにホテルに行って、買った下着を脱がす展開。キスをしながら告白すれば、もう完璧ではないのか?


 ヤバい、今から興奮してくるんだが?


 未奈とのことを真剣に考えている俺であったが、所詮はただの思春期男子である。

 脳内の俺は三割真剣で、七割はチ〇コに支配されているただの変態。


 誰とでもシている未奈を見たとしても、性欲が強いとか最高じゃん! とポジティブ思考だし。


 冷静に考えると、ただのバカだし、俺は最低だ。

 だけど、こうゆう考えを持たなきゃ俺だって精神的に辛いんだ。未奈も、同じだとは思うけど。


 だからそう、何事にもポジティブであれ!


 とりあえずは、明日の下着。

 どちゃくそエロいのを選んで着させることが目標だ。欲を言えば、ホテルインまで狙いたい。


 この話の結論は、難しいことは考えない。

 ただ俺は、未奈の意志に従い、未奈の気持ちを確かめるためにも、正直になるだけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る