第11話 過去と未来

「それではレイナくん、今回はニホンのことについて詳しく教えていただけますか?」

「あんなに極秘情報を見せられてまだ聞き足りないのか、貪欲だなお前は」

「人間の好奇心は果てしないものですよ」


 今日は学園が始まる前の二日目だ。俺と王子はいつものように公爵家でおしゃべりしている。


「俺の元の世界について話したいのなら構わないけど、条件があるよ」

「条件、ですか?」

「そうだ。その条件はその話をする時、俺にキモい言葉を言わないこと。ひと言でもダメだ。ふん、優秀で完璧なエドウィン王子ならできるだよね?」

「ふふ、私の勝負好きな気質を利用するつもりか。まさかレイナくんにそんな簡単に利用されるとはな」


 アイツは首を振りながらそう言った。ふん、見透かされたか。


 王子は最初に俺の身分について尋ね、次に職業についても尋ねた。俺はただ普通の会社員で、この世界には何の役にも立たない事務職たのだ。


 そして王子は俺が元に住んでいた場所に興味を持ち、家の小ささに驚いた。


 確かに、異世界の貴族にとっては、俺が住んでいた家よりも彼らの屋敷にいたトイレの方が大きいかもしれないな。だから王子は俺が以前どのように「籠の中で生活していたか」を想像するのが難しかったのだろう。


 都市に山ほど高いな高層ビルがたくさんあると言った時、王子は信じられない顔をしたが、すぐに冷静になり、「それがこの国が多くの人口を収容することができる理由なのか」と呟いた。王子の理解力は本当にすごいよな。


 日本の総面積はオマ王国とほぼ同じが、交通の利便性は日本の方が高いのは当たり前のことだ。


 最北端の北海道から最南端の沖縄まで一日内で移動できることを知った時の王子は、鉄道や道路、そして飛行機などの交通手段をオマ王国にも導入したいが、俺はそんな知識が持っていないから機械オタクの人たちに任せた方が良いと思う。


 でもやはり王子にとって最も理解しずらいことのは、スマートフォンやインターネットの概念だったのよう。たとえ俺はその分野に詳しいでうまく王子に説明しても、アイツがそんなことを理解するのは難しいでしょう。


 そしてアイツは様々な質問を続け、専門的な分野にまで及びた。ああもう! 経済学や建築学なんてまったくわからないんだよ!


 その後王子は俺に紙とペンを渡し、日本語を書いてそれを読み上げてとに頼まれた。王子は日本語を理解することができるが、発音はできないのようだ。それに王子は日本語しかわからず、英語を書いてアイツに見せると理解できない。


 どうやら俺は王子と同じような状況で、オマ王国の文字は読めるが、発音がわからないだな。


「なぜ一つの文で普通に三種類の文字を使えるなのか?」

「知るか。俺に聞くな」


 その後、俺たちは食べ物の話題を話してた。この世界で食べていた料理はすべて美味しかったのですが、時々日本の料理を思い出すこともあるだな。


「今度家のシェフに作ってもらおうかな」

「レイナくんの故郷の味を知りたいですね」

「お前も一緒に食べてもいいぞ」


 もし異世界で日本の料理を広めることができたら……うん、それはいけるかも。


「ところで、レイナくん」


 王子は紙とペンを机の上に置き、真剣な目つきで俺を見つめていた。


 ……エドウィン王子がそんな表情をするなんて珍しいだな。何かあったのか?


「レイナくんは、元の世界を懐かしく思っているんですか?」

「えっ?」


 雰囲気が急に重くなった。一体どうしたの?


「……まあ、それはそうだよな。帰れなくなっちゃうから」

「そこにいる人たちもですか?」

「そりゃ決まっているじゃない。お父さんもお母さん、可愛い妹、そしてバカな友達ときちんと別れを告げることがなく、この世界に来てしまったな」

「そうか……」


 王子はそう言っていると立ち上がていた。頭が下げているので目が前髪に隠れてしまいからアイツの表情が見えない。そしてアイツは、ゆっくりと俺に近づいてる。


「きっと寂しくて悲しいんているんだろうね……」


 あ……! この流れは! あれに間違いない!


「うりゃ!」


 やっぱり俺を抱きしめたかったんだよね。俺はよけているから空振りしてしまったんだ。もし普通の女の子なら、悲しい時にイケメン王子様に優しい抱くをされたら、きっと心を打たれちゃうんでしょうね。


 けど残念だな。俺は普通の女の子じゃないからな。男とのロマンチックな抱き合うなんてできないのだ。


「ふん、お前が立ち上がった時から何がしたいともうわかっているぞ」

「すごいですね、レイナくん」


 そして俺たちは席に着きた。


「レイナくんはニホンを懐かしく思っているのなら、戻りたくないか?」

「うーん……それは……」


 実は俺もこのことを考えたことがあるだ。ただ通常の考えによると、戻る方法はないだから。


 そして俺もこの世界の生活に慣れ始め、生活スタイルを楽しむようになってきた。完璧な公爵令嬢を演じることは少し大変だが、苦労の後には貴族としての様々なものを楽しめることがでるからな。


「それは仕方のないことだね。過去をずっと懐かしんでいるよりも、未来を見据えることの方が大切だもん!」


 俺は王子に自信な笑顔をした。


 そしてなぜか王子は輝くような目で俺を見つめて、自分は無意識にそうしていたことを気づいた時、右手で口を被っていた。


「どうしたの? 王子」

「いや……なんでもありません」


 俺、変なことでも言っていたのか?


「とにかく、ありがとうね、レイナくん。面白い話をたくさん聞かせてくれて」

「お前だけがこんな特権が持っているだよね」

「そうなんだ。良かったですね」


 窓の外を見ると、太陽が沈み始め、光が薄暗くなっている。


「まだ二日で学園が始まるな」

「そうですね」


 レイナちゃんはもう15歳。王立学園は三年制で、日本の高校と同じだな。


 記憶を見ると、彼女は学園生活に非常に楽しみにしていたようだな。レイナちゃんは多くの知識を学ぶことがしたいだけでなく、より多くの友達を作ることもしたい。そして、これらの友達は利益主義的な社交界じゃなく、真の友情を持った人たちだ。


 だが俺にとってはこれが2回目の学校生活だ。前回の学校生活じゃできなかったことがたくさんあるだな。そして今回は、前回達成できなかったことを全部やってやる!


「よーし! 今度こそ絶対、彼女を作るぞ!」


 俺は決意を固めて拳を握りしめ、そして上に向かってあげた。

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