第38話 ぶつかり合うの想い

 エドウィン王子とカトリーナ二人の目にも断固とした光が輝いてる。


 王子が先に攻撃を仕掛けた。素早くな動きで氷の結晶のように鋭くカトリーナの剣腕に斬りかかった。


 しかし、カトリーナは機敏にそれを避けた。再び構えを整えた彼女は右手を振り下ろした。


「『爆炎の球』」


 カトリーナがそう詠唱すると、小さな火の球が王子の腰に向かって素早く飛んでいた。


 王子はそれに対して微笑みして、まるで火の球の動きを見抜いているのように。


「『寒冬の刃』」


 エドウィン王子は左手で氷の刃を生成して、火の球を防ぎつつ、右手の剣で迅速に反撃する。


 二人の刃が交差し、「ダダッ」という脆い音が鳴り響いてる。


 カトリーナは真剣な表情で、剣を振って王子を壁に追い詰めるのつもり。


 だが王子は緊張することなく、逆に左手を振り、無数の氷片が流星のようにカトリーナに向かって放たれた。彼女は後方に飛び退き、同時に右手で小さな炎を一瞬で放ち、王子の胸に命中した。


 王子は素早く後退する。焼け焦げた服を見てちょっと苦笑した。


「ちょっと実力が上がったようですね、カトリーナさん」

「あら、このわたくしだって成長するわよ。わたくしの辞書には『諦める』という言葉は存在しないわ!」

「そうですか。では、これはどうでしょう」


 「シュッ」という音と共に、エドウィン王子は氷の結晶のようにカトリーナに向かって押し寄せる。しかし、彼女は片手で防ぎ、もう片手で「『火焔流星』」という一撃を放ち、王子を数歩退かせた。


「ふん。この程度の炎では」


 そして王子は左手を上げ、大量の氷の結晶がカトリーナに向かって暴風雨のように放たれた。カトリーナは火の盾を作り、その余波で火の竜巻を発生させ、王子に直撃する。


 エドウィン王子は迫り来る炎に対し、まず手にした王家の剣に氷の属性を纏わせ、雪白の光を放ちた。そして、まるで炎を断ち切るかのように強力な一刀を振り下ろす。


 二つの強力な魔法が激突し、爆風が巻き起こった。王子は勢いを利用して氷の尖塔を召喚し、上に突き刺したが、カトリーナは既に警戒しており、身をかわした。


「あらあら、まだまだ足りないわ!」


 王子は再び刃のような氷の尖塔を放ち、迅速にカトリーナに突撃するが、彼女も手中の無数の火球でこの一撃を防げた。しかし、王子は止まらなく左手で無数の氷刃を召喚し、カトリーナの要所を狙ってる。


 カトリーナは表情を引き締め、力を入れて一跳びし、この攻撃をかわした。


「『火竜の息吹』!」


 カトリーナは左手で魔力を集めて、熱い炎を王子に向けて放つ。エドウィン王子の表情が険しくなり、片手で魔力を集め、巨大な「氷晶の盾」を召喚してこの攻撃を防ぐ。


 二人もこの攻撃によって数歩後退し、息を切らしながら魔力を蓄える。


 エドウィン王子はこのタイミングを見計らい、右手の剣を巨大な氷の尖塔のようにカトリーナに向けて突進する。


「ほあっ!」


 カトリーナは大声で叫び、火属性魔法が込められた剣を素早く振り下ろす。まるで飛び回る火竜のように高貴で神聖な雪白の剣に果敢に立ち向かう。


 二人の強力な魔力を帯びた剣が再び激しくぶつかり、耳をつんざくような大きな音が響き渡る。


 煙が晴れると、王子とカトリーナは少し疲れたに見える。互いにも離れた場所で息を切らしながら立ち尽くしている。


(暗部たちも一緒に戦ってくれたら、こんなに苦労はしなかったのに)


 だがもうカトリーナの部下によって既に包囲されているから、彼女に従うしかなかった。


 それにしても、二人の魔法属性は本来相容れないものだった。カトリーナの火属性は、エドウィン王子の凍りついた心を溶かそうとするかのように燃え盛る。でも一方、王子の心は硬く氷で封印されており、どれだけ燃やしても溶かすことはできない。


 このままでは終わりが見えない。互いが疲れ果てて倒れる瞬間まで戦い続けるしかないのか?


 王子は肩に抱かれた意識を失ったミリーを見つめ、軽く首を振った。


(持久戦になったら大変だ。速戦速決しかない。早くミリーさんを無事に取り戻すないと)


「どうだい? エドウィン様。心変わりしましたか? わたくしの戦闘姿勢を見て魅了されましたか」

「残念ながら、そうではありません」

「あら、そうですか。どうやらわたくしの努力がまだ足りないわね」

「まだ理解できていないようですね、カトリーナさん」


 エドウィン王子は再び剣に氷魔法を纏う。


「これでしっかり考え直してもらいしましょう」


 王子の右手の剣が舞い、一連の迅速な攻撃が迫り、氷刃の鋭さが殺意を伴っている。


 カトリーナは巨大な跳躍力で避け、同時に左手の剣で素早く反撃する。二刃が何度目かの空中での衝突を繰り返し、「カンカン」という鋭い音が鳴り響いてる。


 王子は退かずに進み、右手の剣を氷刃に変えて回転斬りを放つ。カトリーナは表情を引き締め、剣を炎に変えてこの攻撃に抵抗し、煙を立ち上らせた。


 エドウィン王子は隙を見て数歩後退し、姿勢を立て直す。カトリーナも息を切らしながら、彼の動きに警戒している。


 王子の剣は氷刃の攻勢を伴って再びカトリーナに迫る。しかし、今回カトリーナは回避せず、むしろ直接に向かって迎撃する。


 カトリーナは両手で剣を握り、全力で防ぎ、王子を数歩後退させた。


 エドウィン王子は機敏に後退し、左手の剣を素早く転じて、カトリーナの腰に向けて振る。彼女はすばやく炎で身を守りつつ、同時に右手の剣で王子の肩に反撃します。


 そしてエドウィン王子は剣を氷刃に変えて防ぎ、強大の力により半歩下げた。


 でも、これが最後だ。


(そろそろかな)


 なぜなら、カトリーナの剣がもうすぐ折れそうだったからだ。


 激しい剣の交戦の中で、エドウィン王子は徐々にカトリーナの剣術の弱点に気付いていった。彼女の剣振りはやや力不足であり、反撃も若干遅れている。


 王子はカトリーナの剣にいくつかのひび割れがあるのに気づいた。前の数回の衝突で彼女の剣の耐久性がすり減っていた。


(よし。ここで追撃しよう)


 王子の攻撃は勢いと速度を増し、連続してカトリーナに迫る。彼女は急いで後退して守りを固めるが、完全には防ぎきれなかった。


 ガラッ!


 王子の一撃で、カトリーナの手に持っていた剣が二つに折れた。剣の先端が飛び出し、数回回転した後に地面に刺さった。


「っ!?」


 この状況に驚きながらも、カトリーナはすぐに反応した。剣身が半分に折れてしまったが、自分はまだ魔法に頼るのができる。


 カトリーナは左手を動かし、炎を呼び起こして反撃の準備をする。しかし、エドウィン王子は魔力を集めて「『寒冬の疾風』」を発動し、強力な氷風が瞬く間にここを覆っていった。


 カトリーナは「『炎の嵐』」を使って防御しようとするが、王子の魔法はあまりにも強力だ。炎はすぐに消えてしまった。彼女の四肢は徐々に凍りつき、身動きができない状況に陥った。


 王子はその機に乗じて近づき、微笑みながら彼女に言った。


「諦めでください、カトリーナさん」

「そんな……このわたくしが……っ」


 ついにこの戦闘に勝った。きっとカトリーナはこれからはもう自分に絡んでこないだろう。エドウィン王子はそう思う。


「それでは、約束の通り、ミリーさんを返してください」

「ふふっ……ふふふふ……ふふふっ」


 地面に倒れ伏しているカトリーナは不気味な笑い声を上げた。この姿を見えたエドウィン王子は警戒心を抱いた。


「……わたくしは、いつ負けたと言ったかしら?」


 そして、カトリーナは必死に立ち上がり、息を切らしながらずる賢く笑った。


「わたくしは言ったわ、諦めないって」


 突然、カトリーナから強大な魔力が発散した。エドウィン王子はすぐに数歩後退した。


「ほあああっ!」


 彼女は両手を振り、全身を取り巻く紫色の魔法陣が漆黒のオーラを放ちながら展開した。


 エドウィン王子は目の前の光景に目を見張った。


(もし見間違っていなければ……カトリーナは禁忌の魔法まで学んでしまったのか!?)


 このような禁じられた魔法を使用するには、体内に大量の魔力が必要であり、また一定の副作用も伴う。


 こいつ、なぜこんなにも大きな代償を払ってまでここまでやり遂げようとするのか。王子は理解できない。


 次の瞬間、ミリーを担ている誘拐犯たちは急いで魔法陣に飛び込み、カトリーナの隣に立った。


 王子は素早くに自慢の氷属性魔法を魔法陣に向かって放った。


「あはははは! それじゃあ、また今度ね、エドウィン様」


 そう言っていると、カトリーナの魔法陣は急速に収縮し、そこにいる全員が一瞬で消え去った。


 なんてことだ。やっとカトリーナを倒したと思ったのに。まさか彼女は裏を持っていたなんて。


 そして、王子たちを包囲していたカトリーナの手下たちは、ミリーを誘拐した目的を果たしたから撤退を始めた。


(ちっ、そう簡単にさせるか)


「全員、やつらをそう簡単に逃がすんじゃない」

「「「「了解!!」」」」


 暗部たちが行動を始めてから、エドウィン王子の心に強い怒りがわき上がった。


(くそがっ、カトリーナめ! 私の前で卑怯な手段で逃げるなんて!)


 剣を握りしめ、爪が手のひらに食い込むほどに力を込めた。今まで感じたことのない焦燥と無力感が心を襲った。


 ミリーはカトリーナに連れ去られ、なのに自分は追跡の手立てさえ持っていない。ミリーはどこに連れて行かれるのか、次に何を受けるのか、まったくわからない。


 魔法陣が消えた場所をじっと見つめ、王子は憎しみに満ちた視線を送った。歯を食いしばり、唇まで血がにじむほどだった。


 しかし、怒りの中には心の内に潜む自責の念も隠せない。


(ごめんなさい……レイナ。私は一人で処理すると選んだから、ミリーさんが……)


 もしレイナがこのことを知っていたら、きっと心を痛めるだろう。自分が当時なぜそんなに自信を持ち、一人で解決できると思ったのか。


 もうすでにレイナの反応を想像している。凍りつき動けなくなり、そして絶望に打ちひしがれるだろう。


「ごめんなさい……レイナ……ごめんなさいっ……」


 エドウィン王子は力なく地上に跪き、口の中で繰り返してそう呟く。

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