第07話 もし婚約がなければ

 衛兵が扉を開けた後、視界に飛び込んでくる光景はびっくりさせられた。


「「「「ようこそお越しくださいまして、レイナ・ナフィールド公爵令嬢様」」」」


 ……なんだ、これは? 2列で並んていたたくさんのメイドたちが俺の到着を迎えたので、驚きすぎでどう反応すればわからないからその場で立ち尽くしていた。


 うわぁ! これが伝説のメイド儀仗隊なのか?! こんな光景初めて実際に見たんだよ! カッコいい!!


 そしてメイド行列の果てに、エドウィン王子はもうすでにそこに立っていた。


「また会えますね、レイナ嬢」


 王子様は相変わらずの営業用のスマイルを差し出した。


「え、ええ〜そうですわね、殿下〜」


 ここは王宮だから、必死でレイナちゃんを演じないといけない。


「では、全員下がりなさい」

「「「「了解いたしました」」」」


 王子が命令すると、メイドたちは各自の仕事に戻ってきた。


「レイナ嬢、ここからは私たち二人だけの時間ですよ。専属メイドのシェラさんは、王宮で思いっきり楽しんでも大丈夫ですよ」

「え? でも、私にはお嬢様に仕える責務がありますわ」

「強い責任感を持っているのはよいことだが、私はレイナ嬢と二人きりの時間を楽しみたいですよ。レイナ嬢の安全と仕えは、王宮にいる騎士や使用人たちに任せるから問題ないですよ。安心してください」

「まあ……エドウィン殿下がそう言ってらっしゃいならば……」


 いやだぁ! シェラさん! 離れないで! ここにいる唯一の味方が……


 くっ……王子は策を弄するのが得意なのは認めるしかない。


 そしてシェラさんは『楽しんできてね! お嬢様!』みたいな表情をして、俺のそばから離れてきた……


「さあ、レイナ嬢」


 ニヤニヤしてた王子は誘ってくるように俺に右手を差し出した。


 俺はもうその笑顔の意味が理解できているだ。それは『何か面白そうなことを企んてる』の意味だ。間違いない。


 はぁ、しょうがない。今は別の選択肢がないから、仕方なくコイツについていくしかなかった。


 俺は王宮大体の中身が知っていて、実際に見たこともあるでも、再び見るとやはりすごく感動だ。


 今、王子は俺を連れて、この壮大すぎる王宮を通り抜けさせてくれた。細部に至るまで美しく飾られて、複雑な模様が刻まれた壁は、高価な建材や宝石が使われている、すごい高級感と豪華感が溢れ出ゆく。


「うおぉーー」


 こんなものを見ていると、思わず感嘆してきた。


 途中では、歴代の国王の肖像画が見えるだ。恐らく、将来王子のイケメンな顔も現在の国王の隣に置いていることになるかな。


 長い廊下を進んで、ついに庭園のような場所に着いた。視界に入ってくるのは、色々な花が満開になっている景色だ。


 もし普通な女の子ならばこれは大好物なんだろう。そう、普通な女の子ならば、だ。


「どうですか、レイナ嬢? ここはとても綺麗な場所なんでしょう?」

「うん……確かにそうですわね」


 分からない。ここに連れてきた理由が分からない。


 これは一体なんの作戦だ? 俺の警戒心を下げさせたいのか? それとも俺を焦らせたいのか?


「ほら、レイナ嬢が大好きの白薔薇がいっぱいありますよ。ここに気に入っているのか?」


 こんな場所でも他の人がいるから、レイナちゃんを演じる続くしかない。


「ええ~勿論ですわ~。ここ、本当に素晴らしいわ~!」


 うぅ……自分でも演技があまり自然じゃないと自覚してるんだ。


「そうか。ならよがった」


 そう言った王子は喜ぶの表情をしたが、俺は必死に笑顔を保とうとしている。



 そしてこの花が満ちた庭園を出て、俺達は接客室などの場所にやってきて、王宮のメイドはお茶を入れてると部屋を出た。


 ようやく二人きりになった。王子の向こうに座っていた俺は思わずごくんとした。


「あのさあ、レイナ孃。ちょっど聞きたいことがあるですが……」


 紅茶を飲んだ王子は偽装の仮面を外し、本来の姿に戻った。


「なっ、なんだ……?」

「それはですね、ニホンという国のことを詳しく知りたいですね。教えてもらえますか? レイナくん」


 直球で聞いた! コイツやっぱり見ていた!! でもどやっで? 日本語で書いていたのに? は! まさか!?


「もしかして、お前も日本人なのかい!?」

「え? いいえ。違います。私はオマ王国の王子で、ニホン人ではありません」

「じゃあなんで日本語を読めるの!?」

「私もわからないですよ」


 そんなこと……いやそれより、アイツがどこの人であろうと、プライバシーを侵害することはいつでもどこでもダメなことだ。


「それはともかく、なんで勝手に俺の日記を覗き見ているんたの!?」

「レイナくんの様子は少しおかしいから、婚約者の義務としてちょっと調べた。でもまさかそのおかしくなった原因はこんなことなんでね」

「理由にならないだろうか!!」


 ていうか、なんで呼び方はレイナくんに変わっているんだ!?


「もし、こんな情報が他人に知られたら大変なことになるですよね。ふふん」


 ますます不安になってきた。王子は核ミサイルのボタンを手に持っており、俺の生死は王子の一念で決まってしまう。


「お、お前、俺を脅すつもりか!?」

「そんなまさか。私はただ、レイナくんと仲良くなりたいと思っていただけですよ」


 は……? 聞き間違いじゃないよね? 他人の秘密で脅して、その理由が「仲良くなりたい」て人がどこにいるか!?


「お、教えてくれる……」

「ん~?」

「何をすれば俺の正体をバレないのか……?」

「うん~そうね。私たちはもっと仲良くなれたら、情報を漏らさないよ」

「……は?」


 なにを、言っているんだ? 仲良く? は? マジで? そんなことをして、仲良くがしたい? ふざけるんな!!


「プライバシーを侵害する人には全然信用できないだ!」


 俺は大人しく言うことを全部聞く人じゃないだ。だからこそ、アイツを逆に脅す方法を考えないと。


 何か、武器になれることはあるのか……アイツの弱点とか……


 でも、レイナちゃんの記憶を必死に探してでも、なんの役に立たてることも見つからない……


 はぁ、どうすれば……


 そもそもアイツと付き合いなければならないのは婚約のせいだ。もし婚約がなければ、こんな辛いこともないはずだ。


 って、あれ? もし婚約がなければ……


 婚約……婚約! これは使える!


 王子はこの政略結婚を維持するためだからレイナちゃんと仲良くがしたいだ、それならば……


 だが、これはあくまでも賭けだ。いちかばちか、これ次第だ!


「なあ、エドウィン王子。俺は本気で言っているんだ。それ以上俺の秘密で脅すなら、いっそ婚約を破棄すらかな?」


 その時、王子は初めて動揺した顔をした。

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