第33話 なぜ私に対しても……?
(ミリーの視点です)
本来なら、平民としての自分は、あの二人と出会う機会なんてまったくあり得ないはずだった。
なにせ、彼らは貴族と王族だからだ。あの二人がいる所は、どんなに手を伸ばしても触れない存在だ。根本的に自分とあの二人がいる世界がまったく違う。
そうだったはずなのに。
ある日、自分がこの国で希少な光属性の魔法を持っていることが発見されたので、善良な子爵の養子になって、学園に入学する機会を得ることができた。
それによって、本来なら自分とは縁のない存在であるあの二人に接するのができるようになった。そして、ミリーは今でもあの二人と同じ学校で通っていることに対してまだ実感が持てない。
あの二人を実際に見たとき、エドウィン王子とレイナへの第一印象は完璧なカップルだった。
エドウィン王子は輝きを放ち、何事にも長けた、みんなが憧れる完璧な王子様だった。空のように澄んだ青い瞳からの視線と会ったら、ほとんどの女の子が彼にメロメロになるだろう。
いつも優しい笑顔を浮かべ、紳士的な風格に満ちている。こんなイケメンの顔はきっと、いや、絶対に無数の女の子を魅了するだろう。
一方、レイナは何をするも完璧な淑女で、欠点を見つけることはできなかった。彼女のすべての動き、言葉、表情は、どのように見ても優雅で美しい雰囲気に満ちており、どんな人に対しても礼儀正しく接することができる。
見た目だけでなく、内面も非常に素晴らしい。人との付き合い方が洗練されており、周りの人々は彼女に対して良い印象を持つ。レイナは、すべての女の子が努力してなりたい存在だ。
だから、誰が見ても、レイナは絶対に一番エドウィン王子にふさわしい女性だ。あの二人を実際に見ればわかる。まさに天性のカップルだ。
そして、自分は入学式の日に遅刻しそうになって走っている最中に、偶然にあの完璧な淑女とぶつかってしまった。当時も今も、本当に申し訳なくと思う。
しかし、レイナは怒ることなく、逆に自分が怪我をしていないか気遣ってくれた。さらに、自発的に地面に散乱した教科書を拾い上げてくれた。
この出来事を経て、ミリーはレイナに優しい一面もあるのを気付いた。小さなことにこだわらず、恨みを持たない性格は完璧と言えるでしょう。内面も外見も一貫して素晴らしい女の子。
運命は自分と冗談を言うのが好きみたい。それが偶然なのか、それとも神の計らいなのか、自分に比べて天高い完璧なカップルとの関わる出来事に巻き込まれることになるなんて、今でも信じられない。
でも、まさにその原因であの二人とのさらなる交流の機会を得るのができた。実際にあの二人ともっと接触してから、ミリーは彼らへの見方は徐々に変わっている。
夢にも思わなかったことが、かつて手の届かない存在だったエドウィン王子が、ただの一介の低位貴族に昇進したばかりの自分を探しに来てくれるなんて。
しかも彼自身が自発的にそうした。初めて顔を合わせた瞬間、本当に意識が飛んでしまうほど驚いた。きっと前世でどれだけの幸運を積んだのか、このような扱いを受けるのでしょう。
それに、初めて二人きりばっかりなのに、エドウィン王子はもう自分におしゃべりをした。興奮しすぎて、エドウィン王子はミリーをもっと知りたいと言ったとき、趣味や得意なこと、好きなものや嫌いなものなど、ほぼすべてを素直に話してしまった。
おっちょこちょいな一面を見せてしまったけど、その日の出会いは全体的に言うといい気分だった。
その日のドキドキする心臓の鼓動は間違いない。それは恋の感覚。エドウィン王子が自分の初恋なのだ。
そして、レイナは自分と王子の接触をしたを理由にして、ある日ミリーを学園の人のいない場所に呼び出した。
でも、あの時のレイナは、奇妙な行動や言葉を自分に向けてばっかり。その姿を思えだせば、完璧な淑女のイメージはミリーの心の中で崩れ始めた。やはり人は見かけによらないものだ。
その日以降、ミリーはまだ何が起こったのかを理解できない。報復と言っても違うし、説教と言ってもレイナが自分に謝罪してた。発散と言っても最後には自分にただのデコピンをさせただけ。自分はもうわからない。
そして、エドウィン王子が2度目にミリーを訪ねてきた。でも今回はただ謝罪とレイナのために説明をするようなものでした。
『レイナは実はミリーさんに対して悪意を持っているわけではないですよ。レイナはただ、自分の気持ちを素直に表現する方法があまり得意ではないだけですから。彼女は単にミリーさんと友達になりたかっただけですよ。変な行動に誤解を招かないでください。レイナは素晴らしいでいい子なんですよ。』
こうして、自分の婚約者のために代わって説明してくれた。それに、エドウィン王子がミリーとレイナの仲を改善するための作戦を立てた。
エドウィン王子は二人だけの時間を作り出し、成績優秀で頭の良いレイナが自分に勉強教えて、二人がしっかりと対話し、気まずい雰囲気を解消できるようにするという作戦。
でも、貴族社会に経験があるメアリは、事情が単純ではないと感じた。
『あのさ、ミリー。私の勘違いかもしれないが……エドウィン様が訪ねるのは別の目的があると思うなの。だってどう考えてもおかしいでしょう。きっと裏に何か理由があるはず!』
メアリが以前に自分に言った言葉を思い出した。王子が2度に自分を訪ねた後、メアリはその中の違和感に気づいた。
確かに、その時の自分は感情的に興奮していて、おかしいなところは気づかなかったかも。その中に入り込んでしまうと、他のことに気付かなくなる。それは自分の欠点だ。
よその人として、メアリは事態の全体像をより明確に見るのができるだろう。
『それに考えてみて。もしエドウィン様が本当にミリーと仲良くなりたいなら、彼は自分のことを話したことがあるのか? 普通は相手に自分のことを共有したいと思うのね!』
それは……確かに話していないようだ。ミリーは自分のことを延々と話しているのに、王子は彼自身のことについて全然話していない。王子が好きなものや興味など、どんなに頑張って思い出しても答えが出ない。
『そして、エドウィン様が放っているオーラ……ふむ、間違いない。何かを隠している感じがする!』
女の子としての第六感が非常に正しいのかも。実際、冷静になってから、自分も少しメアリと同じような感覚を持っている。でもどうしても王子様の後ろに隠されたものが見えない。
王子に対する印象だけでなく、レイナへの見方も変わってきた。
自分が学校の後ろに呼ばれてから既に見方が変わり始めていたが、その後起こったことはミリーのレイナに対する完璧淑女のイメージを完全に覆した。ただ、これが良いことなのか悪いことなのかは分からないのだ……。
王子の助けを借りて、図書館の片隅でレイナと近距離で話すことができる。それをきっかけに、レイナとの仲は予想とうりに良くなった。
レイナは本当に教えるのが上手で、彼女の解説は頭の中で絡まっていた疑問や知識のノットが簡単に解けた。
でももっと驚くべきのは、これまで見ていたレイナとはまったく違う姿を見ること。正確に言えば、これがいわゆる知られざる一面なのでしょう。
勉強を教えてもらうときからバレ始めたが、その後ますますその本来の姿が現れた。
自分にとって非常に友好的で、公爵令嬢の威厳を完全に脱ぎ捨て、まるで自分がとても良い友達であるかのように接してくれた。レイナの心からの喜びの笑顔は今でも頭から離れない。
それに、レイナの完璧ではない一面も見つけた。レイナは実はドジっ子なんだ。些細なことに不満をぶつけるのもあり、そして無神経な振る舞いもある。
この姿は、まるで別人のようだ。完璧な淑女の外見の下では、ただの普通の女の子なのだ。
だが、ミリーはちょっと変なことに気付いた。それは、レイナが自分に対してだけでこの気さくな態度を見せるようだ。
他の人がいると、普段の完璧な令嬢の姿に戻り、他人にそれを見せる。たとえば、お土産屋さんでメアリと一緒に出会ったときなど。
つまり、それはレイナが人前では見せない姿でしょう。
(でも、なぜ私に対しても……?)
この問題は未だにミリーを悩ませている。
そう言えば、見た目は完璧に見えるカップルでも、知られざる一面を持っているなんて。
そして、エドウィン王子とレイナはお互いのその一面を知っているはずでしょう。
だからこそあの二人はこんなに自然に接し、素直に向き合えるのか。あの二人の背中を見ているだけでそれが分かる。
自分は恐らく……もうチャンスはないでしょう。ただ遠くから見守るだけでもう十分満足だから。
しかし、胸に刺さるような感覚は一体何なのでしょう。
理解できない。やはり恋愛なんか複雑すぎる。
◇
「そう……だわね。確かに、あの二人の関係は本当にいいだね。表面的にも内面的にも」
「ん? どうしたの、ミリー? なんだか落ち込んでいるように見えるけど」
「……えっ、そうかしら。まあ、おそらくメアリの気のせいかもね」
「そうかな」
疑問を抱くメアリをごまかした後、ミリーは紅茶の中に映ってる自分の姿を見つめ、再び考え込んでしまった。
(あの二人の内面の秘密をもっと知りたいと思っても、私は一生その権利がないかもな。そもそも、あの二人の中に入り込むのは本当にいいのかな)
「むう~」
「やっぱり落ち込んでるよね!!」
今日のミリーも、まだこの二人のことについてで悩んでいる。
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