第32話 初恋
(ミリーの視点です)
「えへへ~」
「あら、なんか最近のミリーはとても機嫌がいいみたいね」
レイナがいじめ事件を解決した後のある日の放課後、ミリーとメアリは学園のカフェでお茶を楽しんでいる時、メアリがミリーにそう言った。
「えっ?! どうしてメアリは知ってるの!」
「いや、心の中の思いが顔に出てるわよ」
「そんな!? 私そんな顔をしてるの!?」
「あるわよ。ほぼバレバレだよ」
「まさか……ああ、恥ずかしいなぁ……」
そうしてミリーは両手で頬を覆い、口から「あわわ……」とつぶやいた。
「まあ、それはレイナ様のおかげかしら」
「レイナ様、か。ふふ、そう言えば確かに」
レイナの明るい表情を思い出すと、ミリーは思わず薄い笑顔が浮かべた。なにせ、彼女は自分の救世主なのだから。
あの日、絶望でもう諦めかけていた時、強烈な光が自分の暗い心を照らし、闇を追い払ってくれた。
レイナはまるで救世主のように、自分の叫びに応えて、苦しみから救い出してくれた。
今、レイナの姿を思い出すだけで、安心感が湧いてくる。知らず知らずにレイナに頼りたくなる——
「おや~? おやおや~レイナ様のことを思い出すと幸せそうな顔になっちゃうね~へ~相変わらずわかりやすいな~」
「えっ!? そ、そんなことないよ! むう~メアリのいじめっ子!」
ミリーは両手を抱えて頬を膨らませた。そしてニコニコしているメアリは、ミリーの膨らったほおを指でつついている。
「まあまあ~怒らないで。冗談冗談」
「ふんっ!」
「ほらほら、頬をほぐしてみて~」
「むう~」
こんな親しいやりとりができるのは、この二人の関係が本当にいい証拠だね。これはレイナがミリーに対してやりたいことランキングのトップ10だ。
ミリーとメアリは実は学園に入ってからこそ知り合いでした。同じクラスで、偶然隣の席だって、趣味や好みも似ており、お互いにたくさんの話題がある。だからこの二人はの関係はすぐに深まった。
まあ、メアリは一応貴族令嬢が、彼女は男爵令嬢で、貴族の中でも最低の爵位。実際、現在のミリーよりも下の階級だ。
でもメアリ自身の気さくな性格もあり、貴族の雰囲気がまったく感じられず、多くの平民生徒とも打ち解けるのができる。
「そう言えば、いじめのことについて、ちゃんと聞いてあげてなかったわね。レイナ様はともかく、なぜ私にも言わなかったの? 私が頼りないと思ってたの? だから一人で全部抱え込もうとしたの?」
「ぜ、全然そんなことないわよ! メアリはとても頼もしいわ! ただ……これは私自身の問題だから、メアリに迷惑をかけたくなかったの」
「迷惑なんて全然ないわ。私たちは友達だもん! 気にしないで、何か困ったことがあったら思い切り話してね!」
「うん、そうだね。この件について本当にごめんなさい」
「謝らなくていいわ。次にまた問題があったら絶対に一人で抱え込まないで。私がそばにいるから!」
「うん! ありがとう、メアリ」
メアリがまたその事件についに言っているから、ミリーの思考は再びあの日に戻った。
レイナが立ち向かって、自分を取り囲む貴族令嬢たちを救ってくれたあの瞬間。元々傲慢で悪事をするばっかりの彼女たちは、なぜかみんな膝をついてレイナに謝った。
その光景を見たミリーの頭には、レイナに対する一つの考えが満ち溢れた。
英雄。自分を救ってくれた英雄。
レイナはいじめる者たちに厳しい目で見つめたけど、自分に対しては優しい目線だった。
本当はレイナは自分のためにそこまでしなくてもいいのに、それでも立ち向かってくれた。その瞬間から、ミリーは友情を超えた感情をレイナに抱くようになった。
レイナに抱きしめられたて、そしてレイナが優しく髪を撫でるとき、まるで暖かい流れが自分を包み込んでいるようでした。とても暖かく、心に染み入るほどの暖かさ。
レイナがこんなに頼もしいなら、自分はこのままずっと頼むのもいいかもと一瞬だけそう思った……
そして、最後のレイナの言葉を思い出した。当時は落ち込んでいて特に違和感を感じないでしたが、その後振り返ると、何か違和感が気がする。
『安心しろ、ミリーちゃん。俺が守ってやるから』
(『俺』って……レイナ様は女の子だわね? でもなんで……?)
「──お──い、ミリー──。聞いてるの? ねえミリーってば。ああ、もうだめだ、意識がもう飛んでる」
「……あっ、うわっ!!」
あの日の思い出からようやく戻る時、目の前にメアリの手が伸びてきて、上下に振って自分を呼び戻そうとしているのを見えた。
「はあ……よかった、ようやくこっちに戻ってきたんだ」
「……ごめんね。さっきどこまで話してた?」
「一人だけ苦しむを耐えてことは絶対にしちゃダメって言ってたところだわ。それより、どうしたの? 急に黙り込んだ」
「えっと、ちょっと考えごとがあるだけど」
「ふ~ん。ほらほら、やっぱりあの人のこと考えてたんだ~」
「い、いや、レイナ様のことなんて考えてないわよ!」
「あっれ〜? 私、レイナ様のことについて何も言ってないよ~?」
「……っ! もうぅっ!」
自分がまたからかわれたのを気づいたミリーは、頬をハムスターのように膨らませ、さっきよりも膨らんだ。
そして、ミリーは可愛らしい小さな拳でメアリに連続でパンチを繰り出した。ちなみに、そのパンチはゼロダメージになるぐらいの攻撃力であり、他人に当てても全く痛くないような小さな拳だった。
「まぁ~まぁ~怒らないで。このデザート、ちょっと分けてあげるから」
「まったくメアリは。いつも私をからかうのね」
「あはは、ごめんごめん。ミリーの反応が可愛すぎてつい我慢できなくなっちゃった」
「はぁ……もう。メアリこそ可愛じゃないかしら」
「えへ~、そうかな~嬉しいな~」
ミリーに一口デザートを分けた後、ようやく気が済んだ。そして、突然何かを思い出したかのように、メアリがミリーにそう言った。
「ねぇねぇ、からかわれた反応って言えば、レイナ様がエドウィン様にからかわれた反応見たことある? 私、あるわよ。」
「ないなあ……。いや、そもそもメアリはどうやってそれを見たのよ?!」
「えいや、実は偶然廊下の角っこで見ちゃったの。遠くから見ただけだけど。本当に偶然だったんだ。わざと見てるじゃないわよ」
「そんなに強調しなくてもいいんじゃない……。ますます怪しいわ」
「えへへ。そうかな」
そうだよね。レイナ様の話になったら、エドウィン王子にも言及しないわけにはいかないでしょう。
だってエドウィン王子はミリーの初恋を奪った男なんだから。
王子様がすでに婚約者がいることを知りながら、自分が愛人になりたいことが道徳に反するのも分かっていても、彼を好きになりたくて仕方がない。
それは自分の感情に応えてくれない、手も届かない王子様なんだ。
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