第14話 ヤキモチ作戦
「というわけで、手伝ってくれ」
「…………なんていうか、レイナくんの思考回路は本当に特別なんですね」
俺と王子は今、学園の食堂の片隅で話している。そしてさっきコイツに作戦構想をざっくりと説明したんだけど、微妙な返答をもらったんだ。
「えっ? 違うの? 異世界の問題を解決するには、異世界の手段が必要なんじゃないか?」
俺は目の前の料理を食べ終わった後そう言った。
「うーん……レイナくんが気になったことは理解していますが、安心してください。そんなことは起こらないですよ」
「どういうこと?」
「つまり、上位貴族のレイナくんが下位の爵位の彼女に話しかけることが貴族の礼儀に反するのではないかと心配しているんですよね? でも実際この学園にはそんなことは全く起こらないですよ」
本当か? なんでだ? 貴族社会での階級意識がこの世界の常識じゃないのか?
「確かに、オマ王国の貴族は上下の関係に重視していますが、それは家族での公開イベント、例えばお茶会やパーティーなどに限られます。しかし、学園内ではそういうわけではない。レイナくんもさっき気づいたんでしょう?」
さっきって……ああ、そうか。朝と放課後、生徒たちは身分を構わず俺たちと話をするんだな。それは確かに貴族の礼儀には合わない行為ですな。
「学園では、生徒全員が身分を問わず平等に扱われるのは王立学園の方針です。だから、貴族同士は自身の言動や態度にちょっと気を付ければみんな仲良く付き合えるんですよ」
そっか……以前、兄のウィルさんとレイナちゃんの会話の中で、彼は学園内でさまざまな爵位の友人を持っているようですね。
「だからレイナくん、普通に話すだけで関係が深まるんですよ」
「それはダメだ」
あの子と話しかけるのは問題がないのはわかっているけど、一周目の学校生活でのつらい経験がまだ鮮明に残っている。
俺はよーくわかるんだ。ただ相手とゆっくりと話すだけなら、関係もゆっくりと進展するだけだ。
だから今回は違うやり方を取るつもりだ。
「さまざまな要素を考えた結果、このヤキモチ作戦はあの子に最も近づける方法だと思う」
「いや全然そうではないと思うけど」
「なんで? これならずっと話題が尽きないし、あの子との会話は続けられるよ」
「でもその話題は重いでもありますよ」
どうやら王子はまだ俺の作戦を手伝ってくれる気がないようだ。
ヤキモチ作戦とは、王子とあの子と簡単なやり取りを通じて、「王子様はわたくしの婚約者だから、彼に近づかないよう警告する」という理由であの子と話し続けることができるんだ。
正直、俺は全然知らない他人と話しかけるのは苦手なんだ。特に意図的に話しかける場合はなおさらだ。「あはは~今日の天気はいいですね~」のような言葉しか言えなくなってしまう。
だから、ヤキモチ作戦はそういう状況を避けるためのものなのだ。
「手伝ってくれよ、王子。簡単なことだけさ」
「うーん……」
ここまで言っておいてでも手伝ってくれないのか、エドウィン王子よ。
はあ……仕方ない。あれをやるか?
女の子になった後、あれをいつも他の人にやってみたいと思っていたが、なかなかそんなチャンスはないでした。
少なくとも、鏡の前で自分にあれをするのはかなりダメージがあるのだ。
すごく恥ずかしいだが、作戦の成功のためには仕方ない。
俺は両手を頬に添え、頭を傾けてアイツに見上げで見つめていた。必死に目から涙をこぼし、泣きそうな表情を浮べていた。
「ねえ~お願いだから~手伝ってください~エドウィン王子~王子様にしか頼れないよ~」
見ろよ王子! これが可哀想系ヒロインの表情なんだよ! 同じく男だから、俺はお前のことをよーくわかるだ。このようなものに惹かれない男はいないと断言できるの自信がある。。
さて、効果はあるのか?
俺はこの姿勢を保ち続け、沈黙が俺たちこの空間広がった。
おいおい、反応をしてくれよ、王子。気まずくなっているんだろう!
「……はぁ……レイナくんに負けていたね。まあ、一応手伝ってあげますよ」
そして、王子は少し震える声で答えた。
よーし! 成功しているようだな!
表情を顔に出さなかったらわからないと思うなよ。右手がこっそりと胸元を押さえているのをちゃんと見えたよ。
どうやらアイツも相当なダメージを受けたようだね。効果抜群だ。
ふふん、これで王子の弱点を見つけたことになるだな。異世界で初めて達成感を味わっていた。
◇
数日の調査の結果、あの子の基本情報はもうわかった。
あの子の名前はミリー・スロータックで、1年B組にいる。もとは平民だが、稀少な光属性魔法を持っており、魔法の才能も優れているのが発見されたので、約1年前にある子爵に引き取られ養女となっていた。だから今あの子はもう子爵令嬢だよね。
平民や元平民でも、能力を持つ者は学園へ進学する機会があるという点から、この国は魔法を本当に重視しているのだなと思う。
その若い女性教師は子爵の知り合いであり、学園であの子を見守るよう頼まれていた。確かに、学園に地位が低い人は先生に見守られているなら、安心感は格段に高まるでしょう。
ミリー……ミリーちゃんかぁ。名前さえ可愛らしいなぁ~ああもう~これから本当にそんな可愛い子と話しかけるんのか。ドキドキが収まらなくなってしまうのよ。
今俺はある壁の後ろに隠れて、こっそり俺の作戦を協力している王子を覗いていた。
ふふ、突然イケメンな王子様から話しかけられるなんて、ミリーちゃんはとても慣れていない様子を見せているね。
ミリーちゃんはきっと自分がどれだけ幸運であるか、王子様から自分に話しかけられることを思っているのでしょう。でも同時にどう王子様に対応するのかわからないと悩んでいるみたい。
ああ、この光景を見ると、ついミリーちゃんの心理活動を想像してしまう。いけない、しっかり観察しないと。
距離が遠すぎて、あの二人の会話は聞こえない。俺はただ王子に適度にミリーちゃんと雑談してもらうよう指示している。
だが王子がミリーちゃんに変なことを言って彼女の耳を汚すのかと心配してたな。
あ、どうやら会話は終わったようだな。王子はこっちに向かって歩いてきている。そしてミリーちゃんは反対方向に去ってきた。
「おう! お疲れ様! どうだった?」
俺は王子の肩を軽く叩きながらそう言った。
「とりあえず適当に話してみた。彼女は知らない人に話しかけるとどもりみたいですね。だから、今私はレイナくんの作戦は意外にうまくいけると思っていますよ」
「ふふん、言ったでしょう」
今なら「ミリーちゃんと王子話してた」という事実が確立されていた。これからは、このことを口実にあの子とずっと話すことができるだ!
「レイナくん、今まで隠れていた感情が全部表れていますよ」
「はぁ! マジか?!」
……うっかり我慢できなくなってしまった。
◇
同じ日の放課後、俺はチャンスを見計らってミリーちゃんの姿を探していた。
彼女は普通に廊下を歩いている。今ここはあまり生徒がいないから、話しかけるいいタイミングだ。
ふぅ……いざ行くぞ!
俺は深呼吸をして決意を固め、ミリーちゃんに早足で近づいた。
「ちょっといいかしら、ミリー・スロータックさん」
俺は威厳を持っているようにながらミリーちゃんと話しかけた。
あああ! すっげー緊張しているんだ! でもこんな原因で失敗するわけいかない!
「……はい?」
ミリーちゃんは頭をかしげながら疑問の眼差しで俺を見つめていた。
「あなたに大事な話がありますわ」
よし。これからは作戦通りだ。緊張や興奮でミスをしないように。
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