第15話 なんでここに王子が!?
「え、えーと……」
とりあえず俺たちは人気がない裏庭に移動した。
ミリーちゃんは戸惑っていて、それにちょっと怖がっているように見える。
でも俺も同じだ。周りに誰もいない環境で、二人きりでいる事実をさらに意識しちゃう! ますます緊張しているんだ!
しかし作戦の成功のために、俺は威厳な表情を保ち、ミリーちゃんを見つめ続ける必要があるんだ。
「ミリーさんは、わたくしに呼び出されるほどのことをしていた自覚はありますか?」
「そ、それは……」
ぐっ……! ごめんなさい! ミリーちゃん! 本気で責めたいわけじゃないんだ! そんな表情を出しさせてしまって本当にごめんなさい! うっ、心が痛い!
「知っていますでしょうね? そのこと」
「うっ……」
ぐあぁぁ!! ミリーちゃん!!
「ふーん、自分が何を間違えたのかもわかりませんのね。貴族が満ちた学園に入学した以上、少なくともそういった自覚を持つべきだわ」
俺は内心の動揺を必死に抑え、話を続けた。
その後、沈黙が俺たち二人の間にしばらく広がった。
「……すっ……すっ……」
次の言葉を言おうとしていたとき、ミリーちゃんの声が割り込んできた。
「すいません!! レイナ様をお怒ってしまって本当にすいません! でも、私は本当に自分が何を間違えたのかわからないんです! 許してください! 次は絶対しません!」
「……っ?!」
涙が溢れるミリーちゃんは俺に謝ってる。
いやいや、ミリーちゃんがいきなり泣いたりするなんて、作戦には含まれていない状況だ!
でもあれ? ちゃんと自己紹介していないのに、なぜミリーちゃんは俺の名前を知っているのだろう? 王子がミリーちゃんに話していたのか? って、そんなことどうでもいいんだよ!!
どうすればいいんだ! 女の子が俺の前に泣いているのはすごく差しぶりだ! 前回はもう中学の時……あっ、嫌な思いを浮べた。
俺がミリーちゃんを泣かせたから、責任を取らなければならない。女の子を泣かせるなんて本当に最低だ。反省しなくちゃ。
……あ、妹を慰めるときの方法でこの状況を解決できるかもしれない。
そして俺は手を伸ばしてミリーちゃんの頭に触れ、そっと彼女のピンク色の髪を撫でている。
「よーしよーし。泣かないで泣かないで、いい子いい子」
ああ、なんて柔らかい髪なんだ。そして触れているうちに、ミリーちゃんの髪から漂ってくる香りが嗅げるんだ。
ふむ、どうやらミリーちゃんは少し落ち着いたようだ。彼女は頭を上げ、赤くなった目で俺と目線を合わせる。
「まったく、早く笑ってよ。泣いていると可愛くないから、笑ったほうが可愛いんだよ」
俺はそう言ってながら人差し指をミリーちゃんの目の隅の涙を拭いている。
うん、これで十分だと思う。
「……へっ?」
そしてミリーちゃんは疑問の表情を浮かべていた。
あっ……ちょっと待ってくれ、この状況って……
うわああっ!! これじゃまるで変態みたいじゃないか! イケメンじゃないし、こんなことをしたら絶対に通報されるよ! ……あっ、自分が今女の子になっているということを忘れていた。でもやっぱりこれはダメだ!
それに、さっきミリーちゃんに「可愛い」と言ってしまったのかな……?
うあっ!! 恥ずかしい! あの頃は妹をこのように慰めていたから、思わずそのままそう言ってしまった。ミリーちゃんとの関係がもう少し進んた時こそそれを言うつもりだったのに……
「ごほんっ、ごほんごほんっ!!」
俺は急いでミリーちゃんの頭にあった手を引っ込め、咳払いで誤魔化した。
「では、わたくしからちゃんと話ししましょうからし」
俺は厳かな口調に戻して作戦を続けた。でもさっきそんな格好をミリーちゃんに見せているから、作戦が成功するかどうかあまり自信がないな。
「ミリーさんは、エドウィン殿下と仲良よく話していたんですよね? わたくし、しっかり見ていたわ」
俺がそう言うと、ミリーちゃんは自分が何か間違ったことをしたのように目を丸くした。
ぐぅっ……! 実は何の悪くもないんだ!
でかい声でそれを叫びたいけれど、作戦を続けなければならない。
「殿下はわたくしの婚約者なんですわ。もしエドウィン殿下が他の女性と仲が良いと見られると、悪い噂が広まってしまうことがありますよ? それに、わたくしたち三人にとってもそんな噂は影響を及ぼすなの。学園の生徒や貴族社会の人たちはわたくしたちに何をするかわかりませんですわよ」
貴族社会に足を踏み入れたばかりのミリーちゃんは、このようなことについては耳にしたことがあっても、実際に経験したことはないでしょう。
俺自身はそんな面倒なことは全く気にしていないが、この言い訳はこの世界の人にとって効果があるであり、俺にとって都合のいい口実にもなれる。
事態の深刻さを知った後、ミリーちゃんは不安な表情を浮かべて、唾をゴクンっと飲み込んた。
実は次に何をすべきかわからない。本来ならば作戦はここで終わるはずだ。だがミリーちゃんの表情を見ると、なんとなく気が休まらない。どうすれば公爵令嬢のイメージを維持しながらミリーちゃんを安心させるのか?
「それでは、これから同じようなことをしないようにするために、少しだけお仕置きをして、今日のことを覚えてもらいしましょうか」
「うっ...」
とは言え、これはさっきばっかり思いついたことだから、具体的にどうすればいいのかよくわからない。
俺はミリーちゃんと超接近して視線を交わしている事実を耐えられない寸前、ミリーちゃんの前髪を見ると一つ考えが現れた。
うん、これならいけるかもしれない。
象徴的な「お仕置き」とは言え、ミリーちゃんを傷つけたくないな。
俺は再び手を伸ばしてミリーちゃんの頭に触れるが、今度は頭を撫るのじゃない。ミリーちゃんはまだ少し動揺していたが、現実を受けたように目をしっかり閉じていた。
大丈夫だ、ミリーちゃん、痛くないよ。ちょっと我慢してください。
俺はミリーちゃんの前髪を分け、つるつるとしたおでこを出した。そして、俺は指をおでこに当たった。ミリーちゃんの肌は本当にとても柔らかいなあ。
パチン!
「あうっ」
俺は軽くミリーちゃんにデコピンをした。できるだけ力を抑えて、その「お仕置き」を行いだ。
だがミリーちゃんが両手でおでこを押さえる様子を見ると、俺は自分の行為に対してすぐ罪悪感を感じた。
ミリーちゃんを傷つくなんて許せない!!
「ごめんなさい! さっきのは痛かったでしょう!」
「えっ? あっ、大丈夫ですよ」
ミリーちゃんは困惑の表情をした。お仕置きせられた後すぐに慰められることに疑問を感じたのでしょう。
「代わりに、わたくしにもデコピンをして!」
「ええ?!」
俺はそう言ってながら身をかがめて、ミリーちゃんの頭と同じ高さまで体を下ろし、おでこを彼女の方に向けていた。
「さ、さあ、やってください!」
「なっ……! でも……」
ミリーちゃんは迷いながらその場に立ち尽くしていた。この様子もとても可愛い。
「そ、そんなことはできません! 私は子爵令嬢で、レイナ様は公爵令嬢ですから、そんな失礼なことはやっちゃいけないです!」
「気にしないでください。さあ、安心してわたくしにデコピンをして!」
「……」
「大丈夫ですよ、本当に気にしないから。ほら」
「はあ……」
そしてミリーちゃんは躊躇しながらゆっくりと手を俺の方に伸ばしてた。彼女の細い指先の触感が俺のおでこに伝わってきた。
「ほ、本当にいいんですか? やっぱりこれはあまり良くないと思いますよ」
「うん、大丈夫ですわ。ミリーさんなら何回でも、いつでもデコピンをしても構いませんわ」
「それはちょっと……」
すると、ミリーちゃんはあきらめたような表情を浮かべていた。
ミリーちゃんの指が動く様子を見て俺は目を細めた。
ていうか、彼女の指がおでこで動き回ると、なんだか少し痒く感じする。
そして、俺が心の準備をちゃんとした瞬間——
「やあ、レイナ嬢、こんなところにいるんだ。探し回ってようやく見つけたんですよ」
この声は……王子?!
俺はすぐ目を開けて、声の方向を向けた。金髪が風になびき、青い目が俺を見つめている。
なんでここに王子が!?
「エ、エドウィン様……!」
「おや、ミリーさんもここにいたんですか。レイナ嬢のお世話になりますね」
「い、いいえ……」
そう言ったミリーちゃんは急ぐに手を引っ込めた。
一体どういうこと!? このタイミングはあまりにも絶妙すぎるんだろう?!
「二人を邪魔していて申し訳ありませんが、今レイナ嬢に用事がありますよ」
「邪魔なんてそんなことないよっ」
そしてミリーちゃんは必死に王子に手を振りで否定している。
コイツ、そんなに優秀なのに何の用事で俺を探すんだ! 自分でやれよ! 俺をからかうために来たんでしょう!
いや待ってくれ、それってつまり……
「ほら、レイナ嬢、いきましょうか」
「ちょっ……!」
王子は俺を無視して強引に背中を推して前へ行こうとしている。
もしかして、実は用事なんていないで、俺を意図的に引っ張ってのか!?
「おい、お前、何をーー」
「ミリーさん、またの機会に会いましょう」
「う、うん」
ちょっと待ってくれ! 抵抗したい気持ちはあるけれど、背中を推しての力は本当に強いすぎる。
「お前いい加減にーー」
「後で説明するから」
王子は小さな声で俺の言葉を再び遮った。
いやだあぁ! どんな理由があっても、今はミリーちゃんとの会話はまだ途中から、突然引き離されじゃねーよ!
まだミリーちゃんからデコピンをされていないのに!
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