貴族令嬢に転生した俺は女の子だけが狙いたいですが、婚約者の腹黒王子はしつこいだ
夜羽希斗
第1章
第01話 貴族令嬢になった
目が覚めた時、視界に飛び込んできたのは、見知らぬ天井だった。
しかも、あまりにも豪華すぎる。まるで教会の頂上を見上げるようだ。
いや、正確には、この天井は大金持ちの邸宅のようだ。
それに、どうしてこんな豪邸に寝ているのだろう? 俺はただの会社員に過ぎない。もしかして、いつ宝くじで1億円当たったのか?
周りを見渡して、このベッドもあまりにも巨大すぎる。ダブルキングサイズと言っても過言じゃない。やっぱりここは豪邸だろうか?
そして、ふわふわのマットレス、レースの豪華な枕と布団は、まるでお姫様の部屋のようだ。シーツの美しい刺繍にも目を奪われる。
先に言っておく、俺はこのようなベッドで寝る趣味はない。
これはもはや理解できない。いつの間に俺は余裕があってこんな大豪邸を買って、そしてここに住んでいるだろう?
俺……もしかして、突然富豪の女性に貢ていることになったので、そしてここは彼女の部屋か? でもそんなことないだろう、そもそもヒモ男になった記憶もない。
それとも、アラブの石油王に誘拐されたのか。いや流石にこれもない。
昨夜は普通に家に帰って、普通に寝たはずなのに、豪邸で目覚めてしまった。
「ん……?」
この時、ついに違和感に気づきた。
俺の両手が、小さくなっていた。
手のひらだけでなく、腕も細くなり、美しい指先に整えられた爪がある。
えっと、俺は男なのに、ゴツゴツとした男っぽい手はどこに行ったのか? どうしてこんな女子高生のように滑らかな小さな手になってしまったのか?
すごい違和感を感じた俺は、この部屋がどういう状況なのかを調べることに決めた。
ベッドから起き上がり、周囲を見回した。この部屋は、俺の自宅ではないと断言できる。家具は全て磨き上げられ、鮮やかな花々が飾られ、高級感と豪華さが漂っている。
壁には美しい風景画像が掛けられ、隣のレースのカーテン越しに差し込む陽光が、部屋を照らし、そこにはまるで貴族の舞踏会場のような大きなシャンデリアが輝いていた。
小説や漫画の定番パターンならば、俺は異世界に転生したのかもしれないが、その考えは一瞬で消え失せた。
うん、これは夢に違いない。今、俺は非常に現実的な夢を見ているのだ。こんな超現実的な出来事が起こるはずがない。絶対にありえない。
「ありえないよね。小説や漫画じゃないし」
……!?!?!?
ちょっと待って!! さっきの声、一体なんだ……? 女の子の……声?
その若くで高い声は、俺自身の喉から発せられたものだったのか?
確かにさっきは思わず呟いてるが……
戸惑いながら、俺は少し首を傾げ、細い小さな手で自分の喉を触ってみると、喉仏が消えていることに気づきた。
はは、冗談だろう。
そして、俺は自分の両側に垂れ下がっている赤い髪を見ていた。好奇心で触ってみると、すべすべとした触覚がとても心地よかった。
ははは、冗談だろう、冗談だよね。
そんなことはありえないと、俺は心の中で何度も否定したが、自分の手や髪を何度見ても、変化はないだ。
「そ、そうだ! 鏡!」
ベッドの隣には、直立した大きな鏡が置かれていた。俺は急ぐに鏡の前に駆け寄ってた。
そして鏡に映っていたのは、15歳ほどの女の子。彼女は鮮やかな赤色の波状の髪を持ち、尖った目元には美しい青色の瞳が輝いていた。白い肌に、ほんのりとしたピンク色の頬が、まるで大人気なアニメ美少女のように美し。そしてこの子は今、豪華な寝間着姿でした。
「うおおおぉぉ!!! なにこの子、すっげえぇ可愛いなぁ!! まるで人形みたいぃ!!」
すると、鏡の中の女の子は、興奮に満ちた表情をした。
ああ、ダメダメ、つい失礼な表情をしてた。冷静にならなきゃ。
鏡の中の女の子は、すぐに表情を戻した。
そして俺は手を上げてみた。すると、鏡の中の女の子も同じように手を上げた。
自分の頬をつまんでみると、鏡の中の女の子も同じようにつまんでた。可愛いなぁ——
「ええええええええ!!?!?」
ど、どういう状況!?!?!?
まさか、俺が必死に否定していたことが本当に起こってしまったのか!?
俺は確認のために下半身を触ってみた。
「な、ない……俺の大切なものが……ない……」
すると、部屋のドアが開かれ、緊張した表情の銀髪のメイドが駆け込んできた。
「何がおこったのですか!? お嬢様!?」
「俺の大切なものがなくなってしまったんだ!!」
「……えっ? 俺の……?」
「それになんで俺は貴族令嬢になっていたのか!!!」
「お、お嬢様、落ち着けください……」
どうしてこんなことになったのだ!?一晩寝ただけで女の子になったし、しかも貴族令嬢!?
まさか、これは何かなどっきりカメラの番組なの? 突然に誰かが飛び出して「ドッキリ大成功!」って言われるのか!?
「……疲れた」
まだこの体に慣れていないのせいのか、少しだけ動いてでもすごく疲れた。
こんなの、夢なら良かった。うん、これは夢だ、早く目覚めないと仕事遅くなるから。
合格の社畜として、時間通りの一時間前に出勤するのが当然だ。
「さて、こういう時は、ちゃんと夢の中に寝たら現実に戻れるだろう」
俺はベッドに戻ろうとしたとき、そのメイドは俺の前に立て道を塞ぐていた。
「お嬢様、これ以上怠けているのはいけませんわ。今からお着替えを用意いたします」
「いや、怠けているわけじゃない。今から仕事に行くんだ」
「仕事……? お嬢様には仕事がありませんですけど……?」
「いいから、寝かせてくれよ」
「お嬢様、どうかおかしなことを言わないでください。今日は、婚約者であるエドウィン王子殿下がまた訪ねますよ」
はっ!?
俺は婚約者がいるの!? しかも王子様!?
男と結婚するなんで納得できないだろう! なにせ俺は男だぞ!?
驚きのあまり立ち尽くして、メイドに着替えられた。
一体なんだよこれは……頭がぐるぐるしている……。転生初日から最悪の状況になった。なんてことだ。
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