第36話 逃げる道はありません
カフェの下に駆けつけたエドウィン王子は、街が混乱しているのを目にした。
爆発が起きたことに恐怖を感じた人が後ずさりし、何が起きたのか分からない人にぶつかりながら押し退けられていた。
この人達が道路をふさぎ、通行不能にしていた。
(ちっ。これもあいつらの計算通りか。一般人を利用して私の追跡を阻止するつもりか。くそっ。第二夫人派らしい卑劣な手口だな)
心の中に不快感が広がっている。まるで自分の行動を読まれているかのようでした。
その時、一人の女性がよろめきながら近づいてきた。
「エドウィン様! 早く! ミリーを助けてください!」
メアリは先ほどの偽の誘拐に驚いて感情が失控しつつ、涙が目に溢れていた。
おそらく、あいつらはミリーを手に入れてから、おとりのメアリはその場に置き去りにされたのでしょう。
メアリをカフェの中に安置した後、いくつの暗部メンバーが街の角で呼びかけた。
「エドウィン様! こっちです!」
カフェの近くに潜んでいた暗部たちがエドウィン王子と会った。彼らの協力を得て、ついに混乱している人々から突破しミリーと誘拐犯たちが消えた裏通りに到着することができた。
(畜生が。こんなに受け身で臆病なのは初めてだ)
エドウィン王子は心の中でイライラしながらも、表面上は冷静さを保つ。感情に影響されて自分の判断を邪魔するのはいけない。
「皆、一時的に近くのすべての路地を探して。私と連絡を保ち、情報があればすぐに報告してくれ」
「了解!!」
「ここに残る者は私に従って。そして剣を一本くれ」
「はい! 了解しました!」
情報共有の魔法のおかげで、エドウィン王子はミリーを追いかけている暗部のメンバーたちから、彼女の大まかな位置を知ることができた。
自分は王子の身分があるから、事前にこんな場所を偵察するのは少々不便だが、暗部のメンバーたちが数回にわたりその地域を熟知し、作成した地図は王子の頭に記憶されている。だから王子は自分の位置を明確に把握している。
エドウィン王子は暗い小道を素早く駆け抜けながら、内心で苦悩している。長剣の柄を緊張して握り締めている。
常に理性と策によって問題を解決することを信念としていた。しかし、今回の事件により、初めて受け身の感覚と束縛感に直面してる。
第二夫人派が用意した巧妙な手段に対して、エドウィン王子は驚きと同時に嫌悪感を抱いている。
オマ王国全体を見渡しても、王子ほど陰謀や策略を理解している者はいない。でも今回は第二夫人派のような理屈に合わない連中、バカみたいな手段に対して、自分はうまく解決できないなんて。
(結局、今日私のミスは、自分を過信し、相手を過小評価したからだったのか)
エドウィン王子は苦笑しながら内省する。相手に操られているような感覚は、本当に気持ち悪くて吐きたい。
でも今回の事件を解決するために、できるだけ早くミリーを見つける必要がある。
失敗の屈辱感を一時的に抑え、全力で追跡に取り組むのを決意した。王子は歯を食いしばり、内心には無限の闘志と執念が燃え上がる。
『エドウィン様! もうターゲット人物を拘束している誘拐犯たちを包囲しました!』
部下からの報告を聞き、エドウィン王子は思わずちょっとよろんこんてた表情を浮かべる。どうやら暗部たちは、複雑な小道の特性を利用して素早く迂回し、いくつかの方向から誘拐犯たちを一気に包囲したようだ。
そして、裏道にでの人でごった交差点に到着した王子は、誘拐犯たちとターゲット人物のミリーが自分の部下に囲まれているのを見ていた。
気を失っているミリーは、一人の誘拐犯に肩車されている。おそらく彼女は麻酔をされているようだ。目は開けてないままに閉じた。手足も完全に緩んでおり、完全に誘拐犯たちに操られている。
そして、エドウィン王子は共有情報魔法を使って、ここに来ていない他の暗部メンバーに他の出口をさらに封鎖するように命じた。
「君たち、ここまでだな」
包囲網から抜け出してきたエドウィン王子はそう言った。その言葉に引かれた数人の誘拐犯たちは王子の姿を振り返った。
口ではそう言っているが、実際には王子はそう簡単にミリーを見つけられるとは疑念を抱いている。
でも目標はミリーを取り戻すなら、罠の存在など気にする余裕はない。しかも第二夫人派は予測不能な存在だから、罠の意図を推測するのはできない。
加えて……強烈な挫折感が王子の頭を埋め尽くしている。今は有効な戦略を考える余裕もない。
暗い路地の中で、意識を失ったミリーの青白い顔は曇り空の下で特に冷たく映える。
王子は周囲を一瞥し、暗部たちが出口を完全に封鎖していることを確認した。手には剣が握られ、いつでも攻撃の準備が整っている。
「彼女を放せ。そして私たちに渡せ。見ての通り、もう逃げる道はありません」
しかし、誘拐犯たちはまだ手放そうとせず、戦闘の態勢を整えた。その中の一人はもう既に剣を抜いている。
「ああ? どうして俺たちがてめえに従うと思うんだ小僧?」
王子は誘拐犯の頑固さを感じ、脅すだけで効果がないとわかった。そこで、エドウィン王子は少し心理戦術を使う。
「ほう。自分たちの立場を理解しているのか? 君たちを許してやるもいいが、前提はミリーさんの安全だ」
「なめてんのかおい!? ぶん殴るぞ!」
王子の言葉に対して、誘拐犯たちはまったく動じない。むしろ彼らの戦闘意志が高まっているように感じる。
(だめだ、こいつらは話しで通じない。やはり戦闘するしかないのか……ただ、ミリーさんに傷をつけないように気をつけなければ)
王子は剣の柄を固く握りしめ、いつでも抜けるように準備を整えた。そして、口にはいつでも自慢の氷属性魔法の詠唱の準備もできた。
でも、その時――
「ほあっ!!」
パンッ!
優雅な貴族の女性が天から降りてきて、彼女の剣を床に突き刺した。そして、エドウィン王子と誘拐犯たちの間に平然と着地した。
「あらら、大変だったわね、エドウィン様。ここまで追いついてきてくれて本当にすごいわ」
緊迫した場面で、カトリーナは軽快な口調でそう言った。
「カトリーナ……」
「どう? 今日のゲームを楽しんでるのかしら? わたくし、手を込んてちゃんと用意したのわよ~」
そして、カトリーナは不敵な笑顔を浮かべてる。
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