第24話 よりによってこのタイミングで!
普段なら、こんな状況に出くわしたら喜んでいるはず。だって、つい最近ミリーちゃんと仲良くなれるし、ちゃんと話せるようになったんだから。
でも今日は違う。なぜならこの店には王子がいるからだ。俺はただの男の友達と普通に外出していると思っているけど、他の人たちから見るとどう見てもデート!
ミリーちゃんに俺と王子が楽しそうに遊んでいる姿を見せたくない! 絶対に見せたくないんだ! よりによってこのタイミングで!
でもそれにしても、初めて私服のミリーちゃんを見たんだ。赤と白が調和したワンピースに後ろで結んだピンクの大きなリボン、レースのついた白いソックスに浅い赤のフラットシューズ。
ああもう、本当に可愛いよぉ! この衣装はミリーちゃんの可愛さをさらに引き立てている!
「いやあ! ついに伝説のレイナ・ナフィールド公爵令嬢を目にするのができて嬉しいわよ! あ、自己紹介忘れちゃった。初めまして、私はミリーの友達、メアリですよ!」
俺がじいいいっとミリーちゃんの姿を見ている間に、隣の女の子が挨拶してきた。元気いっぱいの声が注意を引き戻した。
「で、伝説なんかじゃないですわ」
「あるよ! 私みたいな男爵令嬢がこんなに優雅で高貴な公爵令嬢本人に会えるなんて、私の人生に後悔はない!」
「もう、メアリ。レイナ様はいい人だけど、失礼しちゃダメだよ!」
「あ、そうそう。ごめんね、ちょっと興奮しすぎちゃったかな」
「全然大丈夫ですわ。失礼じゃないから安心して」
ところで、メアリという子は、なんだか兄のウィルさんにくっついている子に似ている感じがする。銀色の髪が鎖骨まで垂れ、黄色い宝石のような輝く瞳。メアリさんの服装スタイルもミリーちゃんと似ている。
彼女たちの会話から見ると、二人の関係はかなり親しいみたいだね。羨ましいなぁ……。俺もミリーちゃんとの関係をこんなに近づけたいよ。
「ごめんなさいね、レイナ様。この子はレイナ様みたいなお嬢様に憧れているんですよ。だから失礼な態度になってしまったんです。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「気にしないの。元気なのはいいことだわ」
「聞いたかミリー? レイナ様も元気なのがいいって言ってるよ!」
「はぁ……本当にまいったなあメアリに」
ミリーちゃんは額を押さえてため息をついている。初めて見る光景だ!
「それにしても、本当に偶然だね、レイナ様。休みの日に店で出会うなんて」
「あ、うん。そうだね。まさかここで会うなんて思ってなかったわ」
「私もそうだよ。それに、レイナ様みたいに綺麗になりたいなぁ」
「き、綺麗なんてそんなことないわ。ミリーちゃんだって可愛いじゃない」
「か、可愛い……」
ミリーちゃんは俺の褒め言葉に少し顔を赤らめたようだ。でも、とっても可愛いのは事実だもん。
「ふ~ん。そっかそっか~そうなんだ~」
メアリさんはやんちゃをするな表情で俺たちを見つめる。もしかして、この子は何かを察知しているのか?
「と、とりあえず、話は戻ろう。レイナ様は今日なぜここにいるの? 友達と一緒に買い物に来たのかしら?」
「えっ、まあ、その、実は――」
「それはもう決まっていることでしょ! 私の観察によると、ここじゃほとんどの商品が男性から女性に買われているし、レイナ様はいい関係の婚約者さんもいるし。だから答えは明らかじゃないの!」
なんてことだ、俺はまだ何も言っていないのに、メアリさんの直感がそんなに当たるなんて……。お願いだからその答えを言わないで――
「それは――エドウィン様とのデートですよ!!」
言っちゃった!!
「えっ!? ほ、本当ですか!? レイナ様」
「あっ、えっと、その、まあ……」
「それってつまり、私もエドウィン様の貴重な姿を間近で見ることができるんですね!? いやあ! 思いもよらなかった! 今日は本当に予想外の一日になりそうですわね!」
「メアリ、絶対にエドウィン様に失礼しちゃダメだからね!」
まずい。本当は適当にごまかして、王子が来る前に二人を送り出すつもりだったのに、今じゃメアリさんのせいで隠したかった答えがバレてしまった。どうしよう……。
「その、実は、わたくしは――」
「どうだった? レイナ。おや、これはミリーさんじゃない。こんにちは」
なんでこんな時に現れるんだよお前! わざとだろ! なんでいつも俺が決断しようとしているときに邪魔をするんだよ!
王子はいつも最悪のタイミングで現れる。そして俺の隣にいる二人の女の子は、イケメンを見て興奮した表情を浮かべている。
「ごきげんよう、エドウィン様。こちらが私の友達、メアリです」
「は、初めまして! 王子様! わ、私、メアリと申します! てかなんでミリーは緊張してないの!?」
「二人ともこんにちは。私の婚約者が迷惑をかけていませんか?」
「全然問題ありませんよ! むしろここでレイナ様に会えるなんて光栄です」
「そうそう!」
「ちょっと、わたくして迷惑をかける人に見えるかしら?」
「ふふん、どうかな」
ミリーちゃんの前で俺のイメージを悪くしないで欲しいよおい。
「あの、エドウィン様。私たちこそ邪魔になっていないかどうかが聞きたいです。なにしろ、エドウィン様とレイナ様は今日、その、ですよね」
「そうそう! もしも迷惑をかけていたら、本当に申し訳ありません!」
「お気遣いいただきありがとうございます。でも大丈夫ですよ」
王子が言葉を終えると、俺の横に近づき、腰に手を回し、俺をアイツの腕の中に引き寄せた。
ちょ、ちょっと待って! 何をしているかよ!?!? ここは外だぞ! 公共の場所なんですよ!?
「まだ私たちのデートは、始まったばかりですから。ね、私の可愛いレイナ」
「「きゃああっ!!!」」
「……!!」
王子は女の子にとってはもうろくろくと溶けてしまいそうな声で俺にそう言った。その後、ミリーちゃんとメアリも黄色い声を上げた。
「や、やっぱり邪魔しちゃいました! 行きましょう、メアリ!」
「えっ、あっ、おお」
二人にとって衝撃的な光景を見て、ミリーちゃんがメアリの手を引いて店を急いで出て行った。
ああっ……確かに二人は俺の望む通りに去ってくれたけど、状況は予想どうりと全然違う。
◇
まあ、今回の予期せぬ出来事は多くの偶然の結果であり、王子が意図的に俺と親密な行為をすることを完全に責めるわけじゃない。
たとえアイツがそれをしなくても、あの二人はここにいるのはあまりよくないと思って去っていたでしょう。
「はあ……」
俺は王子と共に噴水広場まで歩いていた。疲れ果てた俺はベンチに座った。
なんでミリーちゃんとの進展はこんなにスムーズでないのだろう。一人でいるときには話題がたくさん浮かんできたのに、再会した瞬間、頭がごちゃごちゃになり、うまく考えるのができない。
「ごめん。冗談が過ぎた」
「いいんだ。もう慣れてるから」
王子も俺の隣に座ってから謝罪をした。まあ、今回は冗談を言ったかどうかで結果は同じだったでしょう。ミリーちゃんとのコミュニケーションを改善しない限り。
「ねえ、レイナ。ちょっと質問したいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「前からずっと疑問だったんだけど。レイナはミリーさんのことをとても好きだと言っているけど、なぜいつも自分から積極的になれないのか? でも自信がないわけでもなさそうだし、人生経験も豊富だ。なんでだろう? なんでレイナはミリーさんに素直になれない? 見ているだけでこっちまで焦ってるから」
「……」
これは……まあ、実はそれは原因がある。中学にある事件が起こってから、俺は女の子を追うことに怖気づいている。
あれからの俺は、その壁はずっと乗り越えられないのだ。もう中学時代に起こったことが、今になっても俺を影響される。俺の未熟さが引き起こす黒歴史だ。
「少し、俺の裏話を聞きたいのか?」
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