届いた手紙
この話はいつもの彼の話ではなく。彼に関わってしまった。青年、マナペントの話だ。
これはマナペントが彼と出会う
ある日の朝、俺はコーヒーを飲んでいた。今日も一日、仕事を頑張るぞと気合いを入れるコーヒーだ。俺は窓際に立って朝日を浴びる等、俺の中での最高の朝を過ごしていた。
そんな俺の元に、一通の手紙が俺の元に届く。仕事の関係上、手紙なんて物は大量に届くのだが今回のは誰のどんな手紙よりも優先され俺の元に届いたのだ。
そして、手紙を持ってきたポストマンが俺に告げる。
「マナペントさん、メジカ様からお手紙をお預かりしております」
その名前を聞いた時、手に持っていたマグカップを落とした。
これがその日の始まりであった。
割れたマグカップを片付け、ポストマンから手紙を受け取りもう一度、差出人の名前を見る。そこには綺麗な字でメジカとはっきり書かれてあった。この手紙の差出人は俺が今の仕事である冒険者になるキッカケを与えてくれた人物であった。
少し緊張しながら手紙を開け、中身を読み出す。
『お久しぶりです、マナペント。私の事を覚えていらっしゃいますか?覚えていないのであれば今すぐお手紙を破いて燃やしてください』
初めから飛ばしてくるメジカからの手紙に圧倒されつつ俺は読み続ける。
『破かず読み続けるということは覚えてたらしたんですね。
さて、こんな無駄な文章は置いといて本題に入ります。恐らく私はあと1ヶ月もしないうちに死んでしまいます』
その1文を読んだ時、体に力が入り手紙にシワが出来る。
彼女の才能『占い』はある程度の未来を見る事が出来る便利で珍しい才能だ。しかも、誰かに触れながら占うとその人の未来を見る事もできるというおまけ付き。だが、この才能は便利であるが故に彼女の人生観は狂ってしまっている。才能によって自分がいつ死ぬかわかってしまう為、死への恐怖が彼女には無かった。どんなに未来が悲惨なものでも受け入れるしかない。というのが彼女のスタンスであり事実でもあった。
一度、彼女の話は置いて手紙の続きを見ていこう。
『そこで貴方にお願いがあるのです。1人の青年を王国まで連れて行ってくれませんか?断るのであれば手紙を破いて燃やしてください』
まるで、極秘任務の様な彼女からの手紙に苦笑いを隠せないが俺は読み続けた。
『では、この先は他言無用でお願いします。貴方に送って欲しい青年には才能がありません』
「…は?」
才能が無いという嘘の様な文章に俺は戸惑いつつも先の文章を読む。
『信じれないと思いますが、これは事実です。私は、彼の才能診断の際に目の当たりにしており、司祭が判断を下した書類もあります』
と文章が終わっているので2枚目に移るとそこには
『才能:無し』
と司祭のハンコが押されてある書類があった。司祭のハンコを偽造することは不可能に等しい為、俺は信じるしか無かった。
3枚目の紙に移り
『では、依頼を改めて書き伝えます。
この手紙が届いてから約1ヶ月後、彼は森に行きとあるポイントで崖から転落します。それをどうにかして捕獲し、国まで送ってやってください』
色々とツッコミ所満載だが、彼女は至って真面目にこの文章を書いているのだろう。
『あと、出来ればで良いのですが彼の心をある程度、癒してあげてください。周りからの過度な暴力、暴言により彼の心は砕ける寸前だと思うので』
メンタルケアは少し高等な技術だ、それこそ才能の有無で変わって…
『どうせ、才能が無いから無理だ、とか考えてそうなのでやり方を記します』
どうやら俺は彼女に心を読まれている様だった。
『まずは、彼を助け喋れる状態になったら、自己紹介を済ませてください。もちろんですが、本人が才能を言わなければ深くは追求するのは駄目ですよ。
その後は、運動や美味しい料理を食べるや作る等のリラックス出来る空間を作り上げてください。なるべく、この場所を忘れられるぐらいに』
彼女がいるあの場所は…確かにそうだな、俺も思い出したくない。
『あとは楽しくお話でもしてください。まぁ、もちろん、やるかどうかは貴方が実際に彼に会ってから決めてください。しかし、貴方も彼を気にいると私は思っています。』
そして、最後の文章に移る。
『彼の名前はギルティ。初めて私の未来を壊した人物です。では、よろしくお願いします』
未来を壊すと言うのはギルティという青年の未来を見る事が出来ない?…だが、崖から転落する未来は見えているから彼に関する未来では無い。だから、考えられるのはギルティが生まれてくる未来が見えなかったという事だろうか?
思考が悪い方向にしかいかないので一度思考をリセットし4枚目に移る。
そこには
ある程度目を通し、5枚目に移る
『足が悪くなり、面と向かってこの事を貴方に伝えられなかったのが残念に思えますが、貴方が私の元に来た時の事は今も覚えております。貴方がどう思っているかは分かりませんがとても楽しい3年間でした。では、彼の事をお願いしますね』
これは冒険者としてでは無く、普通の俺に送られた手紙だ。
「あぁ、そっか。死んじゃうんだもんな」
手紙で簡単に伝えられた為、実感が湧かなかったが…お世話になりっぱなしだったなぁ、彼女には。だからこそ、俺を頼ってきたのだろうが。はぁ。
いつの間にか流れていた涙を拭う。
『読み終わりましたら、極秘の書類の為、手紙を破いて燃やしてください』
感動が全てが台無しになった瞬間であった。
それから1ヶ月後、彼女の占い通り崖から落ちたギルティは俺の仕掛けた網に引っかかっていた、本人は頭を軽く打ち気絶をしていたので俺が昔彼女と使っていた小屋に連れて行き治療をした。
ギルティが目を覚ましたので話してみると彼女が伝えてきた様にいっぱいいっぱいだったのか赤ん坊の様に泣いた。どうすればいいのか分からなかったが昔メジカがやってくれた様に泣き止むまで背中をさすってやった。
ギルティと話しているとメジカのことがどうにも頭を過ぎる。後悔はしていないと思っていたが、最後に何とかして会っていればよかったな。と心残りが出来ていた。
どうだったかな?これが
ん?メジカとマナペントの関係がまだだって?そんなの彼と関係が無いじゃないか。だから、これでこの物語は終わり。さぁ、次の物語に行こう。ジャレンカ王国での彼の物語を。
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