第38話 仕事の話
「はっはっは、お騒がせしマーシた」
カウンターからテーブル席に移動し、小太りの男性が窓側に座り俺とルクナがその反対側は座る。
「何か食べるかい?」
ルークが注文を取りに来ると
「いえ…アイスコーヒーを頂けマースか?」
「了解だ」
注文を受けそそくさとアイスコーヒーを作り始めるルーク、流れ出る汗をハンカチで拭う小太りの男、先程よりも状況が落ちついてくる。
それを、確認したルクナが
「さて、早速仕事の話をしようか」
と話を開始した
「そうデースね。まずは…自己紹介をワターシのナーマエはベルサンス・ビーデルタと申しマース」
名前が長い事と喋り方がどうしてそんな感じなのか少し気になるが…聞くのは失礼…いや、聞き方によれば…
「ギルティ君、まさかだけど彼の名前と喋り方が素だと思ってないよね?」
「え、違うんですか?」
普通に何処か遠い国から、とか何処か辺境の村で独特な言語を学んで生きていきた、とか考えていたのに
「はぁー、彼はねこの世界の人を笑顔にする為、異世界メルスギアから来たばかりの面白人間っていう設定で仕事をしているんだよ」
「お〜、全部話してしまうんデースね」
「当たり前だろ、彼は大事なお客様じゃなくて仕事仲間なのだから、さっさとネタバラシをしとくものなのさ」
「ま、それもそうデースね…ここではこのマーマで喋らせていただきマース。さて、もう大体ナーマエも知っていマースが…改めて自己紹介をお願いしマース」
「私は君に手紙を出したルクナ、彼が手紙にあった『運搬』の才能の持ち主ギルティだ」
俺が何かを言う前に話を進めるルクナ、俺は一体いつ『運搬』の才能を得たのだろうか…後で話を聞く必要がありそうだ。
「おー、よろしくお願いしマース」
「さぁ、自己紹介が終わったし、さっさと仕事内容を話そう」
「そうデースね」
「依頼内容は1ヶ月、私から『運搬』の才能を持つ彼ギルティを借りる、で大丈夫だね?」
「はい、とても助かりマース」
サクサクと話が進みその度にルクナに聞くべきことが増える。だが、まぁ何もせずに仕事が決まるのなら良いか
「念の為、これを書いて貰おうか」
「おー、まさかこんな物をお持ちだとは」
1枚の古びた紙、この紙を俺は見たことがある、これは…
「契約の書、冒険者協会が占領している呪物だ」
この紙に書かれた約束事を破ると罰を必ず下せるといったかなりヤバ目のものだ。
「こんなものを書かずトーモ、我々を信じて彼を貸してくだされば…」
「信じてかぁ、よくそんな事を私に言えるな」
空気が一気に冷えルクナから感じたことのない圧を感じる。
「私はこの国や君たちの事を全て知っている。それを知った上でそんな話をしてるのか?こんな紙切れ1枚でさえ縛りとしては甘いと思っているんだ…君の首に遠隔の爆弾を付けてもいいくらいなんだぞ?」
「わ、分かりマーシた。申し訳なかったデース」
「…契約内容は1ヶ月で彼を解放すること。それ以上を過ぎた場合や勝手な事をした場合、君にとある命令をさせてもらう」
「分かりマーシた…はい、これで契約完了デース」
「アイスコーヒーお待ち…って何だこの空気」
ルクナが全てを掌握し終了した話し合いであった。彼女を初めて恐ろしいと感じた。
ベルサン…小太りの男はアイスコーヒーを一気に飲み干すと立ち上がる。
「さぁ、ギルティ君さっさと彼に着いて行くがいい」
「えっ?でも…」
色々と聞きたい事があるのだが
「ほら、ここに君が知りたい事を全て書いてあるから」
と四つ折りにされた紙が渡され
「まぁ、それなら」
と俺もそれで良いかと諦めてしまう
こうして、俺はルクナと別れベルサンなんとかさんの後ろをついて行くのであった。
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