第33話 堕落の時
「さぁ、私が選んだ簡単に読める50冊さ」
積み上げられた本の題名は様々であった
[乙女学園]全8冊
[メルスフィア英雄録]全10冊
[世界誕生秘話]全2冊
[面白い生物の特徴]全5冊
[古代遺跡より見つかった謎の秘宝]全1冊
[各国の歩き方]全9冊
[剣神ヘラベルシトの冒険者記録]全6冊
[魔神エラシレの冒険者記録]全6冊
[効率の良い筋肉の付け方]全3冊
「どうだい、君好みだったろう?」
ふふん、と自身ありげに俺を見る
「えぇ、まぁ…」
悔しいことに惹かれてしまった。
特に[メルスフィア英雄録]は読める機会があれば読もうと思っていた本だし…だけど、
「筋肉の付け方、ですか」
惹かれる本の中一種だけ異常が混じっている。
筋骨隆々、爽やかな笑顔、死んだ目の男が表紙となっておりその異質さを表している。
しかも、この本他の本よりも見て分かるぐらい1冊1冊が分厚いのである。
「そんなにも、俺は筋肉好きに見えましたか?」
時折、体を鍛えようとは考えるものの、表紙の
その何とも言えぬ複雑そうな顔を見て彼女は
「あぁ、それは私が読むやつだから気にしなくていいよ」
とルクナが笑う
「…もっと、簡単な本あったでしょう」
体力や筋力が無いことを気にして、この本を選んだのだろうが…もっと、選択肢があっただろうに。
「いーや、私が知る限りこれが1番初心者向けの本だとも」
そう言い、筋肉の本を部屋の角へと持っていく
「まぁ、無理をしないように」
聞こえたのか聞こえていないのか分からないが、俺は諦め本を読むことにする。
最初に手に取ったのは
[メルスフィア英雄録]
英雄メルスフィアの一生を書いた作品だ
メルスフィアの才能は『不明』、性別も不明(だが名前より男なのではないかと予測)とされており、残された文書には『全能』…つまり、全てにおいて才能があったのでは無いかといわれている。
竜を倒せる筋力、山を破壊出来たとされる魔法、『発明』や『学者』にも引けを取らぬ知識量、誰もが見惚れる美貌、どれをとってもメルスフィアは優秀であった。
産まれてまもなく魔物を狩り、その血肉を喰らった。5歳の頃、父親の蹴りを受けると父親の足が折れた。火や水、風などの魔法を同時に操った。拳で岩を砕き巨大な城壁を作った。弓を使いやすい今の形へと変えた。と様々な伝説や噂を持っていた。
そんな、人間が本物の英雄として扱われたのは旧アバレンド王国(現ジャレンカ王国)にて竜13匹に襲われた際、メルスフィアは1人でそれを制圧してみせた。
人々はメルスフィアを英雄や神として崇め、全ての国は争いを止めた。
そして、その後もメルスフィアは世界地図の作成や貧しい国への補助を行いその名声を獲得していった。
しかし、そんな人間でも老いには勝てない。
中央王国[メリスマリア]より外に動く体力も無くなったころ人間が弱くなる事を恐れたメルスフィアは冒険者協会を創設した。互いを高め合い最低限の脅威を止めるための組織
それを最期にメルスフィアは国民に見守られこの世を去った。
パタンと本を閉じる。
1冊1冊が読み応えのある良い本であった。
時間を忘れさせてくれる、この空間にも感謝しなければ。
俺は次の本を手に取る。
一方、ルクナは有酸素運動を開始したのであった。
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