第32話 知恵の巨木
中に入ると見えてくる暖かな光と
「す、ご」
圧倒的な本の量を見て、あると知っていても驚かざるを得ない
「ふふふ、じゃあ。君はあそこの受付に行って302号室の部屋を借りてきてくれたまえ」
「わかりました、302号室ですね」
中途半端な部屋番号を告げてくる彼女なのだが何か思い入れがある部屋なのだろうか?
「おっと、お金を渡さないとね…」
そういうとルクナはお金の入った袋を取り出す
だが、流石に…
「ずっと払ってもらってばっかなので俺が払いますよ」
と止める。それを聞いた彼女は
「そうかい?なら甘えるとしよう」
と言い、袋をしまった。
そして、そのまま彼女は本棚の中に消えていき、俺は受付を目指した。
「いらっしゃいませ、お客様」
ビシッと綺麗な服を着た受付のお兄さんが笑顔で対応してくれる。
「302号室の部屋をお願いします」
「かしこまりました。金貨8枚となります」
かなりの値段だがルクナのおかげでお金に余裕はある。俺は袋から金貨を取り出し受付に渡す
「…はい、ちょうどいただきます。では、こちらが302号室の鍵になります。あちらの右から2番目の
早口で所々適当さが見えた気がするが、きっと気のせいだろう。
俺は鍵を持ち言われた通りの道を辿り、302号室へと入った。
「おー、広いな」
広さはジャレンカで過ごした宿の大体3倍ほど
そこそこ大きい机に4つほど置かれた椅子、ベットが2つある。窓が無いのが少し残念だが太陽のように暖かな照明がついているので良いと思おう。
空気も綺麗で本当に良い部屋だ
「…座って待つか」
久しぶりの1人の時間、ずっとルクナにお世話になりっぱなしだった事や話し聞き続けた為かこの場が静かな事に寂しさを感じる
足をぷらぷらと揺らしその時間の長さを体感する
5分、10分…30分と時間が経過する。少し、時間がかかり過ぎではないだろうか?
…いや、そんな事無いよな。まだ、もう少し待つとしよう。
彼女と別れ1時間が経過した
彼女を探しに行こうか考えたが、あの迷路のような空間で1人の少女を見つけるというのは不可能に等しいので諦めた。
だが、何もしないというのも…と考えていると
ドサドサドサ…
「…」
と外から物凄い音が聞こえ同時に何が起こったのかを察してしまった
ドアを開けると
「た、たすけ」
本の山に手がピョコンと飛び出し埋もれているルクナの姿があった。
「何やってるんですか、本当に」
俺は彼女の手を掴み思い切り引っ張る
「うはぁ、助かったよ」
「何冊持ってきてるんですか」
「ん?50冊ほどだね」
「馬鹿なんですか?」
筋肉の無い細腕でここまで一生懸命持ってきたのだろうが
「流石に物を運ぶときは俺を頼って下さい」
おすすめというので5冊ぐらいだと思っていた俺も馬鹿であった
「次そんな機会があればそうさせてもらうよ」
ははは、と笑う彼女は6冊程手に取り302号室の方へ歩く残りの44冊を2列に分けて積み重ね持ち上げる。両腕にかなりの負担がかかる、俺でこれなら彼女は相当であったのではなかろうか?
「ギルティくーん、扉開けてあげてるんだから早く持ってきた前ー」
「はいはーい」
バランスを取るのが少し難しいがそれよりも問題なのは前が見えない事であろう。まぁ、真っすぐな通路で難しいとは感じないのだが…彼女はどうやってあの迷路のような通路を通ったのだろうか?
「その角度で真っすぐね」
「はいはい」
まぁ、彼女の事は不明な点しかないので深く考えるだけ負けだろう
俺は彼女の指示を受けながら部屋に戻ったのだった
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