第26話 旅立ちの時、そして…

日が頂点に達したころ彼は目を覚ました

そのおかげか体の疲れは取れとても清々しい気分であった

体を起こし外を眺める慣れてきたこの騒ぎ具合に少し惜しさを感じるも彼は心決め準備を開始した

軽く広げていた荷物を全てカバンに詰め背負う。昨日持ったあの荷物より遥かに軽く少ない荷物、さっぱりした部屋に一礼階段を降りる

「7日間お世話になりました」

「また来てね」

ずっと格安で部屋を貸してくれたお婆ちゃんに礼を言い、次の場所に向かう。

彼が向かうは仕事を受け続けた場所、冒険者協会

正直、冒険者は自由な仕事だから挨拶など不要だと思うが彼は皆に挨拶をしに行く

宿から早歩きをする事10分程で到着する

もう慣れてしまったが、いつものような空気感、ワイワイとした雰囲気

彼は真っすぐ受付嬢の下へ歩き出す

「こんにちは、依頼の受注ですか?」

「いや、テロサスさんに用があって…」

「そうですか…でも、マスターは今日から3日程休暇を取られているみたいで…」

「あぁ、そうなんですか」

「よろしければ伝言をお預かりしましょうか?」

「なら、お願いします」

そう言うと受付嬢は手帳とペンを取り出し俺の方を見る。少し恥ずかしくなりながら

「次の国に行ってきます。7日間お世話になりました」

と告げる。それを、笑顔でそれを書き記した受付嬢は

「はい、ではお伝えしときます。では、行ってらっしゃいませ」

「行ってきます」

受付嬢に一礼し彼は冒険者協会を後にした

次向かうべき場所はヘル達が暮らす家に…いや、もう依頼を受けて何処かへ行って…

「あっ、ギルティ君じゃねーか。昨日ぶりー」

なかったようだ。

ヘル達がのんびりとした様子で近づいてくる

「皆さん、昨日ぶりです」

「その荷物量もしかして…」

「はい、もう次の…「今日も依頼を受けたのかたまには休んだ方が良いぞー」」

「いや、そうじゃなく…「まぁ、決めちまったものはしょうがないよな。頑張れよー」」

俺の言葉の上に次々と言葉を被せ、逃げるように去っていくヘル。正直違和感しかないのだが…残った【希望の剣】の方に目を向けると

「ごめんね、ギルティ」

と申し訳なさそうにしているセナが口を開く。

「ヘルはさ、泣いているところを見られたくない人だからさ」

「えぇ」

とても意外だった。ヘルはもっと軽く接してくるものだと思った。

「私たちから伝えられるのは…またいつでもこの国に帰ってきてね」

「はい。絶対に‼︎」

セナの笑顔に彼も元気良く返事する

「お土産話楽しみにしてるぞ」「良ければお土産の方も…」

親指を立てるケインと照れたミカの言葉が

「はい、こちらに戻るときは必ず‼︎」

彼に元気を分け与える

「じゃあね、ギルティ」

「はい、セナさん達もお元気で」

手を振りセナ達はヘルの後を追うように走っていく。さぁ、次は…と考える彼なのだが本来は森で会ったあの青年マナペントにも挨拶をしようと考えたが何処にいるか分からないし、国中を走り回って探すなんて現実的じゃない

なので、彼はマナペントに会うのを諦め、出発の為、歩き出した。


途中で金貨10枚を使用し、寝袋や水、食料などを購入しつつ東の方へひたすら向かう

城壁が段々と近づいて来て大きな門が見えてくる

ジャレンカ王国には各方角に門があった北と西には森へ出るための門、南は貿易門、そして東には

「お客さん、いらっしゃい」

旅人などが行き来する為の門があったのだった

「フィオンネ王国行きの馬車はありますか?」

彼が次目指す国は娯楽の国フィオン、この選択は彼が1番近いため安く済ませれるという考えた末に選ばれたのだった

「フィオンネか…」

そう言うとペラペラと紙をめくり

「残念だが、あそこは人気過ぎて今埋まっちまっている。他の国か明日にしてくれないか?」

「そうですか…」

なら仕方ない次に近いと聞いていたラムニーとやらに

「おや?ギルティ君じゃないか」

と考えていると後ろから久しぶりに聞いたあの声が聞こえる。

振り返ると白衣を着た少女ルクナが後ろに荷物を持った使用人の様な人を連れ、立っていた

「ルクナさん、お久しぶりです」

「あぁ、大体1週間ぶりくらいだね。ここにいるって事はもう出発するんだね。何処に行くんだい?やっぱり、一番近いフィオンネかい?」

「そうしたかったんですが。どうやら馬車がないようで」

「そうか、それは残念だったね…と普段の私ならこのまま去っていたのだろうけど今の私は機嫌が良い。どうだい、私の馬車に乗っていくかい?」

「いいんですか⁉」

「勿論だとも」

崖に落ちマナペントに助けられたあの日と同等の幸運が今舞い降りた

この機を逃す訳にはいかないと彼女に礼を言い、俺は案内され周りより少し豪華な馬車に乗った

「さぁ、いっぱい君の事を聞かせてくれたまえ」

馬車は動き出し前へと進む

ドンドンと遠くなっていく国を気にする暇なく彼女との会話が捗るのであった



私の出番がもうすぐ始まる

期待の歓声と眼差しに吐き気を感じながら前へと進む

ナイフを3本手に持ち精一杯の笑顔で観客の前へと姿を露わす

そして、一礼し…少女はナイフを高らかに投げたのであった



ジャレンカ王国での物語は終わり、新たに始まるのは娯楽で回っている国

正式名[フィオンネ王国]での物語が始まろうとしているのであった

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