第25話 別れの時
あれから4、5回ほど全員がおかわりをしたが金貨3枚と本当に安かった
全員が満腹になると、イニスが嬉しそうに微笑み、本当に皆が幸せな時間であった
「さて、5人ともそろそろここを閉めなきゃ行けないんだけど…」
申し訳なさそうにするイニスに
「もうそんな時間か、なら失礼しよう。ありがとうなイニス」
とヘルが礼を言い、他4人も軽く礼を言うとイニスはコクリと頭を下げ、彼らは店?を後にした。
外はすっかり日が落ち暗くなっていた、皆が満足げに歩いていた。
2本の分かれ道に辿り着いた
右に行けば【希望の剣】が暮らしている家に、左に行けば彼が泊まる宿に
という状況になった。
「では、俺はあっちなので。今日はありがとうございました」
と彼が頭を下げ、歩き始める。すると、
「ギルティ君」
ヘルに呼び止められる。彼が振り返ると
「あのさ…正式に俺たちのチームに入らないか?」
「はい?」
彼は唖然とした。きっと、ヘルなら「またな」や「じゃあな」などの別れの言葉が聞けて手を振って今日は帰り楽しかった思い出の中眠ろうなどと考えていたのに…
飛んできたのは、まさかの勧誘の言葉
彼の開いた口が塞がらず、後ろの他のメンバーは、やれやれといった感じであった。
そんな彼らを置いてヘルはひたすらに語る
「今日を経てわかったんだ。君は俺たちと一緒にいればきっと楽しいし絶対に優秀な冒険者になれると思うんだよ」
ヘルはひたすら彼の良いところを話し続けた。
すぐ友人関係を築ける、強くなる素質がある、など様々だった。
「だからさ…」
普段勧誘を行わないヘルなりのやり方だったのだと思う。とても嬉しい事だし光栄な事だと言うのはわかっている。だが、
「ヘルさん、お誘いは嬉しいですけど…俺の本業は旅人なので一緒にはいられません。ごめんなさい」
彼は本当に嬉しかった。初めての国で会った楽しい人達とずっと一緒に居られる可能性があったことが。だけど、必ず彼の才能が邪魔をする。
才能が無い事を知った時、彼らはどんな反応をするだろう。彼らと一緒に過ごすのは楽しいが 同時にそれを失う可能性があるのがとても怖かった
だからこそ、拒否という選択肢を選んだのだった
「…そっか」
ヘルは納得し深く頷く。そして、
「なら、また機会があった時、一緒に冒険しような」
最初の時の様に止める事はせず受け入れた
「はい、ありがとうございました」
彼は深くお辞儀をし、宿に向け歩き出す。
「じゃあな、ギルティ君」「ばいばーい」「お疲れさまでした」「じゃあな」
4人の別れの声に手を振り彼はその場を後にしたのだった。
楽しかった声は無くなり辺りは静かになった
彼は夜空を眺め今日という日を噛みしめる。長く楽しい一日だった2回も死にかけたけど…とても充実した1日だった。と先程よりもゆっくりとした歩みで宿を目指した
宿に戻ると直ぐにベットに寝転ぶ。体全体が溶けるようにベットにめり込んでいき
そのまま…
チャリンチャリンチャリン
眠りに落ちる前にポケットに入った金貨が落ちた。溜息をつきベットから体を起こす。
金貨を全部拾い上げ袋に詰める。合計で30枚も集まった金貨、もう次の国に行く準備は出来た。
「そっか。もう行けるんだな」
彼は再びベットに寝転がる
資金不足なため停止していた彼の旅は明日より再開できる
「あぁ、楽しみだな」
明日を楽しみにしながら目を閉じ、夢の世界へ向かう
彼の呼吸は段々とゆっくりになっていき寝息をたて始めたのだった
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