第24話 楽しき時
テロサスと別れて5分程、膝枕戦争をしていたミカとセナだったが
結果としてケインがヘル特性の安眠枕君とやらリュックから出したことにより終幕となった。
そして、更に5分経過したころ
「ん…んー」
とヘルが目を覚ました。
目をパチッと開けると全員からジッと見られていた事に驚いていたが直ぐに状況を把握する
そして、テラサスから言われた情報をセナから受け取ると
「よし、じゃあ。報酬受け取って飯でも食いに行くか」
と言い立ち上がる。
何の脈絡もない提案に唖然とする彼と
「そうね」「そうしましょう」
「今回はヘルの奢りだな」
いつものようだと言うように歩き始める【希望の剣】の皆
今日という濃い1日で4人の事をかなり理解したつもりだった彼はどうするべきなのかその場で立ち尽くしていたが
「ギルティ君?何してるんだ君も来るんだぞ」
と言うヘルからの言葉に
「は、はい‼︎」
と地面に置いてあったリュックを背負い走りだしたのだった。
皆で何を食べるか話しながら歩くこと10分程
冒険者協会に到着した。
中に入ると様々な話が耳に入ってきた。
北門が一時封鎖された、テロサスが動かないと行けない事態が起きた、爆発音の正体はジャレンカ王国が秘密裏で作った兵器の音らしい、など様々だった。
全ての事を知っている彼は少し得した気分になりながらヘル達の後ろを付いて行く
「【希望の剣】の皆さまお待ちしておりました。では、報酬の支払いを行いますね」
カウンターに到着し、受付嬢がヘルの姿を確認すると笑顔で対応してくれる
「えっと…報酬は…金貨60枚で…追加報酬で金貨30枚の…合計90枚です」
手慣れたように金貨を袋に詰め
ジャラ
カウンターの上に置きお金の動く音と
「はぁ、多かった」
という受付嬢の文句が小さく聞こえてきたのだった
「では、こちらをお受け取り下さい」
再び笑顔を作る受付嬢
「どうも」
とヘルは受け取り直ぐにカウンターから離れた。
カウンターから離れ冒険者協会から出る…訳では無く
「こっちだ」
とヘルが先行し、とある部屋に入る
窓が無く白い壁で木の床の普通の部屋、ただ物が何も置いていないのは気になるが…
「あのう、ヘルさ「しっ」」
ここは何なのかという質問をしようとしたが、セナに止められ彼は黙る
ヘルは壁に近づきブツブツと何かを喋り始めていた。
1、2分ほど経つとヘルが壁から離れる。そして、
ガコンッ…ゴゴゴゴッ
と音と共に壁が地面へと埋まっていき新たな部屋が現れ、いい匂いが漂う。
「さて、ここが安くて上手い。秘密のご飯屋だ」
ニコッと彼に微笑みヘルは歩き始める。そして、常連なのか空いている席を無視しカウンター席に腰かける
右からミカ、ヘル、セナ、ケイン、彼の順番で座り
「イニス、注文大丈夫か?」
「はいはーい」
ヘルが呼ぶと奥から嬉しそうに白髪の少女イニスが出てくる。
「俺達はいつものを、ギルティ君には…」
メニュー表の無い場所で何を見て頼めば良いのだろうと悩む彼にイニスが口を開く
「好きな食べ物はあるかしら?昔、作ってもらったご飯とか。何でも言って」
昔の事を少し考える、パン半分、水…1つだけ思い出した
「…ミートパイ、肉と野菜がたっぷり入った」
アップルパイが好きだが作れなかったメジカ婆ちゃんが何故か作れた…いや、俺の健康に気を使って作ってくれた食べ物だ
「ミートパイね、分かったわ。じゃあ、みんな20分ぐらい待っててね」
イニスは優しく微笑み包丁やフライパン、食材を取り出す
そして、手際よく野菜を切り刻み肉と炒める。
これと同時並行でイニスは他の皆の料理も作っていく
彼がその手際の良さに見惚れていると
「そういえば、ギルティ君。これを受け取ってくれ」
とヘルの声が聞こえると、横から袋を滑ってくる。
それを開け中を確認すると金貨が入っていた
「金貨20枚だ」
「えっ?」
最初契約した時には60枚中12枚、その後の彼は特に何もしていないとそう考えたための驚きだった
「騙して連れて行った分とミカを護ってくれた分で上乗せだ」
1つ目はさておき、2つ目は結果的に見れば彼に治癒をしなければならないという迷惑をかけたと考えをするのが彼なのだが
「受け取れないなんて言わないでくれよ?俺的にはもっと渡してもいいと思ったんだからな」
変に増やすと受け取らないと察し彼に気を使った上でのこの枚数。彼は渋々納得し袋を受け取ったのだった。
「皆、出来たわよ」
話しが終わったと認識したイニスが別々の料理を配る
ミカにはオムライス、ヘルにはステーキ、セナにはパスタ、ケインには鶏の丸焼きが置かれ彼には要望通りミートパイが置かれた
「「「「いただきます」」」」
皆は手を合わせ料理に食らいつく。そして、彼も
「…いただきます」
と言いナイフとフォークを手に取る
パリパリとした皮、中から肉のいい匂いと野菜の良い色味が姿を現す
そして、口に放り込む
「どう美味しいかしら?」
「はい、とても…美味しいです」
メジカ婆ちゃんが作ってくれたあのミートパイより味は遥かに美味しい一品
だけど、メジカ婆ちゃんが作ってくれたあのミートパイは少し甘味があったような気がした彼なのだが、かなり昔の事なので勘違いだろうと思いもう一切れ口に放り込み味わう彼なのだった。
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