第22話 討伐作戦

「マスター、Zを見つけてきましたっす」

待つこと5分程、帽子を被った少女がリュックを背負って帰って来た。そして、

「お待たせしました。マスター」

ひょこっとリュックから何処にでもいそうな少女が顔を出した。

リュックを下ろすとZと呼ばれる少女が這い出てくる。

今まで見た【ファミリー】の誰よりも背が小さく、か弱そうな少女。本当にこの少女があの巨大な生物を?

「では、作戦を発表します」

そこから、テロサスの考えた作戦が話された。

作戦はヘル、メリサ。そして、Zことジニアという少女とWことワラシニアを主に動く事、余りである彼やヘル以外の【希望の剣】のメンバー、ジニア、ワラシニア以外の【ファミリー】のメンバーは状況に応じてテロサスが命令を出し動く事が教えられた。

テロサス1人に状況把握と10人以上の指示を同時に任せるのは少し酷に思えたが

「マニュアルYは私の補助をお願いできますか?」

「あい、私たちに、任せて、くれぇ。我らがマスター様」

何処か話し方に違和感がある赤い服の少女の力により、かなり楽になったようだ。

それにしても、私?と明らかに1人の少女に疑問を持つ彼であった

作戦説明から大体3分ほど

「さて、これで討伐作戦を終えますね…あとはあの子達が帰ってくれば…噂をすれば」

森の方から2人の影が見えると、その2つの影は力を合わせ城壁を登る。

そして、

「マスター、森の調査を終えました」

何も無かったかの様に姉のモモがテロサスに報告を始めた。

「3人で森を駆け回った結果、あの黒い生き物の周辺に人や他の魔物の気配はありませんでした」

「わかりました、お疲れ様です。3人とも」

結局、3人目のキニアスリという人の姿が見えなかったのだが…ん?テロサスが森に向け手を振っている。もしかして、森の妖精や精霊と言った存在なのだろうか?

とキラキラした目でテロサスの事を見ている彼だがテロサス目線では

【ファミリー】では珍しく森に溶け込む緑の服を着て、赤いマフラー巻いている少女を広大な森の中から見つけ出し手を振っていたのだった。

少女は少し恥ずかしそうにしながら手を振り返し双方幸せそうであった。

「さて、情報も揃いましたので討伐作戦を開始します。ヘルとメリサは作戦通りお願いします」

「了解よ、マスター」「はぁ、了解」

あまり乗り気でないヘルは剣を胸の前に構えブツブツと唱えいく

赤き剣の輝きは増していき光が溢れでる

時間にして3分、彼はブツブツと何かを唱える

「…この剣の輝きは全てを救済する」

詠唱の一説だけ聞こえ、この詠唱により光は圧縮され剣は金色に輝く

「飛ばすわよ~ヘル、闇に包まれよダークボール

待っていたとばかりにメリサは唱える

2人は闇に包まれ溶けて消えた


闇が無くなり前方に黒い柱4本を確認し、ヘルの口角が上がる。

ヘルが安全に狙える位置を一瞬で把握し完璧なタイミングで送ってくれた事に、流石我が姉だと誇っているのだ。だが、それを口に出すことはない。

何故なら…

希望の剣ホーリーエッジ‼」

ヘルは姉と同じくらい自分も凄いと思っているからだ。剣を構え柱を全て破壊するよう横に振り抜く

柱は優しい光に包まれる。あの時のような熱や痛みは無く。何も感じる事なく全て無くなった。

魔力を使い果たしたヘルはその場に倒れる。

足が無くなった体はそのまま下に落ちる。

「成長したわね、ヘル」

嬉しそうなメリサはヘルの前に出て唱える。

闇に飲まれよブラックホール

闇を操り生物全てを包み込む

「やっぱり…重いわね」

10tは優に超える生物、今にも魔法が掻き消えてしまいそうだ。

だが、姉として弟に格好悪い所を見せる訳にはいかない、体を軋ませながら生物を完全に包み込み圧縮する。

そして、体を震わせながら運び元の位置から300m程離れた位置で魔法が途切れる。

「最低限の仕事はしたから…離脱ね」

息を少し切らしながらヘルを掴み

闇に包まれよダークボール

その場を離れた


ブクブクブク…ゴポッゴポッゴポッ‼︎

と言う音を立て2人が闇から出てくる。

ヘルは倒れ、メリサはとても辛そうであった

それを確認すると、すぐさま帽子を被った少女が、だら〜とした少女を抱え2人に近づく。だら〜とした少女は目を擦り眠そうにしながら2人を見て

「マスターへ報告〜、ヘルさんは魔力切れ、メリサさんは…体中の骨にヒビが入ってる〜」

とテロサスに伝えた。すると、

「マニュアルEはそのままメリサの治癒を、ヘルはマニュアルW、回復をお願いします」

とテロサスは素早く指令をだし

「了解〜」「マスターのめいとあらば」

だら〜とした少女EとWことワラシニアはすぐさま動く。

「生命の再生」「魔力伝達」

そう2人が唱えるとメリサは緑の光、ヘルは紫の光に一瞬だけ包まれる。

「悪いわね、エリャミネ」

傷が癒えたことにより少し楽になったメリサはだら〜とした少女改めエリャミネに礼を言う

エリャミネは

「マスターの命令だから良いよ〜。あっ、でももう限界かも〜」

と慣れたような感じで返し、そのままフラフラ〜と立ち上がる。

「こっちっすよー、エリャ姉」

「お〜、毛布くんじゃないか」

帽子を被った少女が柔らかそうな毛布を広げ、エリャミネを包み込む。すると、

「ZZZ…」

すぐさま幸せそうに眠りについたのだった


「マスターに報告、ヘルの魔力を満たし終わりました。そのうち目が覚めると思います」

「了解しました。では、次の作戦に移りましょう」

「はい」

ワラシニアとテロサスは移動を開始する。

【希望の剣】でも歯が立たなかった上級悪魔グレートデーモンを単独で半殺しに出来るモモとネネ、ミカより早い速度で完璧に傷を治すエリャミネ、魔力量がかなり多いヘルの魔力を簡単に回復させてしまうワラシニア…【ファミリー】を敵にしてはならないと改めて実感した彼であった。

「さて、次は…」

「マスター様、マニュアルLの、的は既に、発射してるぜ」

「分かりました。では、マニュアルWはマニュアルZの魔法準備を」

「かしこまりました」

テロサスが次々と指示を出し動く【ファミリー】、それを彼は邪魔にならないような場所で見守る。

「ワラシニア姉ちゃん、私に出来るかな?」

心配そうにワラシニアの方を見るジニア

「大丈夫ですよ、ジニア。貴方は【ファミリー】でを持っているのですから」

優しく先導するワラシニアはジニアの手を取り

「魔力接続。さぁ、ジニア合わしてください」

「う、うん」

2人は唱える。

「「世界の終焉来たれり、この力は全てを破壊し無に帰るだろう。消し飛ばせ終焉の炎インフェルノ」」

恐ろしい詠唱と共にジニアの手から放たれた豆粒程の光が真っすぐ黒い生き物へと向かって飛んでいく。

そして、一瞬キノコの様な形に燃え上がる炎が見えると光に目が開けなくなる。吹き荒れる風、耳鳴りがするほどの轟音

「あっ」

体が浮き、手が地面から離れる。そして、彼は2度目の転落を味わうのだった。

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