第19話 ファミリー

「じゃあ、お姉ちゃん。【希望の剣】の皆さんに説明終わるまで耐えててねー」

「えー、めんどくさいなぁ。帰ったら何か奢ってよー」

お姉ちゃんと呼ばれた方の少女は剣を抜き上級悪魔グレートデーモンに微笑む。その笑顔はどちらが本物の悪魔か分からないほど恐ろしいものであった。

一方、妹の方は悪魔から離れ

「【希望の剣】の皆さーん、治療するのでじっとしていてくださいね。あっ、動けるミカさんそこで死にかけてる人の治療お願いしまーす」

そうミカに指示を出すと少女はケインとセナをヘルの倒れている場所に慎重に運び、3人の体に触れる。

「ケインさんは足と腕の骨折、セナさんは顎が砕けてるのと腕の骨折、ヘルさんは内臓をやられてるのかな?」

と3人の状態を確認しカバンから赤色の液体を1本、緑色の液体を2本取り出し

「はーい、皆さん。思いっきり吸ってくださーい」

緑の液体をセナとケインに赤色の液体をヘルにふりかけた。

すると、セナとケインの骨は繋がり損傷した肉体は回復した。この回復力ならヘルの内臓も治って…

「ゴホッ‼ゴホッ‼」

激しく咳き込み血肉を吐き出す

「ヘル⁉」

ヘルが見たことない状態になり驚くセナに対し少女はヘルの背中を優しく摩りながら

「大丈夫だよ。新しい内臓が作られて邪魔になった古い内臓が吐き出されただけだから」

と冷静に説明する。原理的な方面で疑問だらけのセナだが今はその時ではないと堪える

「ふぅぅぅ、はーはー」

徐々に回復し息を整えたヘルは血を拭いながら

「…助かりました、ネネさん」

と本物か疑ってしまう程、丁寧に尊敬の念を込め礼を言う。

「大丈夫だよ。それにこれもマスターの予想通りだから」

ネネと呼ばれた少女はニコッと笑うと次は彼の方を見る

「でも、あっちはマスターも予想外だったな」

全身の骨が折れ、大量に出血し呼吸も止まっている。死んでいると言われてもおかしくない状態だった。

「まぁ、でもミカさんなら大丈夫だよね」

ミカの『聖魔法』アークにはそれを断言できる能力がある

「さて、じゃあ。ミカさんは居ないけどマスターからの伝言を伝えるよ」

ニコッと笑うとテロサスマスターの真似をしながらネネは語る

「今回の討伐対象フェルダマが契約の書を盗んだことが判明しました。その為、依頼の内容を変更と言いたいところですがフェルダマの殺害に伴い契約の書も消滅したでしょう。なので、【希望の剣】は我が愛娘達と協力し出てきた契約者を殺害もしくは撤退をしてください」

「…協力ねー。俺達、2人の邪魔になりません?」

「うーん。まぁ、邪魔にはならないかな。人手が多い事に越したことは無いし。それに、私たちだけだと心配な点も…」

「ネネー、暇ー。おっ、やっと再生したね」

遠くでズタボロになっている悪魔、正直あのモモという少女1人で何とかなりそうな状態であった。

「撤退しましょうか?」

「い、いや、あれの魔力を削る協力をしてもらえないかな。あのままだと時間がかかるし…ね?」

「まぁ、ネネさんがそう言うなら手伝いますけど…」

ヘルは諦め同意し再び剣を握り、ケイン、セナも立ち上がる。

「ケイン、セナ。お前らはミカの所へ向かってくれ、治療中で危ないからな」

ヘルはまだ戦おうとする2人に命令を出す。

正直な所、体を休めて欲しいというのがあるのだが、それを言うとヘルも巻き込まれてしまうから適当な理由を付け命令したのだった。

2人は納得しミカの方へ歩き出す。

「さて、行きましょうか」

「ええ」

少女は悪魔を処理しにモモの方へ歩き出す。それに合わせヘルも歩き出すのであった。





そして、遥か上空にて

「ふふふ、面白くなったわね。頑張ってねヘル」

そう微笑む黒き者の姿は何処か美しくも恐ろしげだった

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