第18話 悪魔
「…さて」
ヘルは少し焦っていた。敵の放つ圧倒的威圧感、今まで戦ってきた生物の誰よりも強い。流石上位種の悪魔だと簡単に頷けてしまう。ここは…あれを使うか
「ケイン、5秒で良いから奴の注意を引いてくれ」
そう言うとヘルは少し離れた位置に移動している彼の方へ向かう。
ケインはいつもより盾を持つ力を強める。
[まずは、貴方からですか」
敵はこれといった感情を持たずケインを見ていた。そして、姿が…
「おーい、ギルティ。リュックの中から赤い球を出してくれ。多分、横のポケットに入ってると思うから」
ヘルからの指示を受け、リュックを下ろし2つあるポケットに手を突っ込む。
すると、右のポケットに少しベタベタする丸いものを掴んだ。
取り出すと少し鼻に衝く匂いの赤い球が出てきた。俺は素早くその赤い球をヘルに投げ渡した。
「おう、ありがとな」
彼から受け取った球に魔力を込め空に向け思い切り投げる。すると、
ボン
という音を立て破裂し赤い煙が上がる。よし、これで…
バコッ‼
後ろから嫌な音がする。後ろを振り返るとケインの盾から煙が出ていた。
まずい状況を感じ取ったヘルは先程とは比べ物にならない程の速度で走り出した。そして、入れ替わるようにセナが彼の下へやって来たのだった。
「くそ」
[ほう]
反射的に盾を出したのは良いものの圧倒的な速度と力で放たれた拳は鉄製の盾を凹ませたのだった。
上手く構えれば流し攻撃を返せた攻撃だった、とケインは悔しがるケイン。一方、
まぁ、二度目は防げまいと腕を盾から引き抜き先程よりも速く拳を…
「
と声が聞こえるとケインの前に熱の柱が燃え上がる。
ケインと
「ケインさん、お怪我はありませんか?」
「あぁ、問題ない」
後ろに下がると直ぐにミカがケインに近づき怪我をしていないかの確認をする。
「ケイン、まだ戦えるか?」
「勿論、次は全部防ぎきる」
ケインの即答に了解を得たヘルは剣を地面から引き抜き
「ケイン、これ」
「あぁ、ありがとうな。セナ」
セナがリュックから予備の盾を持ってきてくれたのでお気に入りだった盾を捨て一回り小さな盾を身に付ける。
「さぁ、お前ら全力で耐えきるぞ」
全員が再び武器を構えて敵を睨みつける。
[剣をお持ちの貴方、魔力の多さが見事ですね]
溶けて無くなった半身を治しながら敵は笑っていた。
「嫌味な化け物だな」
[ふふふ]
魔力の塊のような生物に魔力を褒められて嬉しい人間はいない
「ケイン、セナ、は奴に攻撃をミカは2人の援護を頼む」
「あぁ」「分かったわ」「分かりました」
適当な作戦と言えど4人はチームだ、心から信じあい何をするべきか互いに分かっている。指示を受けた3人は動き始める。
[盾の貴方は足腰が強く。容易く私の攻撃を止めてしまう]
ガッ‼ゴッ‼ゴッ‼
[素手の貴方は盾の彼よりも目が良く私の動きも見えており、攻撃も痛いものばかりです]
ドゴッ‼ダダダッ‼
[ムム、2人の速度が少し上がりましたね。それは杖の貴方のせいですか。厄介なものですね]
ペラペラと喋っている化け物はケインに攻撃を止められ、セナに攻撃を避けられてもその愉悦に浸った表情をやめない
「十字架」
[そして、敵にこれといった攻撃を与えられないときに全てを焼き尽くす攻撃を剣をお持ちの貴方が行うのですね]
ジュゥゥゥ…‼
十字に交わった光の刃が化け物の細胞を焼き切り裂いて行く。
だが、化け物は満足そうな笑みをやめず
[ですが、たったこれっぽっちの事なのです]
と全ての傷を修復しその場に立っていた。
「頑丈でほぼ無限の魔力での回復…勝てる未来がねぇな」
相手の体と魔力を同時消滅させる火力は今の俺達には無い
[えぇ、貴方たちは私には勝てません人ですから]
ニコッと笑うと姿が消える。そして、
[人であるが故に筋力に限界があり]
ドッ‼「ぐっ‼」
[防げない攻撃が存在します]
ケインに更に速く強い拳が襲い吹っ飛ばされる。
[人であるが故に速さに限界があり]
ゴッ‼「ッ‼」
[目で追えない攻撃が存在します]
セナに見えない攻撃が襲い吹っ飛ばされる。
[人であるが故に魔法に限界があり]
ズゥゥゥ…‼「カハッ‼」
[詠唱無しで行える攻撃が存在します]
黒い魔法球がヘルの腹部に発生し吹っ飛ばされる。
[人が足掻く術として生み出された魔法、強化魔法や回復魔法は…]
「に、げろ。ミカァ‼」
[我々悪魔にとってとても不愉快な物です]
チームの中で一番脆いミカにあの攻撃はまずい。どうにか防ぐ手段は…
[さぁ、終わりにしましょう]
化け物が拳を構える。ミカがどう逃げようと関係ない速度で追いつき攻撃される。つまり、詰んでいるのだ。そして、化け物は拳を…
ゴッ‼
[ん?]
ガッ‼
振り下ろす前に受けた横からの弱い攻撃
だが、不愉快に感じて反射的に殴ってしまった。
地面に転がるフライパン、化け物に吹っ飛ばされたのは紛れもない彼の姿があった。
勇気を振り絞り確実に当てれる時を狙ったフライパンでの殴打、結果的に大ダメージを負ったのは彼であれ時間は数秒稼ぎミカを守った。
[はぁ、何処から来たのか知りませんがハエは駆除しないとですね]
化け物は彼に腕を向ける、黒い球を生成し発射する。
回避は出来ない、そもそも化け物の攻撃を受けて生きているかどうかさえ分からない。
あと5秒もしない内に彼に黒い球が…
「お姉ちゃんショット‼︎」
ザクッ‼︎シュゥーン
何処からともなく人間が飛んできて化け物の腕を切断する。
すると、黒い球は消滅し彼への直撃は免れた。
[次から次へと…何者です。貴方達]
次々と邪魔が入り少し苛立ちを見せる。
それに臆することなく2人の少女は堂々と名乗る。
「モモと」「ネネだよ」
赤い服を纏い水色の髪の姉妹は銀に輝く剣を持ち化け物に余裕を見せる
「「私達2人はマスターの命令を受け、お前を懲らしめにきた【ファミリー】だ」」
キラキラと輝く少女達の目には殺意が宿っていた。
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