第17話 光魔法
「ヘルゥゥゥお前を絶対に殺してやるぅ…‼︎」
フェルダマはブツブツと何かを唱え腕を振り上げる。魔法陣が弾け拡散し、森の方から新たに2頭のウェアルフが現れた。
「殺す、殺す、殺す、殺してやる…‼︎」
同じ言葉を吐きながら再びブツブツと唱え、再び魔法陣が弾ける。
[グルゥゥゥゥ‼]
命令されたようにウェアルフ2体が動き出した。
…あれ、これは俺も危ないのでは?とりあえず逃げる準備を…
「ケイン、セナ30秒ほど抑えといてくれ」
「あいよ」「はーい」
2人はヘルの声に応じ前に走り出しと思ったら姿が消え
ガンッ‼︎ゴッ‼︎
と音共に2頭のウェアルフは停止し、倒れた。
よく見えなかったが恐らくケインは盾で上から頭を殴りつけ、セナは横から頭を殴ったんだろう。
「ヘルあとは任せたよ」
そうセナが言うと2人はその場を急いで離脱する。
そして、ヘルは
「…我が力は光、闇を引き裂き全てを浄化する」
両手で剣をしっかり握りどんどんと唱えていく。魔法陣が次々に現れ赤き剣に結びつく。
「
ヘルが唱えると剣から赤い光が溢れ出す。
一気に周りの温度が上昇し、目も開けれないほどの光が辺りを包む。
ヘルは剣を持ち上げ一気に振り下ろす。
…ジュュュュュゥゥゥ‼︎
剣から出た光に触れるものは全て溶けて無くなる。草木や石、防御を固めた人さえも簡単に
シュゥゥゥ―――
熱が下がると同時に、光が収まっていく。
完全に光が無くなったのを感じた彼はゆっくりと目を開ける。そして、広がるその光景に目を見開く。
ヘルより先に一本の道が出来たが如く真っ直ぐに、そこに木などがあっただろうと思わせる黒い痕のみがそこに残っていた
「凄いですよね」
いつの間にか隣にいたミカが彼に声を掛ける。
彼は答えようと言葉を振り絞るが
「…はい、とても」
と二言だけしか発せれなかった。それほどに衝撃の強い光景だったのだ。
「あれは、ヘルの膨大な魔力があってこそのものなんです」
彼のことなど気にもせずミカは喋り続ける。その表情は段々とうっとりしていき
「あれが、
と語った。
これ程の規模の魔法を放てて
「ふぅ〜」
魔法を打ち切ったヘルは深く息を吐き一気に吸う。一気に魔力を出しすぎたせいか少し体が重い。だが、休んでいる暇はない、と剣を担ぎ歩きだす。
「あ、あぅぅ、あぁぁぁぁ‼」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い…‼
1人の青年は地面に倒れもがいていた。膝から先が溶けて無くなり熱さよりも痛みが体を駆け回る。歯を食いしばり、ガリガリと地面を掻く。
「やっぱり、生きてやがったか」
青年にとって忌々しい声が聞こえてくる。
「ヘ、ヘルゥゥゥ」
歯が砕けそうな程、食いしばり奴を睨む。だが、青年には何もすることが出来ない。
「苦しまないように一撃で仕留めてやりたかったんだがな」
声から何も感じられない、感情を全て捨て去った人形のようだった。
「まぁ、良いか」
ヘルは小さなナイフを取り出し首に向け振り下ろした。息絶える前の一瞬青年が笑った様に見えた。
ヘルはそんな事を気にせずその場を立ち去る。
「おーい、お前ら全部終わったぞー」
ヘルを抜いた3人と話しながら待っているとヘルが焦げた森の方から手を振り歩いてくる。どうやら依頼は完了したようだった。
【希望の剣】が全員揃いワイワイとした空気が流れる。だが、
「そういえば、ヘルさん。今回の被害修復費、払えるんですか?」
とミカが口を開く。一気に空気が歪み、ヘルから汗が溢れる。セナとケインも全てを知っているのか可哀そうなものを見る目でヘルを見ていた。
「被害修復費?」
理解していない彼にケインが解説を始める。
「冒険者が自然に影響を及ぼした時に発生する罰金だ。今回森の一部を焼き切ったからな罰金は免れないだろう」
あぁ、と納得した彼は黒焦げた森を見る。これを全部修復するのは一体いくらかかるんだろうか。
「だ、大丈夫さ何とかして見せる…」
と言葉では明るそうだが遠い目をしているヘル。周りの人は何も声を掛けれず顔を逸らすのだった。
もう少し森で籠ろうとヘルの提案は拒否され皆は帰りの準備をする。全ての荷物を集め、俺は荷物持ちとして荷物を担ぎ
キィ――――ン‼
と耳を刺すような高音が森に響き渡る。
「何事だ?」
とケインが周りをキョロキョロと見渡す。彼も彼なりに探してみるが、何も見当たらない。どうやらケインも見つけれない様だ。つまり、近くには何もいな
「ヘル…あれ」
とセナが空に向け指を指す。そこには黒い魔法陣が広がっていた。
「まずいな」
ヘルがボソッと呟く。何か知っていそうだが聞く暇もなくスタスタと歩き始める。
「お前ら、急いで協会に戻るぞ」
その声に応じ皆は素早く歩き始める。ヘルの表情は真剣で何処か焦っている様にも感じれた。
ドッ‼
後ろで何かが爆発した。ヘルが一瞬だけ振り返り何かを確認したのか足を止め剣を抜く。そして、何かに合わせるように剣を振り下ろした。
カンッ‼
という音共に黒い何かが停止する。そして、ヘルは
「フン‼」
と押し返した。そうして、何かの詳細がようやく分かって来た。
黒き体と羽、ねじれた角を持った人型の生物。物凄い威圧感を放つこの生物は…
「
とヘルは冷や汗をかきながら敵を眺める。
[契約に基づきまずは君たちを殺させてもらおう]
と敵が発言したことにより彼を省いた4人が武器を構え、新たな戦いが開始された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます