第16話 フェルダマとギルティ
「俺達は君をフェルダマを呼び出すための餌として雇ったんだ」
「…殴ってもいいですか?」
少しイラっとし近くにいたセナに暴力の許可を貰う
「いいわよ」
軽く許可を貰えたので右の拳に力を込め顔に狙いを定める。
「待て待てまずは経緯をだな…というかセナはこの作戦に同意してただろう‼」
ヘルは何とか彼を落ち着かせ話を続ける。
「テロサスさん直々に依頼を受けたと教えたよな?そこから、俺たちはフェルダマを探す方法を考えたんだ。そして、その1つが人を雇う事だったんだ」
荷物持ちは俺を入れる為に口実として…
「…何故そんな事になったんです」
「それはな、フェルダマは1度、俺たちのチームに入れろと申し込み、俺が断った男だからだ」
ヘルのチーム【希望の剣】は特殊チームの【ファミリー】を除いて入りずらいチームの1つであった。だが、フェルダマはそれを知ったうえで加入を申し込んだ。そして、見事に断られたのだった。
「…つまり、フェルダマさんから見れば冒険者になったばかりで大した戦果も挙げてない奴がいきなりヘルさん達のチームに入った事になりますよね」
「あぁ、そうだな。しかも、俺に気に入られて入った事になってるしな」
…ん?
「そこまではフェルダマさんも知らないのでは?」
「いや、君と別れて1週間の間にジャレンカ王国中に広めておいたから。あいつの耳にも確実に入っているはずだ」
「…え?」
聞きたくなかった真実が彼を襲う。だが、すぐに立ち直りケインに近づく
「…ケインさん」
「…なんだ」
「包丁貸してもらえますか」
彼が取る行動は今すぐケインを刺し殺してこの場を去る事。そうすれば、仲間割れを起こしたと判断され少なくとも自分が狙われることは無くなるはずだと。そう言う計算であったが。
「駄目だ」
とバッサリ断られる。流石に駄目だったか、と考えていると
「ヘルの血が付いた包丁で料理なんかしたら料理が腐っちまう…使うならこのナイフで…」
と小さなナイフを取り出した。彼はそれを受け取ろうとしたが
「待て待て待て‼」
少しだけ汗を掻き焦ったヘルに止められた。ケインが冗談だと笑いながらナイフを引っ込めたが彼は残念そうに引っ込められたナイフを見ていたのだった。
「大丈夫だよ、ギルティ」
全ての行動が終わるまでのんびりと見ていたセナが今回の作戦の安全性を彼に伝える。
「ギルティが私たちのチームに入った事よりも怒るような事を今日あいつは見っちゃったから」
「?」
不思議そうにしている彼にヘルが追加で情報を入れる。
「フェルダマが俺たちのチームに入ろうとしたのはな。ミカに惚れてたからなんだよ」
ミカに惚れてた人が見たらいけない…あっ、ヘルとミカの添い寝か‼︎と思い出す。
そして、ミカが語り出す。
「人から好意を受け取るのは嬉しかったのですが…
と言ったところで体が震えている。あれは…
「ミカ、無理矢理思い出さないで」
体が震え始めたミカをセナが優しく抱きしめる。すると、どんどんと呼吸は落ち着き体の震えが収まってくる。
「…ふぅ…ありがとうございます。セナさん」
「大丈夫よ。気にしないで」
ミカの事を手慣れているセナに任せるとしてヘルとケイン、俺の3人で話すことにした。
「ミカさんは…男性にトラウマを持ってますよね?」
色々と引っかかりがあるが、あの状態は一時期の俺に似ている。
才能が無い事によって暴力を毎日の様に…行われ。メジカ婆ちゃんさえも…信じられなく…これ以上思い出すのは止めておこう。
「あぁ、そうだ」
そして、ヘルはミカの過去について話始めた
「ミカは俺たちが盗賊の住処を壊滅させたときに見つけて連れ帰ったんだ」
ミカの見つかった時の姿は酷いものだった。殴られ蹴られの痕がくっきりと残っており死の一歩手前の様な状態だった。
連れ帰った後もしばらくは悲惨だった。回復魔法を受けさせ、目を覚ますまで全員で待った。目を覚ますと自分の才能と名前だけしか覚えていないような状態。しかも、夜になり眠りにつくと完治したはずの傷を抑え痛い痛いって泣くんだ。その度に、セナが抱き寄せてた。俺たちが触れようものなら絶叫してたくらいだ。
「まぁ、今は頑張れば俺たちにも触れれるぐらいにはなったんだがな」
そして、ヘルの声が少し変わる。
「そして、あいつはそれを聞こうともせずに…」
溢れだす怒りの感情、いつものヘルとはかなり印象を変える。
恐らくミカに触れようとしたフェルダマをヘルが半殺しにしたのだろう。
「ヘルー‼」
「おっと、あいつが現れたようだ」
セナの叫びを聞きヘルはいつもの調子に戻る。ケインは盾をヘルは赤い剣を持ちセナの下へ向かう。一応彼も向かった。
[グルルルル…‼]
倒れた木の上に立つ赤い毛並み、鋭い牙と爪を持った狼。あれがウェアルフ…‼そして、その上に人影が見える
「よお、フェルダマ。久し振りじゃないか」
その上の人間に向かって嘲笑うかのように話しかける。
「ヘルゥゥゥ‼」
そして、ブチ切れているフェルダマが物凄い形相でヘルを睨んでいたのだった。
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