第15話 食事。そして、

ずっと3人の過去話が続いてたからね、簡単におさらいしよっか。

ヘルが組織するチーム【希望の剣】に荷物運びとして雇われたギルティ。依頼初日の朝早く頑張ろうと決意していたがリーダーのヘルとメンバーのミカのやる気が無く。早くも休憩をすることにした。ケインは朝食作り、ヘルとミカは睡眠、ギルティはセナの話を聞いていた。そして、セナの話は終わりギルティの物語はようやく先に進むのだった。

「ミカ、起きて」

とセナはミカを揺らす。

「ん?ふぁーい」

眠たげなミカは目を擦りながら体を起こし、のそのそと立ち上がる。そして、次に

「ヘル、起きろ‼」ドゴッ

「ごへっ‼」

セナが全体重を乗せヘルの無防備なお腹を踏みつける。苦しむヘル、いつも通りだなのケイン、欠伸をしているミカ。この光景が通常なのかと彼は驚く

「だ、大丈夫ですか。ヘルさん」

俺はガクガクと痙攣するヘルに声を掛ける。

「お、おう…」

死ぬ直前の様な声を出すヘル

「大丈夫よ、このぐらいしないと起きれないんだから」

そんな、鬼畜な事を言うセナ…とその後ろ大きく頷いているケイン。彼は全て納得しこれ以上考えるのを辞めた。

何とか復帰したヘルを連れて鍋を囲う。皆が席に着くとケインは手慣れた様にスープを注ぎ配る。そして、ヘルに渡すときに

「どうだヘル。俺も腕を上げただろう?」

と嬉しそうに言う。それに、ヘルは

「何言ってんだ。野菜と肉を切って煮込んだだけだろう?」

と呆れた様子でいる。ため息をつき誰よりも先に一口食べる。

「…あの頃に比べれば野菜も柔らかくて美味いぞ」

と評価した。それは高いのか分からない評価だが

「よし‼︎」

ケインにとっては良いもののようだ。

「さぁ、お前らもどんどん食べてくれ」

上機嫌なケインは笑顔でスープを振る舞う。まだ、残ってるから待てと怒るセナや人参の先端の方が欲しいミカなど彼にとって久しぶりの楽しく温かい食事であった。


「ふぅ、食った食った」

鍋の中はすっかり空になり5人のお腹は膨れる。

「…さて、…」

というとゴロンと寝転がり目を閉じる。そして、ぶつぶつと何かを言っている。

「ヘラさん何を言って…」

彼がヘルの言っていることに聞こうと近づこうとするとケインに止められる。

ヘルは自身の剣を握る、赤き剣身は白く輝きだした。体を勢いよく起こすと

「三日月」

と唱え剣を振るう。剣の通る軌跡をもとに形成された光はその名の通り三日月形になり。森の方向へ真っすぐ飛んでいく。

とても綺麗な魔法に俺の目は吸い寄せられる

「どうよ、俺の絶妙な魔力コントロールを元に作った魔法、三日月は?」

光は木々を貫通し見えなくなる。

「凄く…綺麗です」

それしか言えない彼、今まで見た魔法の数は少ないが、そう断定できる。…もっと、沢山飛ばしたら綺麗だと思ってしまったのは秘密だ。

「…でも、どうしていきなり魔法を?」

魔法の綺麗さで忘れそうになるが、全ての行動を見るとご飯を食べた終わった後にいきなり森に向けて魔法撃った変な人の出来上がりである。

俺の疑問を受け取ったヘルはクックックと笑い。

「君にはそろそろ本当の事を話すとしよう」

と悪い顔をする。ケインの方を見るとその表情が読み取れず、ミカは物凄く申し訳なさそうな顔をしている。そして、セナは

ベシッとヘルの頭にチョップをお見舞いし

「格好つけてんじゃないわよ」

悶えるヘルを置き、両手を合わせ謝罪をする。

「ごめんね、ギルティ。私たち実はね、森の調査に来たわけじゃないの」

そして、セナは説明を始める。

「私たちが受けている本当の依頼は才能を使いウェアルフを暴れさせジャレンカ王国に被害を出している元冒険者フェルダマの

三日月が通った木々が倒れる。

「…どうして俺に嘘の依頼内容を?それに、どうしてそんな依頼を受けているんですか?」

嘘をつかれた事と殺人の依頼を受けている事を受け入れられず頭がごちゃごちゃする。

この質問にはヘルが口を開いた。

「1つ目の答えは君が適任が故、何としても連れて行きたからだ」

確かに最初から殺しの依頼だと聞いていたら俺はヘルの言葉を聞かずに逃げていただろう。例え、それが戦いに参戦しなくて良いと言われていてもだ。

「2つ目の答えはテロサスさんから直々に依頼があったからだ」

「テロサスさんから?」

「あぁ、少し討伐対象と因縁を持っていてな。適任ってことで選ばれたんだ」

大体分かってきたが1つだけ気になる事がある

「…俺が荷物持ちとして雇われたのは何故です?」

適任云々は言われたが荷物持ちの適任など意味の分からぬもの。ヘルは少し小さな声で

「…教えても怒らないでくれよ」

と呟いた後、話始めた。


この時、彼らより少し離れた位置で木が砕ける音がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る