2章 冒険の始まり

  チャプター II

再び目の前にアナログテレビが現れた。

そして、いつも通りテレビ以外何もない真っ白な空間だ。

特に見るものが無い為、感情もなくただ真っ暗なテレビの画面を眺め続ける。

ザーーーー

急にテレビの画面が明るくなり砂嵐が流れ始めた。きっと、あいつが来たのだろう。そう確信していると

「やぁ、皆さん」

と聞いた事のある女性の声が聞こえてきた。

彼女は玉座に座りこちらを見ていた。

「僕が作った新しい世界ものがたりは面白いかな?」

彼女が作った世界は皆が才能を持っている世界だったか。それにしても、面白いとは誰に言っているのだろうか?

「僕も1人の傍観者として世界を眺めているんだけど…まだ、面白くないよね」

被っているシルクハットを外し膝の上に置く。そして、薄緑色の髪を整えながら続ける。

「まだ出来たばかりの世界ものがたりで何を期待してるのかという話になるんだが、どうにも…彼がね」

と苦笑いをしている。すぐに表情を戻し

「彼は僕の作った世界で唯一の無能。つまり、この世界の主人公になりえる存在さ。でも、普通に考えれば能力の無い人間が主人公になんてなれないだろう?」

何のことか分からないが彼女は意気揚々と語る。

「彼に優しい叔母は死に彼は精神的に追い詰められ追うように死ぬ。本当ならこうなるはずだったんだけど…あの世界の補正うらないが良いように働いてしまったようだね」

少し残念そうに語っているがその考えは正に狂人そのもの。これが神というものなのだろうか?再び表情を戻した彼女は語る。

「まぁ、でも大丈夫さ。この先、彼の補正うらないはもう効果切れなのだから」

フフと笑うその姿は本当に楽しそうだ。

補正うらないの力を失った無能の彼はこの後どれ程まで生き残れるのかな?あぁ、この先が待ちきれないよ」

彼女はシルクハットを被りなおし立ち上がる。

「さぁ、次の段階にいこう。才能の無い彼の物語の次の段階に。さぁ、数ある国の1つジャレンカ王国で彼はどうなるのか。さぁ、続きを見に行こう」

彼女は指を鳴らし、テレビが消える。そして、全てが再び暗く闇の中に落ちて行った。

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