第13話 冒険の始まり
森に入って1時間程は楽しかった。
ヘルやミカが元気かつ楽しそうに定番の話題をポンポンと喋ってくれたからだ。だが、今は
「うー、暑いよー」
とミカ
「退屈だー」
とヘル
2人の歩く速度もどんどんと落ちていき今では俺よりも後ろを歩いている2人。本当に大丈夫だろうかと心配になってしまう。そこに、
「もー、2人とも。シャキッとしてよ」
とセナが軽く怒る。それに対してヘルが
「しょうがないだろセナ、この暑さでミカはやられてるし、魔物が出なさすぎて木しか見るものはないし…ふわぁー、早起きしたってのに退屈なんだよ」
とあくびをして眠そうであった。セナは呆れたのか納得したのか溜め息をついた後、何も言わなくてなってしまった。
それからしばらく
「…」
「ふぅふぅ」
完全に静まり返り聞こえてくるのはミカの軽い息切れのみだった。
そして、またしばらく
「…ケインそろそろ休憩入れるぞ」
とヘルが口を開いた。だが、この周りは視界が悪く休憩するには少し危険な気がするんだが…と俺が考えていると。
「わかった。なら…」
と言うとケインは耳に手を当てじっとする。そんなケインを皆は息を殺しその場に止まる。俺もその状況に習い必死に息をころす。少しして
「こっちだ、行くぞ」
とケインが道を外れて歩き出すので、俺たちもその後ろをついていく。
ガサガサガサ、ガサガサガサ
先程の静かな時と違い草を掻き分ける音がずっと聞こえる。
そして、進む事5分もしないうちに周りから草木がなくなり景色が広がる
「ほら、着いたぞ」
ケインが音を聞き見つけたのは綺麗な川であった。
視界も通り、料理をする際に火に関して気にする必要のない場所。メンバーが各自好きなところに腰を下ろし始めたので俺も直ぐに動ける状態にしながら腰をおろした。
「今日はこの辺で泊まるからリュックを下ろしてくれて構わないよ」
と俺の窮屈そうな座り方が目に入ったヘルが声をかけてくれる。俺もそれに甘え完全にリュックを地面に置いた。すると、一気に体が軽くなり、背中に羽が生えたようだった。…それにしても、まだ時間帯的には昼ぐらい。森の調査を行わなくて良いのだろうかとふと疑問に思ってしまう。が、いや、きっと、ヘルにも考えがあるはずと期待をしながら彼の方に目線をやるすると、コクコクと頭が揺れている。あぁ、駄目だ。めちゃくちゃ眠そうだ。
諦めた彼をよそにヘルは立ち上がりケインに近づく。そして、
「ふわぁー、ケイン。昼飯の準備を頼んでいいか。俺は少し寝る」
と報告し
「はいよ」
と慣れたように返事をしていた。そして、次に俺の方へ近づいてきて
「ギルティ君、リュックの1番上に枕が入ってるから出してくれないか」
と言われる。その後ろでケインが
「ついでに鍋とフライパンと食料も頼む」
と言われた。返事をし中から色々と取り出した。
キャベツ、人参、枕、フライパン、鍋、ソーセージ、ケインから指定された茶色くて小さい塊、最後にパン。
各々に物品を渡すとヘルは大きめの石の上に枕を置き直ぐに寝息を立て始めた。ケインは慣れた手つきで火を起こし料理を始めた。それを眺める事しか出来ない彼は何かをしようとケインに声を掛ける。
「ケインさん、俺に何か手伝えることはありますか?」
だが、彼の行動も空しく
「…いや、1人が慣れてるんだ。ありがとうな」
と断られてしまった。彼は何も出来ることが無くなり荷物の近くに座って空を眺めるしかなかったのだった。
そうして、空を眺め自分の世界に入ろうとした時、ザッザッザと誰かが近づいて来る音が聞こえる。視界を落とし、誰かを確認する。
「…どうかしましたかセナさん」
「いやぁ、ミカが寝ちゃって退屈になっちゃたんだ。少し、話さない?」
と少し気まずそうに笑っていた。
辺りをキョロキョロと見回すとミカはヘルのお腹を枕にして眠っている。
彼は少しクスっと笑い
「俺なんかで良ければ」
とセナの誘いを受け入れる。セナは
「やった」
とガッツポーズをしながら彼の隣に座った。
…だが、セナが横に座ったのは良いものの何処まで踏み込んで良いものか分からず少し悩んでいた。彼はその空気感に耐えられず、とある質問を思いついた。それは、
「ヘルさんやケインさんについて教えてくれませんか?」
幼馴染として話しやすそうな内容である。彼は良い質問をしたと心の中で微笑んでいると。セナは少し照れながら
「えぇ、ヘルについてか」
と顔に手を当て体を横に揺らしながら喋る。
「いや、ケインさんについても…」
質問の路線が変わってしまっているので訂正をしたかったがセナは聞く耳を持たず、そのまま話を始めた。彼は諦め、まぁ、話しているうちに聞けるだろうと思い黙って聞くことにした。
そこは小さな村だった。決して貧乏でもなく、それでいて裕福でもない本当に普通の村。私達はそんな所で育った。そして、
「先に言っとくとね。私は最初、ヘルの事が大嫌いだった」
昔の苦い記憶を思い出すように語る。
時遡る事、約18年前
この世界に新たな人間が3人誕生した。名をヘル、セナ、ケインという。
1番目に産まれたヘルには光魔法の才能が与えられた。
2番目に産まれたセナには拳術の才能が与えられた。
3番目に産まれたケインには盾術の才能が与えられた。
そして、彼らが生まれ8年の間、セナは父親と拳術稽古の毎日、ケインは盾を持つための筋力トレーニング、ヘルは…いつも暗くなるまで森で何かをしていた。
私たちの最初の関係はただ近い日に産まれた知り合い、ほとんど赤の他人だった。
そんなある日、稽古が終わった後にさ、お父さんから言われたんだよね。
「新たな訓練として子供同士チームを組み森で1週間生き抜け」
てね。普通さ8歳の子供達にそんな事言う?まともなサバイバル技術もない。それに、ヘルの光魔法なんて洞窟や夜以外に役にも立たない非戦闘魔法だと思ってたからさ正直、私の負担が大きくてやりたくないな、て思ってたんだよね。
だけど、結局父親には逆らえなくてさ嫌々参加する事になっちゃったのよね。
と
その時のセナに何があったのだろうと彼は、おとぎ話を聞いている子供のように続きを話始めるのを待つ
それじゃあ、見せてもらもうか
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