第9話 冒険者としての1日
北口から外に出ると辺りに草木が生い茂る。
これぞ森の定番といったところか?
「さぁ、早速探し始めるか」
彼はそう言うと壁沿いにガサガサと草を掻き分け森に入っていった。
マナペントから学んだアズナ草の見つけ方
1.葉の先端が3つに分かれている
2.根本が他の植物に比べ黄色い
後はその辺を簡単に見渡せば雑草の様に生えているので刈り取りましょう
注意点
根には毒があるので採取しない事(放置していてもそこから再び生えてくる)
よく似た草で根本が黄緑の草があるが偽物なので気を付けよう
この教えを元に彼は体勢を低くしガサガサと草を掻き分ける進む。すると、
「お、早速あった」
と彼が草の根本を小さなナイフで切りアズナ草を採取する。一度草から顔を出し採取した草がきちんと本物か見る、彼が手に持つのは先端が三つに分かれ根本の黄色い草。間違いなくアズナ草であった。
「さぁ、この調子でどんどん採るぞー」
彼はアズナ草を袋にしまい次を求めてまた体勢を低くしたのだった。
それから2時間程アズナ草を探し、手元が見えづらくなってきたので彼は帰る為に上半身を起こす。
「あぁ、腰が痛い..」
と曲がった腰をさすり、ん、んーと腰をじんわり伸ばす。パキ、パキパキという腰からの音は何処か心地よく、働いたと感じる事ができる。
「さぁ、帰ろう」
彼はそう言うとアズナ草の入った袋を抱え再び壁を触り、北口を目指し歩き始めた。
そして、彼は不思議な事に何事も無く北口に戻れた。
この日のアズナ草の収穫は3キロ(金貨3枚分)だった。俺より先に森に入ったあの少女は俺より後に冒険者協会に戻り、5種類の薬草を5キロずつ収穫してきていた。全てにおいて敗北していた。そして、やはり俺は『無能』なのだと再認識しながら冒険者協会を後にしたのだった。
今日1日分の収入は金貨3枚
今日1日の支出
道具(袋 小さなナイフ)金貨1枚 宿(1泊)金貨1枚 食料(銀貨50枚{金貨半枚})
現在の所持金 金貨10枚、銀貨50枚
辺りは暗くなり彼は、宿屋のそこそこフカフカのベットのに寝転び外を眺めていた。パンを食べスープを飲み、体もほどよく疲れている。このまま横になればすぐに眠れるほどの状態であった。だが、彼は目を開け窓の外を眺めている。
眠れない原因は何だろう、自分が『無能』だということを再認識したからか?久しぶりに1人になったからか?
今の彼には理解する事は出来ない。マイナスの方面でしか物事を見られない彼には…
何もせず外を眺める事、2時間。疲れが溜まっていたおかげか彼は段々と目が閉じていき眠りの世界に入っていく。そして、数分もしないうちに寝息をたてはじめた。そんな彼の寝顔は何処か寂しそうで…何かに怯えているようにも感じ取れるそんな寝顔であった。
彼の1日はこれで終わり…平凡で面白みのない1日が
だが、安心してくれ、眠りに入った彼の体感5分程で朝日が昇る。彼の面白くなるかもしれない新たな1日はすぐに始まるのだ。
日の光が目に入りパッと目が覚める。外が明るい俺はいつのまにか眠ってしまっていたようだ。
彼は上半身を起こし硬くなった背筋を伸ばす。ベットから降りる。トボトボと洗面所まで歩いて行き顔を洗う。それにより、先ほどよりも意識が鮮明となった。肺から思い切り空気を貯め一気に吐き出す。
「はぁー…よし、今日も頑張るぞ」
何処に行くべきかまだ分かっていないが俺は今日も生きる為、お金を稼ぎに行く。
そう決意した彼は着替え、宿屋を後にしたのだった。
宿から歩く事、15分
俺は特に買うものも無いため冒険者協会に直接向かった。今日はどんな採取の依頼を受けよう。
彼の頭は草でいっぱいであり、興奮からか足取りも軽く見えた。
そして、冒険者協会に入ろうとした時、後ろから俺の手を掴む人間。何事かと後ろを振り向くと、剣を持った金髪の青年にガッチリと手を掴まれていた。
「あ、あのう。なんですか?」
彼は少しビクビクしながら青年との会話を試みると
「…君、俺のチームに来てくれないか?」
と意味の分からぬ事を言い出したのであった。
彼は
「…はい?」
理解が追いついていないようであった。彼のそんな表情を見て、青年は
「君から何か面白みを感じる、ぜひ俺らのチーム【希望の剣】に手を貸してくれ」
と熱烈な誘いから彼の今日という日は始まったのだった。
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