第10話 チーム
結局の所、俺は彼の誘いを断った。彼には、ジャレンカ王国にずっといない事や戦闘経験が全くない事を告げた。…実際は才能が無いのが原因なのだが
だが、彼は俺の言葉を聞かず
「いいからいいから」
と俺の手を引っ張り無理矢理何処かに走り出したのだった。
そして、そんな青年に連れていかれる事30秒程俺は小さな家に連れてこられた。そして、中に入り、彼は叫ぶ。
「おーい、皆。面白そうな人間を見つけてきたぞ」
どうやら彼は青年のチーム【希望の剣】とやらに連れていかれたようだった。そして、
「「「はぁ、また(です)か」」」
彼はあまり歓迎される様子では無く、3人が呆れかえっていた
「…あまり俺歓迎されてないような」
口に出さなくても良い事を喋る彼にたいし青年は笑顔で
「そんな事は無いさ。なぁ、ケイン」
と元気よく喋りかける。すると、青年より背が大きく、顔から青年より明らかに年上で盾を持った男が
「あぁ、確かに俺らは新しい仲間を歓迎してない訳では無いんだ。ただ…」
少し黙り顔を手で覆う。そして、
「この馬鹿野郎が面白そうと勘で言った後は大体その後、不吉な事が起こるんだよ」
と溜息まじりに言った。それに青年は
「不吉ってなんだよ。不吉って」
と軽く怒っていたが盾の男…ケインの後ろにいる杖を持った白髪の女性が
「一か月前、面白そうだと言って受けた依頼の難易度が私たちが行った後に、一気に跳ね上げられ私たち死にかけましたよね?」
と青年より少し雰囲気が怖くなりながら喋り始める。青年はそれを感じ取り少し小さくなる。そして、追い打ちの様に何も持っていない赤髪の女性が
「それより前にも野営中に面白そうな遺跡があったって言われて見に行って見るとジャイアントアントの巣で襲われたこともあったわね」
「ぐっ」
まるで、みぞおちを殴られたように膝から崩れ落ちる青年。だが、俺の手は離さない。
「それについ先日も空を眺めながら面白い予感がーって言った後、ロックバードが飛んできたよな」
「ぐはっ」
更なる追い打ちに彼は完全に落ち込んでしまった。しかし、彼は何かを思い出しゆっくりと立ち上がる。
「でも、今回は簡単にやられんぞ」
その姿はまるで悪役、それも諦めの悪いタイプの。そして、彼はメンバーに問う。
「お前ら…今度の依頼どうする気だ?」
「「「ぐっ‼︎」」」
メンバー全員に青年と同じぐらいのダメージが入った。
「今度の依頼ってなんです?」
唯一精神が無傷で何も知らずこの場にいる彼は問う。その問いに元気になってきた青年は
「そう言えば君には説明してなかったね」
そう笑顔で答える
「説明せずに連れてきたのかよ」
それに盾の男がツッコミを入れるが
「オホン、オホン‼」
と全力の咳き込みごまかしをし語りを再開した。
「まず、俺たちが今度受けようとしている依頼はジャレンカ王国周辺の調査及びウェアルフが狂暴化した原因を探す事だ」
受付嬢が言っていたな、最近狂暴化した狼の魔物、元は癒しと言われる程の可愛い生物だったらしいが
「原因ですか?」
「あぁ、他のチームからの目撃情報があったんだ。誰かがウェアルフに魔法をかけているのを見たというな。だから、俺たちは森に一週間程籠り、それを調査するって訳なんだ」
依頼の内容は大体わかった。だがしかし、
「…それと俺が雇われるのに何の関係があるんですか?」
「君には我々の荷物持ちとしてついてきて欲しいんだよ」
青年が彼を雇いたかった理由は荷物持ちが欲しかったからか…だけど
「何故俺なんですか?」
選ばれた理由が分からない、俺の他にも優秀な冒険者はいたはずなのだから
「そうだな…割としっかりしている体、純粋そうな目、何か特別なものを君から感じるし…あとは、【希望の剣】に対して何も思っていないことかな」
「…?…あぁ‼【希望の剣】って」
彼はようやく思いだした。【希望の剣】を見たのは初めてでは無い事を。
「あなたは冒険者協会で喧嘩してた…ヘル⁉」
あの時と様子が違い過ぎて全然気が付かなかった。
「おい、ヘル。お前の目が間違っていたようだぞ」
「あぁ、そうみたいだ」
衝撃を受けて動けない彼と人を見る目が無いヘルによって虚無の時間が流れて行ったのだった。
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